医薬品製造管理者

さて、今回から医薬品に特化した記事を書いていきたいと思います。

くすり(医薬品)をつくるためには、薬剤師免許をもった医薬品製造管理者が必要になります。
何をするかというと、医薬品製造所の管理監督を行います。
薬剤師でなければ医薬品製造管理者にはなれません。

薬剤師は薬のスペシャリストですよね。
どんなものでなければいけないのか、何であるかを1番理解している、していなければいけない人が管理監督を行わなければなりません。
ですので、免許を持っていない人は医薬品製造管理者にはなれないのです。

例え、医薬品製造管理者よりも知識も経験もあり優れていても、です。

私は2社、製薬メーカーを渡り歩きました。
そして、とある1社で大手製薬メーカーの医薬品製造管理者をされていた方とお仕事を一緒にした時期がありました。

この2社と大手製薬メーカーの医薬品製造管理者の方は面白いほど差があったことを覚えています。

先程、医薬品製造管理者は製造所の管理監督を行うと書きました。
GMP省令で定められている業務のほか、細かな対応も勿論しなければいけません。
管理監督は幅が広いので、ただ座って報告を待つという、受動的なスタイルでは理解できない問題も発生します。
各責任者と同行して問題が発生した部門に直接確認することも多々あります。

2社の医薬品製造管理者はそれをしないのに対し、一緒に仕事をした大手製薬メーカーの製造管理者はそれができるというところ。

受動的ではなく、能動的であったのです。

自分で置き換えたときに分かってくることですが、口頭で「こうでした」と言われて、「こう」だった状況は容易く思い描くことはできますか?
写真を見せられて、これはあの部分でここがこうなったから発生したんだと結びつきますか?
日頃から把握・理解していれば想像できるでしょう。
しかし、受動的な人はいつも受動的です。
そして、把握・理解できていません。
文書にしても、承認すべき立場であるのに中身をきちんと確認せず、サインや押印を行う。
そのため、査察で医薬品製造管理者に査察官が質問しても答えられないという状況が出来上がるのです。

中小だから、大手だからという問題ではなく、その人のモチベーションだったり、周りがどういう医薬品製造管理者を求めるかにかかってきます。

そのため、2社の医薬品製造管理者は、免許を持たない品質保証部門員よりも製造所の把握・理解が出来ておらず、お飾りになっていました。
責任だけとってください、といったところです。

わたしが渡り歩いた2社はマネジメントからも医薬品製造管理者の能力が欠如していると見られており、責任だけをとる人という状態でした。
本来であれば適切に管理監督ができる医薬品製造管理者を置く、採用することをマネジメントとして最優先で対応しなければいけませんが、人が来ない(給与面や立地など)こと、もしくは一族経営のため、マネジメントの力が容易にかけられる、マネジメントにとって適切な者がいないといった状況だったのか、変えられることはありませんでした。

どちらもマネジメント(上級経営陣)が、医薬品製造所の責務、くすりを世に送り出すことが何であるかを理解していないことにより起きた問題です。
人によると書いていますが、マネジメントがきちんと理解していれば、採用時や配置時に適切な人材を充てがうでしょう。
適切な医薬品製造管理者が充てがわれていない=マネジメントが医薬品製造所の責務を理解していないのです。
つまり、患者様を最優先と見ていない。
患者様の命、健康を最優先としていないということが見えてきます。

製造や品質部門がマネジメントの悪しき考えを変える大きな力をつけなければ、医薬品製造管理者はおろか、医薬品製造所、そしてその製薬メーカーを変えることはできません。
この変えるということもそれぞれが持つ力、つまり知識が高くなければいけません。
最優先とすべきは患者様の命、健康であり、そのために自分達の作業、文書はどうでなければいけないのか?
これを考え、不足や不備があれば是正していくことを積極的に行っていく。
また教育訓練もとても重要になってくるのです。
力をつけることは、脅しではなく間違いに気付くことがいち早くできるということです。
間違いに気付くことができれば、マネジメントの間違いにも気付くことができますし、正していくこともできます。
気付かなければ、声を上げなければ、患者様の命、健康を脅かす結果に繋がります。

医薬品をつくる、世に送り出すことはとても怖いものです。
なぜなら、人の命や健康に直結するからです。
間違いを見逃すと、その命を奪うことになってしまいます。
そのため、製薬メーカーや、そこで働く方はくすりとはどうでなければいけないのかをきちんと理解し、製造、販売、そしてマネジメントを行わなければいけないことを覚えておいてください。

くすりには賛否両論ありますが、患者様の命や健康を守り、支えることができる誇らしい職業です。

どうかこの誇らしい職業が負い目とならない企業、製造所づくりを目指してください。

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