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(11/22更新) OpenAI事件:一連の出来事と内紛の原因を書いてみた



(11月22日18:30頃時系列更新, 一部補足) 
Twitter/X でも適度に本件追ってますので、よければ覗いてみてくださいhttps://twitter.com/myapdx

はじめに

こんにちは。山浦です。
先週末のサム・アルトマン氏CEO解任を封切りに、OpenAIがリアリティショー的なドラマを地で繰り広げていますね。

センセーショナルではあるものの、色々ありすぎて何が起こっているのか追えてない人も多いのではないでしょうか。ですので、① OpenAIの一連の出来事と ②内紛の原因をここで説明してみようと思います。

「一連の出来事」では、ファクトを時系列に記述して、解任の際の仕組みなんかを説明。「内紛の原因」は、私が調べた内容や、原因は多分こうだろうという推測になります。

色々調べる中で、私と大体同じ意見で、本件を上手にまとめている動画がありました。特に本記事の時系列部分はこの動画を参照し、さらに最新情報を加えた内容になっています。英語わかるならこの動画観た方が早いかも。

What REALLY Happened At OpenAI... (英語)
https://youtu.be/pXQyjIzq2L8?si=W17aa8NisVFGBu9P

当方 note 初心者ですので、読みにくかったらごめんね。あと、リアルタイムで状況変わるので、後半の見解は変わってくるかもですが、前半の出来事はファクトベースなので、時間が経った後でも参考になるかと思います。(時系列は以後気が向いたら更新します)

では、まず一連の出来事から。

SamのCEO解任: 一連の出来事

とりあえず、まず最初に時系列にファクトを記述します。

時系列のファクト

11月17日 PST(日本時間18日)
・OpenAIはサム・アルトマン (Sam Altman) CEOの解任を発表。
・その後任に、CTOのミラ・ムラティ氏 (Mira Murati) を暫定CEOに指名。

・その後、Sam 自身もこのニュースをXで共有。

同日数時間後
・グレッグ・ブロックマン氏 (Greg Brockman) がOpenAIの社長兼会長 (President and chairman) を辞任することをXで発表。

・その後、Sam の解任時に Greg の周辺で何が起きていたかの詳細も投稿。
 (彼の投稿曰く、Greg は SamのCEO解任時の取締役会には呼ばれてなくて、後から知ったそう。取締役会の構成については後述)

・加えて、本件を受け、同日中にシニアエンジニア3名が辞任

ちなみに、マイクロソフト社 (以下、MS社) は Sam のCEO解任について、OpenAI 公式発表直前まで知らなかった模様。


この情報ソースは正直微妙だけど、MS社が事前にCEO解任について知っていたり、関与していたら、サティヤ・ナデラ氏 (Satya Nadella - MS社のCEO兼会長)は OpenAIのDev Dayで Sam と一緒に登壇しなかったはず。なので、知らなかった説は本当だと私は思っています。

11月18日
・OpenAI 取締役会は一転して Sam のCEO復帰を協議。

11月19日(日本時間20日) 
・元Twitch共同創業者の Emmett Shear が暫定CEOに任命される。(Mira のCEO在任期間は週末の3日間だけ)

・Emmett 本人も本件を公表

・同日、Satya (MS社CEO兼会長) がXで、Sam と Greg の MS社入りを発表。

・その後、別の投稿で Sam を新しいグループ企業のCEO 任命すると公表。

・Greg は MS社でのAIチーム初期メンをXで公表。

・その後、Sam を追放した大元と言える イリヤ・スツケヴァー氏 (Ilya Sutskever - OpenAI チーフサイエンティスト) は、自身の取締役としての決断が、OpenAIに多大に悪影響を及ぼしたことを後悔しているとXで公表

・その投稿に対し、ハートをつけて Sam がリポスト。

11月20日(日本時間21日) 
・OpenAI従業員の770人中700人が Sam と Greg と一緒に MS社へ移るか、辞職するとするレターに署名し取締役会に提出。(面白いことに) その署名には Ilya の名前も記されている。

