教育訓練と医薬品の品質

今日は教育のお話です。

どんな業界でも、入社、部署異動、知識更新などで教育訓練を行います。
製薬業界でも同じで、社内教育を行ったり、外部講習に参加したり…
様々な教育訓練を行っています。

外部講習は、製薬メーカー勤務の方や薬務課の担当者、PMDAや厚労省…といった方々が講師として登壇されます。
社内教育は、教育する内容を熟知した者が行います。
スポット的に対象者または対象部門のみに行ったり、製造所全員に行う集合教育など、社内教育も様々な種類があります。

どちらの教育または講習も、GMPや教育する内容を熟知していなければいけません。
教わる側になった時に、曖昧な内容や教えられ方に根拠がなければ不安になります。
また、この人の言うことは信用できるのか?果たしてこの人はちゃんと理解してないのでは?と不審に思いますよね。
なので、熟知した人が教育を行うのです。
これは当たり前のことであって、製薬業界に限ったことではありません。

もう一つ、講師として教育を行う際に必要なことが、対象者がどのくらい理解しているか。
理解度を見極めなければいけないということです。
各社により教育訓練の評価は異なってきます。
テストを行うところもあれば、三つほどのランクで理解出来たかを申告させたり…
しかし、そのテストや自己申告が本当にその人が理解出来ているかとはイコールではありません。
私自身、講師を経験しテストや理解度申告を見てきましたが、理解していれば結果というものは日々の業務に直結してきます。
きちんと理解している人はやはり日々の業務、行動に変化が現れます。
しかし、理解が不十分な人は何も変わらないんですね。
その結果を見た時に、「ちゃんと教育もして、理解出来てるって書いてるじゃん!」と問い詰めてしまいがちですが…
そうではなく、教育内容に原因があることを考えること、また本来行わなければいけない基礎教育が成されていない可能性を疑うことをしましょう。

例えば、物凄く完成度の高い資料ではありますが、専門用語ばかりで、専門知識が十分ある人には理解されますが、そもそも基本的な専門知識が少ない人には何が何だかわからない資料になってしまいます。
その教育を受ける人のレベルは様々ですから、万人が見て理解できる内容でなければいけません。

また、基礎教育が出来ていなければいくら教育を行っても理解されないといった事態に陥ります。
この場合、入社当初に基礎教育をざっと行いますが、時間がないなどの理由、または教育担当者そのものが教育内容を熟知しておらず、曖昧なままで業務に就かざるをえなくなってしまっていたという背景がとても多いです。
何となくとか、これはそういうものだからとか、これは感覚だからとか。
職人的なもので伝えることは曖昧であり、根拠が不明確です。
後の製造方法の見直しにも繋がりますが、感覚的な製造は誰もが出来るものではありません。
誰もが一定の品質、高品質の医薬品を製造出来なければ意味がありません。
なので、時間、回転数などの製造方法を様々なデータを基に確立しなければいけませんし、これを基に熟知した人が教育を行わなければいけません。
また、製造スケジュールがパンパンに詰まっていて、十分な教育がとれないといったメーカーもあります。
十分な教育を受けていないということは、自分が携わる医薬品が何であるかを理解しないまま業務に就くということです。
恐ろしいことです。
また、書類も煩雑で不備があったり、異常があっても報告されていない、品質保証部門の照査で異常や逸脱が発見されるという事態もかなり多く見られます。

教育結果は日々の業務に繋がり、製造する医薬品の品質に繋がるのです。

教育を行うけど理解されない、教育担当者に適任がいないというのは、レベルに応じた教育内容でないことやそもそも基礎教育が十分でないということに気付かなければいけません。

そして、繰り返し教育を行うことがとても重要になります。

私が過去に見てきた例で言えば、
・医薬品を製造するとは何か教えられていない
・GMPの基礎教育が不十分。また講師も熟知していない
・製造スケジュールに追われていて教育がおざなりになっている
この3つが大半でした。

その中でも、製造スケジュールに追われていて教育がおざなりになっているというのが多かったです。
品目もそうですが、ロット数も多く人手も足りない状態のため、いくら教育が重要、最優先しなければいけないと訴えても、マネジメントにより製造最優先で教育の優先度は最下位のレベルにまで落ちてしまうのです。

こういった背景から、教育担当者自体も基礎教育を納得のいくまで受けて来なかった人も多く、教育内容が曖昧、専門用語ばかりで完成度を上げている、といった事態も多く見られます。

先ず優先すべきは教育であり、その先には患者様の命があるということを製薬メーカーには考えてもらいたいものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?