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時を止める能力

私には特殊能力がある。

その特殊能力とは、1日1回だけ時間を止められる能力だ。
といってもその時間はたった5秒だけなのだが...

私がこの能力に目覚めたキッカケは、中学生の頃に車に轢かれそうになった事に起因している。

それ以来私は、この能力で5秒間だけ時間を止めては、給食のお肉を多めに入れたり、先生にカンチョウしてイタズラしたり、女子のスカートの中を覗いたりして過ごしていた。
だが出来る事は限られているし、精神が幼かった私はすぐに飽きてしまい、能力を使う事は減っていった。

高校生になり、私は自分の能力をもっと上手く活用できないかと考えるようになった。

運動部に入れば無双出来るだろう。
テスト中にちょっとしたカンニング程度なら出来るだろう。
万引きしてもバレる事はまず無いだろう。
もしかしたらもっと大きな事に使えるかもしれない。

ある日そんな事を考えながら、自宅であるマンションのバルコニーでスマホをイジっていると、突然目の前に虫が飛んできた。

驚いた私はスマホをバルコニーの外へ落としてしまった。私は咄嗟に能力を使って時間を止め、手摺を乗り越えてスマホを取ろうとした。しかし5秒間しか止められないという事に焦った私は、足を滑らせて地上30mのバルコニーから転落してしまったのだ。

能力発動中で時間が止まっている状態だったが、無意識に私はまた能力を発動して時間を止めようとしていた。
すると驚く事に、能力が発動してまたさらに時間が止まったのだ。しかも能力発動中は動けるはずの私自身も空中で止まる事が出来た。

時間を止めた状態でさらに能力を発動して時間を止めると、自分の身体も止まるのだろうか。これは私自身にとっても嬉しい発見だった。

だがすぐに5秒のタイムリミットが迫ってくる。
私はイチかバチかさらにもう一度能力を発動して時間を止めようとした。

するとまた能力は発動して時間は止まった。
能力発動して5秒間止まっている状態で、さらに能力を発動して追加で5秒間止まり、またさらに能力を発動してまた追加で5秒間止める事が出来た。

これは現実時間から15秒止めているという事になる。
これを繰り返せば1時間でも1日でも永遠にだって時間を止める事が出来るではないか。
繰り返しの能力発動は私自身の身体も止まってしまうが、私の意識は止まることなく考え続けることが出来る。自分自身の能力の新しい発見に胸が踊った。

これを応用すれば、瞬時に無限の時間で思考する事が出来るのだ。色々と知識を身に付けた上でこの能力で時間を止めれば、私に解決出来ない問題はほとんど無くなるだろう。

さて、私は現在5年近く時間を止めている。
バルコニーから転落して、地上30mの空中で止まっている状況から、果たして生き残る術はあるのだろうか...
私は未だにその問題が解決出来ずにいる。


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