・Sam が、 Satya と自分のミッションは、OpenAI を継続的に繁栄させることだ。我々のパートナーや企業に事業の継続性を保証する。OpenAI と MS社のパートナーシップならそれを可能とする。という内容を投稿 (MS社はOpenAI の営利法人株49%持ってるし、そうする他ないよね。)

・その後、 Vergeの記事で Sam はまだOpenAIのCEOに戻ろうとしている。同氏のMS社への移籍は決定事項ではない、と報道。

・OpenAI取締役、Anthropic社へ合併を持ち掛けたことが発覚
(Anthropic社は Claude2 というLLM を保有する OpenAI からスピンオフした企業)

11月21日(日本時間22日) 
・Anthropic社、OpenAIとの合併を拒否していたことが発覚
・加えて、Sam の後任として Twitch共同創業者 Emmett Shear に加え、元 Github CEO の Nat Friedman および Scale AI CEO の Alex Wang にも声をかけていたことが発覚
(これは記事の日付で実際の出来事はそれより前に起きている)

・本件中心人物 (Sam, Greg, Emmett など) は20日午後以降個人的な投稿を控える
・「サム・アルトマンがCEOとしてOpenAIに戻り、新たにブレット・テイラー (Bret Taylor 会長)、ラリー・サマーズ (Larry Summers)、アダム・ダンジェロ (Adam D'Angelo) からなる役員構成とすることで基本合意に達した」とOpenAIが公表。←今ココ
(今のところ取締役会はこの3名、Adam 以外の2名は新しい役員。新役員についての補足は記事の一番下に追記しました。)

という感じです。スピード感すごいのと、なんじゃこりゃ?って感じですね☺️
時系列は以上。(以後適宜気が向いたら更新します)

CEO解任はどのように決まった?

まず前提として、OpenAI, Inc は “非営利” 企業です。そのため、取締役会の役員は “選出” で決められます。

投資も受けられるよう営利法人を下につけているけど、母体は非営利だから株式で議決権を獲得できる構造にはなってないと考えられます。つまりMS社含む投資家たちが必ずしも取締役になれるわけではない。(同時に取締役の人たちが株を持っているわけではない、ということになります。)

Sam と Greg が抜ける前の OpenAI, Inc の取締役は6名、
・共同創業者3名 
・社外取締役3名
で、構成されていました。

創業者の(元)取締役は以下のとおりです。
・サム・アルトマン氏 (元CEO)
・グレッグ・ブロックマン氏 (元会長兼社長)
 ・イリヤ・スーツケバー氏  (チーフサイエンティスト) 
補足: OpenAI の創業者は彼らだけではありません。

この記事では彼らについての内容は割愛するけど、参考までに社外取締役の名前も載せておきます。
・アダム・ディアンジェロ(Adam D'Angelo - QuoraのCEO)
・ターシャ・マッコーリー(Tasha McCauley - GeoSim Systemsの元CEO)
・ヘレン・トナー(Helen Toner - 学者)

共同創業者 Ilya (イリヤ) が元凶?

CEO解任の是非は、当然取締役会の多数決で決まります。つまり取締役6人のうち4人の同意が必要。

・Sam が自分の解任に票を入れるわけがない。
・Greg も Sam 解任を受け辞任しているため、賛成票を入れるわけがない。
(本人曰く、そもそも件の取締役会に参加できてない。)

となると、創業者の中で Ilyaが社外取締役3名と結託して Sam を追放した構図がうかがえます。(後から Ilya も後悔している内容の投稿もしましたしね)。

OpenAI 内紛の背景

まず最初に、20日の夕方に、私は Ilya 含む OpenAIがなぜ Sam を追放するに至ったか後で書くといいました。けれど、ごめん、あれは嘘だ。

追放理由や本件がこのようになった理由について、現状当事者達が直接意見を公表していません。(おそらく今後もない。)なので、私が色々調べた結果多分こうだろうという内容で、内紛というか Ilya さんのクーデターの原因について書いていきます。

開発スタンスの対立と思想の衝突?

