美大大学院を受験するための心得②
こんにちは、大学院受験の講師のニッチです。
「美大大学院を受験するための心得①」から引き続き、本記事では入試・受験勉強についてお話しさせて頂きます。
美大大学院入試について
美大大学院受験では、大抵ポートフォリオ・研究計画・面接が試験にあります。
一体どこから手を付ければいいんだぁ!!!!と初めは思うかもしれませんが、試験科目の重要度は以下のようなイメージです。
おすすめは、受験勉強の前半期間にポートフォリオ作成と大まかに研究の方向性を固め、筆記試験などは試験2,3ヵ月前くらいから徐々に意識し始めると良いと思います。ということで、今回は比較的重要度の高いポートフォリオ・研究計画書・面接についてお話ししたいと思います。
▼ポートフォリオ
ポートフォリオを作る最初のステップとして、これまで制作した作品や自分の業績をまとめることから始めると良いと思います。稀に作品が全く整理されていない受験生が見受けられますが、自分の現状をよく把握するためにもなるべく早く取り掛かりましょう。
もし、制作物があまりないようであれば新たに作品を制作する必要があるかもしれません。実際に私が教えた生徒もポートフォリオ作成のために何点か作品を制作していました。また、自分の修士研究のテーマに繋がる作品があると研究内容や志望理由がより鮮明になると思うので、修士課程に関連する制作を試してみてください。
下記にポートフォリオに関する参考書を掲載しました。ここには評価されたポートフォリオのデザイン分析や具体的な作成期間・費用・構成などについて細かく説明されていますので是非参考にしてください。
▼研究計画書
基本的にどの大学院でも研究計画書の提出が求められます。
中でも、美大大学院の場合だとA41枚程度で指定されることが多いです。決して多くない文量ですが、合否に関わる重要な書類の一つなのでしっかりと押さえておきましょう!!
① 研究テーマのマテリアルは自作品から
受験生の大部分はあまり研究経験がなく、この研究計画書の制作で悩まれる方が多いですが、実はすでに研究テーマを作るマテリアルが揃っています!
例えば、、自作品のコンセプトを掘り下げて、人文学的な領域の研究にフォーカスするのも良いですし、作品内の表現・演出といった技術的なものを取り上げるのも良いと思います。このテーマ設定を決める段階で独自性がどうとか、既視感がどうとかを今悩む必要はありません。研究の新規性はあくまでもサーベイを行っていく中で見出していくものなので、ひとまず早いうちに研究の方向性を決めることが大切です。
② とにかく、研究の”サーヴェイ”を行う。
さて、自分のやりたいこと、大まかな研究の方向性を見つけたところで、次のステップです。
実際のところ、学生レベルの思いつきというのは大抵すでに誰かがやっていることがほとんどです。ではどのようにオリジナリティを考えればいいのか。そこで重要なのが、この「サーヴェイ」です。日本語に訳すと「調査」という言葉になりますが、まずはとにかくサーヴェイをして自分の研究に近い先行研究から新たな見解を見つけることが大切です。
この「サーヴェイ」について、メディアアーティスト/大学教員として活躍されている落合陽一さんは以下のように述べています。
僕よりもよっぽど説得力がある落合さんのお言葉ですが、ここでは「何が研究となるか考える作業」≒「サーヴェイ」と語られています。
あくまでも、大学院では自主的に創作・研究を行うことが主体なので、教授方も志願者が自分で研究していけるかどうかを念入りに確認します。そのためにまず、サーヴェイを徹底してより研究内容を詰めていき、そこから新しいテーマ・メソッドを考えてみると良いと思います。
③ 学部から修士までの”ストーリーライン”を作る。
さあ、①と②のステップでテーマが決まり、研究計画書を執筆する材料が整いました。では、ここから魅力的な研究計画書を作成するにはどうすれば良いのか考えていきましょう。
例えば、想像してみてください。
PCが主流だった時代に「タッチ操作で動作し、1台でパソコンと電話の機能を持ち合わせる超便利小型携帯電話"iphone"の発明」という研究があったとしましょう。当時、そんな魔法みたいなプロダクトは現実味がないものとして皆感じていたわけですが、Appleという巨大な会社を創業し、NeXTやピクサーの創業者でもあり、パーソナルコンピュータを市場に普及させたスティーブ君という研究者が背景にいることで、この研究に対する期待や信頼性が高くなったわけです。
