筋トレ構造でメンタルトレーニング

はじめに~なぜメントレが必要なのか~

結論から言うと、メンタルトレーニングは筋肉トレーニングと同じやり方ですることができます。ここで紹介したいのは、自分の心も筋肉と同じように、鍛えることで少しずつ強くしていきましょうということです。

経済協力開発機構(OECD)のメンタルヘルスに関する国際調査によると、日本国内のうつ病・うつ状態の人の割合は、2013年調査では7.9%だったのに対し、新型コロナウイルス流行後の2020年には17.3%と約2倍に増加しています。誰でも、心の疾患はかかる可能性があります。決して心が弱いから、甘えているからではありません。

もちろん心の病に悩まされない人もいます。それは、風邪をひかない人と同じです。風邪にかかってしまうのは、ちょっとした気温の変化だったり、たまたまウイルスを体内に取り込んだりするためでしょう。心の病も、同じだと考えています。

では、どうやって予防するかです。重要なのは、トレーニングをして心を鍛えるということです。体と同じようにトレーニングをすることで、いままでちょっとしたことで心が疲れていたとしても、徐々に疲れにくくなってきます。風邪を予防するのと同じように、効果的にトレーニングを行って健康を維持できる心も手に入れましょう。

大きなところから鍛える

筋肉を鍛える時、上腕二頭筋などの小さな筋肉を鍛えるよりも、太ももやお尻といった大きな筋肉を鍛えることで効率よくトレーニングをしていることだと思います。メンタルも同じです。まず、「私は生きているだけで素晴らしい」と自分を認めるようにしましょう。自分の存在を認めてあげるのです。「今日はこれもできなかった、あれも失敗した」と考えても仕方ないのです。自分が存在していること、ここまで育ってきたこと、今まさに息を吸っていること自体を認めるのです。人の役に立っているとか、社会の役に立っているとかは関係ありません。虫でも、動物でもそうですが、今の今まで死なずに生きてきたことが奇跡なのですから。

もっと言えば、あなたが生きているだけで、あなたが今日食べたものを売った人は儲かっています。あなたが着ている服を作った人は幸せです。子どもがいる人なら、生命を生み出した素晴らしさがありますし、学生さんなら教師に仕事を与えているということになります。仕事を休んでいる人なら、あなたのおかげでほかの人の仕事を作ることができたり、あなたを心配することでほかの人の心が豊かになったりします。ですから、「私は生きているだけで素晴らしい」と言い切ることができるのです。まずは自分の存在を認めるトレーニングを始めましょう。

バランスよく鍛える~心の内側~

これは、腹筋ばかり鍛えて背筋を鍛えなければ姿勢が悪くなって逆に体に悪いのと同じように、心も一部分だけ鍛えても効果は上がりにくいということです。心は内側と外側からアプローチをしましょう。

内側のトレーニングのポイントは、柔軟性と乗り越える力です。まず心を柔らかくするトレーニングをしましょう。自分以外の人の気持ちは見えなくて当然なのですから、分かろうとしたり、深く考えたりする必要はありません。何か言われたら「この人はこういう考え方なんだな」と認めてあげましょう。その人の存在は認めつつ、考え方の分からないところは合わせる必要はないのです。無理な考え方の相手からは離れましょう。これが自分の身を守ることにつながります。また、気分が落ち込みそうなときは思いっきり落ち込んでいいのです。「強くなければいけない」「頑張らなければいけない」と考えれば考えるほど、心はもろくなります。ちょっとしたことで折れてしまいます。「受け入れる」という行動に近いかもしれません。失敗したらもうやり直すことはできないのですから、その中で何とかやってみて、失敗したかどうかわからないように人には見せればいいのです。心の柔軟性を鍛えるには、認める、離れる、受け入れるという考え方が重要です。

乗り越える力のトレーニング方法は少し継続が必要です。基本的には「私は素晴らしい」という考え方をし続けることが必要ですが、気が付いたときに笑顔を作りましょう。割り箸を横向きにくわえて無理やり口角を上げてもいいと思います。もしくは笑顔の人を見るだけでもいいです。「つまらなさそう→つまらない→つまらなかった」というループにはまると、なかなか抜け出せません。「楽しそう→楽しいな→楽しかった」というループになれば、たいていのことがうまくいきます。ですから、最初の「楽しそう」を作り出すことが必要です。楽しかったという経験を積み重ねれば、「できた」という達成感に変わります。小さな達成感を積み重ねることで自信になります。また、小さな自信を積み重ねていくことで乗り越える力がついてきます。最初は高い壁に見えたものでも、気が付いたら乗り越えていたりします。つまり、「楽しそう→楽しかった→できた(達成感)→自信→乗り越える力」とつながっていくのです。どんな小さいことでも構いません。今日は笑顔で「楽しそう」と言って始めてみましょう。トレーニングは積み重ねが命です。