結論、OpenAIの開発において、スピードを重視するか、安全性を重視するかで意見が割れたというのが、一番有力な説です。
当然、Sam がスピードで Ilya が安全性を重視する立場。(もちろんその他にも色々要因はあるんだろうけど、大きな原因は多分ここだよね、という話)

身も蓋も無いね。☺️

もう少し深く説明すると、

Sam は、
・Yコンビネーターというアメリカトップのベンチャーキャピタル出身
・投資家目線のビジネスパーソン
・ユニコーン企業含む多くの起業家をサポートしてきた経験の持ち主

一方、Ilya は、
・Google Brainの元研究員、AI研究の先駆者として知られる
・AlphaGo のプロジェクトマネジャーもやっていた
・OpenAI 取締役の中で最もAIの知見が深いだろうエンジニア

Sam のスタンスは、スタートアップの精神を反映しているかと考えます。迅速な開発を優先して、サービスを市場に投入した後に徐々に改善・修正していくというものです。

Ilya のスタンスは、開発のペースを落とすことに重点を置き、安全性への配慮を強調しているのだろうと思いました。事実、彼のメンターでもあるジェフリー・ヒントン (Geoffrey Hinton - AI界のゴッドファーザー的存在) は、今年5月にAIの発達が自身の想定を超えていて、その危険性について話せるようにと、Googleを退職しました。論文も一緒に書いたことがあり、メンターである Geoffrey と Ilya が似た思想を持っていて、安全性に重きをおいていてもおかしくなさそうです。

実際、AIの安全性に関しては、元OpenAIの研究幹部たちが同組織を離れ、2021年にOpenAIの競合であるAnthropic社を設立したことが注目されています。この企業はミッションを、信頼できるAI製品の開発と、AIの機会とリスクに関する研究に専念すること、としています。これは、OpenAIの安全性への配慮が十分でないと判断した結果、彼らが独立したと捉えることができます。

(22日12時補足)
「OpenAI はすでに AGI を完成させている」との噂もあったりします。
(AGI: 人間と同じように学習し、問題を解決できる人工知能のこと)
これは、AI開発の安全面に配慮しなければ、多くの人類が危険に晒されることが、一般人の私たちからしても容易に想像できます。Sam よりもAI研究の先駆者である Ilya の方がこの危機をより鮮明に理解できていたのではないでしょうか。
(とはいえ、OpenAI には他にも優秀な研究者がたくさんいて、Sam もその点想像できないはずはなかったとは思いますが。)

補足: AIの安全性に関する懸念事項

生成AI技術は核兵器にも勝るとも劣らないと言われています。
AIの安全性を重視した方が良いといっても、具体的にどう重視するのかイメージが掴みにくいという人に向けて、以下AIの懸念事項をリストしました。(そんなのわかってらって人は飛ばしてね)

  1. 誤用と悪用: AI技術が不正や犯罪活動(例:ディープフェイクによる詐欺や偽情報の拡散)に利用される可能性。

  2. 倫理とプライバシー: 個人のプライバシー侵害や倫理的な問題(例:顔認識技術の監視への使用)。

  3. 自律性と制御: 高度なAIが人間の意図や制御を超えて行動するリスク。(人間を排除することを正解と自己判断する可能性も出てくる)

  4. 偏見と公平性: AIに組み込まれるデータの偏りにより、差別的な決定や不公平が生じる可能性。

  5. 透明性と説明責任: AIの意思決定プロセスの不透明さによる説明責任の問題。

例えば#3については、AIが勝手に自分で学習を重ねることで、私たちの意に反して「人間を排除することを正解とする」ことも将来的には考えられます。こうなった場合、後戻りはできないですよね。それが世界中の様々なデバイスを行き来できるようになったりしたら、たまったものではないですね。

経営に対する思想の違い?