ここで覚えておきたいのは、研究がどんなに面白く斬新なものでも、その研究者の生い立ちや実績などが不明瞭であると、研究に対する熱量や信憑性がどうしても無くなってきます。
そこで考えるべきことが”ストーリーライン”です。自分の学部活動から研究に至るまでの”ストーリーライン”が明瞭であればあるほど印象が良くなります。
ある種、自分の作品性の芯を太くするための修士研究という見方も大いにあるので、テーマ決めのコツとしてとにかくこれまでの制作から考察してみると良いと思います。
▼面接
面接は、あらかじめ考えた台本を読み上げるのではなく、まずはナチュラルにコミュニケーションをすることが大切です。そりゃ教授さんも2年間共にする学生を見分けなくてはならないので慎重です。いくらスキルがあっても、会話が成り立たない人は問答無用に落とされます。面接対策もしっかり考えておきましょう。
・実際にあった大学院面接の例
実際に下記のような面接を経験された方がいました。
というような誘導尋問が実際ありました(笑)。
問題は、「具体的な就職希望があるのに、就活を逃れて進学志望したのではないか?」と見られてしまうことがあります。割とそういう目的で進学する人が多いので、間接的に確認を行っているんですよね。
返って、「具体的な就職希望は今のところ決まってないので、大学院で研究する中で自分の方向性を明確にしたい!」と言った方が進学を希望する理由としては信憑性があるかと思います。
また、大学院ではデザインを学ぶよりも新しい表現を創造・探求する意の方が強いので、面接ではあくまでもその路線から外れないようにすることが大切です。教授の質問や会話に正直に誘導されすぎて、本筋を見失わないように気を付けましょう。
・事前にやっておきたい面接対策とは?
結論、日頃から人に自作品を共有し、そこからフィードバックをもらうことです。面談では、大学院でやりたいことだけでなく作品について聞かれることが多いです。良くも悪くも面接時にあなたがどのように語るかによって作品の印象が大きく変わってきます。日常的に、課題であれ自主制作であれ、自己満足に留めず誰かに作品を共有することを心掛けましょう。
ちょっと余談ですが、「作品は鑑賞者の”解釈”を得ることによって完成する」という説があります。
写真にある「泉」と題された男性便器の作品は、現代美術の父と言われているマルセル・デュシャンの手によって作られました。当時、世間からは反芸術運動として物議を醸しましたが、”芸術”の概念は問い直され、これまでの美術界に多大な影響を与えました。ここで彼がこの作品で最も伝えたかった事、それが「作品の作者は鑑賞者。作品は鑑賞者の解釈によってはじめて完成する。」ということです。
作り手の意図した解釈だけでなく鑑賞者が誤読と解読を繰り返し作品が美化されていく、それが作品の本質であるということです。結果的に、この思想によって今日ある現代美術が誕生し、私たちは様々なアートを創造してきています。あなたも自分の作品が作品としての価値を見出すために、是非誰かに共有し作品の解釈を得てください。
▼おわりに
いかがでしたでしょうか。
中々、”正答”がないようなことを勉強するのは困難かと思います。しかし、どうか難しく考えすぎないでください!
たまに学生の内からSDGsだどうとか気難しく考えている人がいますが、そういう話はビジネス好きなおいちゃんたちに任せっちゃていいのではないでしょうか(笑)って大学教授は思ってる人が多いです。学生の特権として、あなたが自由に”問い”を設定し、創作できるということがあります。もっと自分に身近なことから手に取ってみると考えやすいかもしれませんね。
ということで、最後まで読んでいただき有難うございます!
少しばかりでも大学院受験の手助けになれば本望です。
「もっとこういう情報が聞きたい!」というリクエストがありましたら、是非、TwitterのDMなどからお気軽にご連絡ください!
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