パソコン大爆発

 弟は兄から、短時間で簡単に映画を作れるパソコンソフトの使い方を、教えてもらっていた。
 兄がパソコンを操作するのを見て、自分もやりたくなった弟は、パソコンを貸してもらい、好きなようにソフトをいじった。
 しかし兄が少し目を離した途端、弟はソフト内で爆発エフェクトを大量に設置しはじめた。
 爆発エフェクトは名前通り、映画でよく見る爆発を表現できるが、あまり置きすぎると負荷がかかり、場合によってはパソコンが動かなくなることも。

「やめろ。パソコンが壊れる」

 兄は慌てて止めようとしたが間に合わず、画面がしばらく固まったのちソフトが強制終了。
 あまりに負荷が重すぎたのか、パソコンはついに耐えきれなくなり、大爆発を起こしてしまった。

 この映画を友達に見せられて、僕は期待を裏切られた。

「この映画を作るために、何年も時間をかけて、貯めたお小遣い全部を使った」

 といっておきながら肝心の内容が、ひたすら何度も大爆発が起きるシーンが何分も流れ続け、最後にパソコンが大爆発するという結末で締められるだけの薄い超短編映画だったからだ。
 一応、爆発の演出自体は本格的なハリウッド映画と見違えるぐらい、色も音もきれいだった。しかし、台詞の方は「やめろ。パソコンが壊れる」ぐらいしかなく、最低限のストーリーや世界観設定すらない。
この超短編映画には、美しい爆発の表現以外に褒めるところが一切ない。

「あんな超短編で、本当にお小遣い全部使ったのかよ」

 厳しく問い詰めると、彼は本当に全部使い切ったと返し、その根拠について話した。

「何年も前にお兄ちゃんがこのソフトの使い方教えてくれてね、それでパソコンを貸してもらって実際にやってみたらすごく楽しくてね、つい調子に乗って、いっぱい爆発させたの。そしたらパソコンが動かなくなって、本当にパソコンまで爆発しちゃって、お兄ちゃんはもうパソコンを使わせてくれなくなった。でも、いっぱい爆発するの楽しかったしまたやりたかったから、お小遣い貯めて自分用のパソコンを買ったの」

 先程の映画を映していたそのパソコンは、非常に重い複雑な処理をしても光の速さで快適に動作するスーパーコンピュータだった。とても子供のお小遣いで買えるような値段ではない。

「映画じゃなくて、パソコンを買うのにお金をかけたんだ。よく頑張ったな。それとあと、あれは作中作じゃなかったのかよ」

おわり

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