私個人としては、本件開発スタンス以外にも「資本主義的思考」と「非営利・研究者的思考」で食い違いがあったのかなという気もしています。Sam はビジネスマインドを持つ経営者なので、市場主導のアプローチを重視。一方で、Ilya はビジネスマンではなく研究者の視点から、非営利の原則と科学的探求を強調していたのではないでしょうか。

正直 GPTs なんかは完全消費者向けのサービスとして展開されているので、思い切り営利目的感マシマシになっているかと思います。(語彙力
消費者向けサービスの充実は、研究の本質でないことも多いため、研究者から否定的な意見もあったのではないかなと勝手に推察しています。

ぶっちゃけると Sam も Greg の AI界隈では割と "ぽっと出" の人たちです。Sam に至っては技術屋ですらない。AI研究の先駆者であり創業メンバーでもある Ilya としては、非営利でスタートした OpenAI が本来のミッションを忘れて、AIの危険性を軽視し、金の亡者になっていく様は間違っている!と同社の現状をみていてもおかしくないのかな、と思いました。知らんけど。

とはいえ。とはいえです。
OpenAI をここまで大きく成長させたのは Sam です。
ビジネスが何もないところから、
・企業価値を800億ドル越えにした
・MS社との強固な契約を結ぶことに成功した
・アクティブユーザーを1億人越えにした
という凄まじい結果を出しています。
Sam のビジネス戦略とリーダーシップが、OpenAIの急成長と業界内での地位確立に大きく貢献していることは明らかですよね。

そのため、従業員770名中700名が 「Sam についていくか辞任する」というレターに署名し立場を明確にしたのかと思います。(Ilya も署名 ←) 

まとめ (+22日19時追記)

Sam のCEO解任騒ぎを時系列にまとめましたが、数日で起こったこととは思えないくらい濃いですよね。そして、OpenAI役員何やってんだよ、犯人はお前か Ilya 悪いやつだな!って極論なりそうだけど、彼らのバックグラウンドの違いやAIの与える影響・脅威を考慮すると、慎重になった方が良い、という Ilya の立場も十分理解できますよね。(推測の域をでませんが。)

そして界隈の人の投稿をみると、Sam 擁護派が圧倒的に多いです。当然だよねって感じなのですが、、。 Ilya は研究者気質なのでしょうか、政治力や巻き込み力が大幅に Sam に劣る点が露呈したのではないかなという気もしました。突然無理やりCEO解任したらそりゃ非難も浴びるよなぁ。

最後に Sam がCEO 解任された時の X の投稿がこちら。

一文目の "I Love You All. " ですけど、頭文字をとると
I  L Y A で、 
ILYA (イリヤ) になります。


謎に、おい工藤!!!!ってなりました☺️
(深夜のテンション許して)

以上です。
読んでくださってありがとうございました。


ーー

(22日19時追記)

Sam の CEO 返り咲き+取締役会刷新で収束するのでしょうか。

とりま、新しい役員の経歴は以下です。

Bred Taylor - 連続起業家:
・Google Map 共同創業者
・Salesforce co-CEO
・Facebook CTO
・Twitter 会長

Larry Summers - エコノミスト兼政治家 :
・米国財務長官
・国家経済会議長官
・ハーバード大学学長

そうそうたる人たちですね。
そして政治面の強化が伺えます。

アルトマン氏を解任した Adam D'Angelo が役員として残るのもすごいなと思いました。 一枚岩にしない感じを心がけているのかなと。そのような意味でも、個人的には、Ilya には辞めないでほしいなと思っています。そして、今後このようなスキャンダルが起きないよう、OpenAIは取締役会の仕組みの変更が求められそうですね。

この後他にどのような方が役員として迎えられるのでしょうね。

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