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「適職の地図」と書いて「たからのちず」と読む

『自分についてまとめた本が欲しい』
 私がまだ短大1年生の頃。私が小学校の時に読んだ雑誌記事の『あなたの好きな人のパーソナルデータや限定ショットが載った特別な本が手に入ったら――いくら出せますか?』というアンケートが忘れられないと言う話を切り出して、友人と学校の帰り道で盛り上がっていた。その中で友人の一人が『私は好きな人の事より、自分について知りたい。自分についてまとめた本が欲しい』と言ったのだ。
 私も含めてその場にいた友人全員が彼女に同意した。私たちは昔から人間関係や家庭の事情などが重なって何かと人生がうまくいかなくて悩んでいると言う共通点があった。そして入学して半年も経たないのに進路について考えなければならない状況でもあった。
 その出来事を当時やっていたブログに書いたが、コメント欄は『自分についてまとめた本なんていらない』派の意見がほとんどだった。理由の一つは『自分に制限をつけたくないから』と言う物で、私は複雑な気持ちでいっぱいだった。

 私が土谷 愛さんが書いた「適職の地図」を購入する事に決めたのは、自分について知りたい、強みがほしいという気持ちを35歳になっても抱いていたからだ。
 土谷 愛さんを一言で説明すれば“自己分析”のプロだ。自己分析と言うと、就職活動や転職活動で求められるアレを思い浮かべる人が大半だと思う。それも間違いではないけれど、土谷さんの自己分析と言うのは“自分の強みをお金に換える為の”自己分析だ。
 土谷さんは自分に自信がなく、劣等生だと日々思いながら生きていた。それがある人の言葉をきっかけに自分の強みを知り、それを活かした営業スタイルで営業成績最下位から一気にトップにまで昇りつめた。私と境遇がよく似ていて尚且つ私が欲しかったものを手に入れる事が出来ている彼女に私は惹かれた。
 私はコールセンターでオペレーターをしているが、8年も働いているのに全然仕事が出来なくて追い詰められていた。仕事が出来ない自分について考えると、過去のトラウマがよみがえって苦痛だった。
 中学1年の時、当時の担任に「お前は就職も結婚も出来ない」と言われた。高校1年の時、部活の3年の先輩に「あんたなんか信用できない」と言われた。短大2年の時、所属していたダンスサークルのOBに「踊りも踊れない、お酒も飲めない。お前は何が出来るんだ」と絡まれた。
 それ以外にもたくさん否定される言葉や傷つける言葉を言われた。今いる職場にも私が挨拶しても無視してくる人もいる。大人になると自分を良いように評価してくれる人はいなくなる。むしろ悪い点ばかりを指摘されてますます生きるのが苦しくなる。
 コロナ禍で仕事がなくなるかもしれないという危険性も重なって、私は藁をもすがる思いで土谷さんのメールマガジンに申し込んでいた。

 この「適職の地図」は自分の適職を探し出す為の地図を完成させる事を目的として、ワークをこなして、自己分析を進めるという構成である。ワークの答えを書き出す為に必死に考えて自分と向き合ってみるとこれが結構面白い。ワークの途中で行き詰る事もあったが、それを達成するために考える事も楽しいと感じてしまうのだ。
 ワークを進めるごとに、私を否定してきた連中の暴言が消えていく。そして上司や母親、友人たちがくれた温かい言葉が浮かんでくる。
 今の職場の上司は厳しいけど優しいところもあるし、私の良い面を評価してくれる人もいる。私の両親も厳しいというよりも公平で良い所も悪い所も見たうえでトータルで判断する人たちだと思いだす事が出来た。
 それに『唯の趣味だから役に立たない』と思っていたことでも自分の人生にとって意味があるのだと前向きにとらえる事が出来たのだ。
 今は自分の地図の中身は見せる事は出来ないけれど、一つ言えるのは、自分には向いてないと自覚しているコールセンターオペレーターを継続する道を選んだ事だ。どうして私がその道を選ぶことになったのか。それはこの本のワークに従って自己分析を進めたからに他ならない。

 19歳の私たちが「適職の地図」を読んでいたら、きっと「自分についてまとめた本」が手に入れられた。そうしたら過去のブログで「自分についてまとめた本はいらない」と言っていた人たちと堂々と向き合えたかもしれないなと思う。
 人生において自分を助けてくれる強み、そして自信は最強の武器にして最高の宝だ。「ゲームのように強みが見つかる」と紹介されているが、この本のワークを進める事は宝探しゲームをしているようでワクワクする。
 実際、たまたま今やっているアプリゲームのイベントが“目的を達成するために宝探しをする”という物なので、推しキャラたちと一緒に頑張ろうという気持ちに勝手になってワークを進められた。

 でも「適職の地図」は自分についてまとめた本がいらないと言っていた人たちにも読んで欲しい本だと思う。「適職の地図」の自己分析では自分の可能性を制限される事はまずない。尚且つ土谷さんの自己分析は金銭を稼ぐ手段を探して達成する為のツールというだけではない。自分の人生を楽しく生きていく為のツールだ。

 最初に書いた“好きな人についてまとめた本”は3,000円位までなら出せる、という回答が多かった。けれど“適職の地図”は税抜きで1,500円。
 好きか嫌いかは後回し――まずは購入して体験してみるのはいかがだろうか。


#読書の秋2022 #適職の地図 #土谷愛

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