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脳腫瘍マルオとの日々。その2「動揺」

「脳に腫瘍がある。脳に腫瘍がある・・・・」

じゅもんを唱えるように独り言をいいながら、人間ドック屋さんを後にした。手には、CTスキャンの画像をおとしてもらったCDと横浜の某病院への紹介状。いい感じにしとしと雨が降りだしていた。いまだかつて来たことのなかった山手線のまあるい輪の「10時」あたりにある駅へびしょびしょになりながら独り言をいいながらのっそりのっそり歩いていった。行きはよいよい、帰りはこわいー。朝この駅にたどりついた時は、どこかでランチして帰ろう~なんてタベログみながらうきうきしてたのになあ。

「まずは、家に帰ろう」
それだけ決めて、横浜へ。

「ダイエットなんかしている場合ではない」
それも決めた。

あこがれていたボリュームたっぷりのトロ握りを最寄り駅で購入。
青鬼ビールも買っちまえ。

人間ドック屋さんでCDと紹介状を待っている間にスマホを手にして
"I have a brain tumor." とうって、消した。

アメリカの家族にすぐ伝えようと思った。
けれど「伝えてどうする?」と思い直した。
アメリカの家族にはもうすぐ夜が来る。
そんなことを聞いた亭主は眠れなくだろう。
明日の仕事に響くだろう。
心配させるために伝えるようなもんじゃないか。
「やめておけ」
そんな声が聞こえた気がした。

トロ握りと青鬼ビールをもって家に帰っても、独り言は止まらない。
「家」は日本にいる間のわたしだけの空間。
だーれもいない。

トロ握りをテーブルに置き、青鬼をお気に入りのワイングラスに注ぐ。
ごちそうの準備完了。
このぜいたくな食卓を前にしても出てくる言葉は、

「脳に腫瘍・・・」

青鬼を飲んでたら泣きたくなってきた。
一人だもんよ、すきっぱらのビールだもんよ、まわりも早いよ。
ドラマチックでいいじゃんよ。

「なんで?なんで?」

声に出して泣いた。
しっかりトロ握りを食べながら。
青鬼何缶もあけながら。
しっかり写真もとりながら。

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ひとつ決心をした。

アメリカの家族には2週間後にアメリカに帰るまで言わない。

この日、わたしがやったこと。
紹介状をもらった病院にアポどり。

そしてやけ食い。

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出前館でインドカレーとよくわからんチャーハン。

そして、医療系の友人にアドバイスをもらいたく連絡をした。







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