バランスよく鍛える~心の外側~

心と同時に体も鍛えたほうがいいということはよく言われています。確かに運動をして汗をかくことは心のトレーニングにも有効です。さらに外側を鍛えるために、私は「美にふれる」ということを大切にしたいと考えています。とにかく美しいものを見つけるのです。例えば、花の色の美しさや、風の爽やかさ、雨のにおい…本当に美しいと思うものなら何でもいいです。それは歴史でも数学でも、文学でも、人工物でも、世の中は美しいものだらけです。美しい顔の人でもいいでしょう。数式の美しさを学んでもいいでしょう。素晴らしい生き方をしている人の話を聞いてもいいでしょう。とにかく世界の美しいものを見つけて、できるならそばに置きましょう。美しいものを見つける癖をつけていくと、少しずつ世界がかけがえのないものに思えてきます。

また、知識を身に着けることも、心を守ることにつながります。知らないことが多すぎれば、世の中は不安だらけになります。歩くこともできず、一人でさまようことになります。分からないことがあれば人に聞くか、本を読めばいいのです。自分が尊敬する人の話を聞けば、それを分かろうと努力し始めます。聞いても分からないことがでてくると、本を読み始めます。知識ばかりで行動がともなわないのもいけません。しかし、厳しいことを言うと学んでいない人の意見はだれも聞いてくれません。分からないことが悪いのではありません。知識がないのに考えても時間の無駄ですから、考えるのは今すぐやめて人に聞きましょう。自己流トレーニングが危険なように、自己流で考えるのは危険です。あなたが考えているほとんどのことは、古代ギリシャ人がすでに考えつくしています。

休息の必要性

筋肉トレーニングと同じように、メントレにも休憩が大切です。筋トレを休むことで、筋肉が修復され、次にトレーニングしたときに、さらに効果が上がります。これを超回復と呼びます。メントレの超回復をするために、トレーニングを休むことも大切にしましょう。

「これをやらなければならない」「強い自分を作らなければならない」と考え続けても、思うように効果は上がりません。たまには思いっきり落ち込む日を作ってもかまいません。その時はとことん落ち込みましょう。ただし、落ち込む日を設定しましょう。今日は思いっきり落ち込んでもいい日、または一日のうちこの時間は落ち込んでもいい時間、と決めるといいですね。慣れていないうちは三日に一度くらいでかまいませんので、トレーニングの休息日を設けましょう。

ただし、休息日も「自分は生きているだけで素晴らしい」という基礎トレーニングができる方は続けるとよいです。できない場合は無理にしなくてもかまいません。その時はゆっくりと心を休めましょう。悪いことを考えても大丈夫です。またトレーニングを始めれば超回復をすることができます。

楽しく続けよう

筋肉トレーニングでも同じですが、何日かしてすぐにやめてしまう方がいます。トレーニングをやめて一週間たつと、体も心も戻らないばかりかさらに悪い状況になってしまいます。トレーニングは続けることが肝です。しんどくなったときは休んでかまいませんが、基礎トレーニングだけは忘れないようにしてください。また、心のトレーニングは難しいものはありませんので、できるところだけやりましょう。本を読むだけでも結構です。とにかく自分一人で考える時間を減らすのです。物理的に考える時間を減らして、知識を入れる時間を増やせば、確実にメンタルは鍛えられます。メントレは苦しいことが一切ありません。自己流になればなるほど苦しいですので、内と外、どちらからのアプローチでもかまいませんので続けてください。楽しいことをするだけで結構です。楽しいことができない場合は、「楽しそう」と思うだけで結構です。何に対しても「楽しそう」と思うだけでいいのです。

個人トレーナーをつけよう

筋トレでも、効率よく筋肉をつけようとする場合、個人トレーナーをつけることがあります。心のトレーニングでも同じことが言えます。トレーナーのように、相談する人を構えるのもいいでしょう。実際に会える人でも、書籍やネット上で会える人でもかまいません。

ただ、トレーナーの言うことは一度やってみましょう。お金を出しましょうとか、倫理に反したことをしましょうとかいう以外は、試してみましょう。試してだめならいいのです。一番いけないのは、アドバイスしてくれていることに自己流で「できない」と決めつけることです。例えば子育てなら、欧米諸国なら子どもと添い寝しないのが普通です。日本人の「子どもの夜泣きに困っている」という相談自体理解できないのです。欧米のトレーナーなら「そんなの、一緒に寝るのを今すぐやめればいいじゃない」と言うことでしょう。ここは日本だからできないとか、そんなの子どもがかわいそうだからとか、根拠のない理論でトレーナーが言うことを否定するのではなく、「そういう考え方もある」と一度受け入れてみると、格段に心が軽くなります。

理解があるけれどできない人と、理解はないけれどやってみる人では、トレーニング効果は長期的に見て違ってきます。勝手に心にカギをかけないことが、メントレには重要です。

おわりに

ここまで記事を読んでいただいた方は、メンタルトレーニングは筋トレと同じ構造で行うことができることを理解していただけたと思います。メントレをすることで、徐々に心を強くしていくことができます。メントレはすぐに効果が上がるものではありませんが、繰り返すことで確実に心の風邪を予防する力がついてきます。いくらメントレをしても風邪を完全に防ぐことはできません。それは仕方がないとあきらめてください。ただ、回復は早くなります。メントレは、人生を明るく軽やかにするために行うものです。できることからでかまいませんので、トレーニングを始めてみませんか。明日明後日にはすぐ変わりません。今でも十分素晴らしいのですが、1年後2年後、もっと素晴らしい自分を目指して、今この瞬間「私は生きているだけで素晴らしい」と考えませんか?

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