デカルト『方法序説』(岩波文庫)

タブチです。

働きはじめて早幾年、会社の水にもすっかり慣れてきた今日この頃ですが、気持ちはいまだ20代前半の頃と変わらないような気がします。

長い学生時代を送っていた私は、同じく学生をしていたミツイくん(仮名)という友達の家によく泊まりに行きました。

弁護士を目指していた彼の部屋には、勉強机とベッド、それと部屋に不釣り合いなくらいに大きな本棚があり、それを眺めるのが毎回の楽しみでした。

あるとき本棚を眺めていると、一冊の薄い本を発見。


「何これ、歴史のアレじゃん」

私が何気なく聞くと、彼は、本気とも冗談とも取れぬ顔つきで言いました。

「これね、本屋によくハウツー本とか、問題解決の本とかあるでしょ。これだけでいい。これにすべて書いてある。」

ほんとに!?と当時は返してその場は収まり、その後『方法序説』の話をすることはありませんでした。

結局手に取ることもないまま社会人になった折、たまたま入った古本市で偶然『方法序説』を発見。
「安いし薄いし、ミツイがなんか言ってたし、買うか」程度の気持ちで購入しました。

概要はこちら。

すべての人が真理を見いだすための方法を求めて,思索を重ねたデカルト(1596-1650).「われ思う,ゆえにわれあり」は,その彼がいっさいの外的権威を否定して達した,思想の独立宣言である.本書で示される新しい哲学の根本原理と方法,自然の探求の展望などは,近代の礎を築くものとしてわたしたちの学問の基本的な枠組みをなしている.

Amazonの説明欄より


短い本ですが6部構成になっており、あまりに有名な「われ思う、ゆえにわれあり」のフレーズは第4部で登場します。

読む前はここの印象しかなかったのですが、一番印象に残ったのは第2部のフレーズ。

「難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること」

「順序にしたがって解くこと。そこでは、もっとも単純でもっとも認識しやすいものから始めて、少しずつ階段を昇るようにして、最も複雑なものの認識まで昇っていき、自然のままでは互いに前後の順序がつかないものの間にさえも順序を想定して進むこと。」

「問題は分割せよ」
「論理の鎖を省いてはいけない」

などは洋の東西問わずあらゆる問題解決に関する書籍に書いてありますが、その源流が『方法序説』なのかもしれない、と思いました。


ミツイくんには、どのフレーズが琴線に触れたのかはついぞ聞かずじまいでした。いつか会えたときに答え合わせをしようかなと思います。

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