名を、君は②

入室した瞬間から目に入っていた。
こげちゃで重い前髪を右に流していて、
目が大きくて、肌が白い。
この子、かっこいいなぁ。
と、思わず見惚れてしまっていた。
(見惚れていたため、らなを見つけるのか遅くなった)

『では、お一人ずつ自己紹介をしていきましょう。』と職員さんが促す。

リーダーになった男子がハキハキと喋りはじめると、いきなりセミの声が響いた。
『えーっと、めっちゃセミが鳴いてるんですけど、』と、自分でツッコミ、思わず声を出して笑ってしまった。ミュートで良かった。
やはりリーダーに名乗りを上げるくらいだから、何かを持ってるんだな、と思った。

そんなことはさて置き、自己紹介が進む。
私も当たり障りのないことを言い、目立たず終わった。やはり私は持っていないらしい。
黒髪マッシュの順番になり、
なんだか気怠そうに話しはじめる。

いかにもチャラついてそうというか、
すかしてる感じがして、好かんなぁと思った。
そして、意外と声が高かった。
黒髪マッシュは、ZOOMの名前を
成田と設定していた。

成田くんか。 

入ってしまった以上、こういう普段関わらない人とも関わっていかなきゃいけないのか。
まあ、いっか。
らなと気楽にやろう。

私の大学では、コロナウイルスの影響で、
Microsoftのteamsを使い、オンライン授業や課題提出を行なっていた。

就活相談会のグループもでき、
teams上でやり取りをしていたところ、
私はあることに気がついた。

成田くんの下の名前、優香っていうのか。

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