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【エセレポ】その手紙は、きっとタイムカプセル


【お願い】
当店ではお客様にゆったりとした時間をお過ごしいただくため、
店内での写真撮影はご遠慮いただいております。


店内のカフェフロアの入り口に立った看板には、そんな文言が書かれていた。
そのお願いに従うように、席に着く人々はみな静かに思い思いの時間を過ごしている。

平日の昼すぎ。
隠れ家的なこのお店に来るお客さんは、1人で来ている人たちが多く、4、5人ほどが席を埋めていた。
コーヒーを片手にスマホを見ている人、ペンを持って書き物をしている人などがいる。


ここは江東区清澄白河にある小さなカフェ兼雑貨屋。
名前は「Letter′s Cafe  August」。
このカフェについて知ったのは、どこかにステキなカフェがないかとSNSを見ていたときだった。
白い外壁にペパーミントグリーンの扉が可愛らしいお店の写真。
店の前に赤いポストも一緒に写っていた。

(レターズカフェって、なんだろう…?)

その可愛らしい外観と名前に惹かれてSNSの投稿を読んでみると、
その名の通り、手紙をコンセプトにしたカフェとのことだった。

私には手紙を送り合う友人がおり、もともと書くことも好きだったので、
おもしろそうと思って行ってみることにした。



清澄白河の駅を降りてどれくらい歩いただろうか。
どうやら迷子になってしまった。
清澄白河。
現代美術館やブルーボトルコーヒーの日本1号店などがあるその町は、
雑誌で特集されるおしゃれな下町という印象だ。
だけどおしゃれなお店って、案外隠れるようにあったりする。
そういうところも含めて、おしゃれだったりするのだが。


梅雨とは思えない日差しの中、地図アプリを頼りになんとか辿り着いたそのお店は、四角く真っ白い外観と2階に小ぶりの窓が7つ並んでいる姿が、なんだかハガキみたいで可愛らしかった。

ペパーミントグリーンの扉を押してお店に足を踏み入れると、ふわっと冷たい冷気があふれてきて、ほってた体を包んでくれる。
すごく気持ちいい…。
店内は床や棚にウッディな素材を使用していて、さほど広くはないが、ぬくもり感あふれる空間だった。

1階は文房具や雑貨の販売フロアーだ。
レターセットやポストカード、ペンや万年筆などの筆記具に、シーリングスタンプ。手紙に関する書籍なんかも販売されていた。

しかし、とりあえずこのフロアーは後でよく見るとして、まずはカフェに行こう。
のどはカラカラ。お腹はペコペコなのだ。
そう思って、店の奥にあるカフェへと続く階段を登って行った。


2階も1階と同様にウッディな空間だった。
差し色に扉と同じペパーミントグリーンが使われている。天井にはシーリングファン。
レジカウンター横にはレコードプレイヤーがあり、ちょうど私の好きなテイラー・スウィフトの曲が流れていて、その優しい歌声が部屋中を満たしている。
曲名はAugust。もしかしたら店名とかかっているのかもしれない。

レジには美味しそうな焼き菓子が並んだショーケース。
だけどそれより目を引いたのは、その向かいの壁一面に吊り下げられた紙たちだ。そこには手書きで文字が書いてある。
隅にあったキャプションを読んでみると

「Anonymous Letters」

と書いてあった。
説明には、誰でも自由に匿名で手紙を書いて、ここに吊り下げてよいとある。

名前も性別も歳もわからない誰かが、その人しかわからない誰かに宛てた手紙。
もしかしたら、書いた自分自身に宛てたものかもしれない。
それは誰かに感謝する内容だったり、後悔をつづったものだったり、離れて暮らす人への逢いたい気持ちを込めたものだったりと、さまざまだ。

(誰だかわからないのに、その人が見えておもしろいな…)

と、読んでいて思った。

文字には個性が出ると思う。そこから性別や年齢を想像し、その内容からその人の人となりを想像していく。
そうして、まったく知らないはずの誰かが私の中で想像され、ぼんやり姿をおびて、こちらに語りかけてくる。
それがなんだかおもしろい。

たくさんあるのでずっと読んでいられそうだったが、しかしそこは切り上げて、私はレジでえびタルタルのクロワッサンサンドとティーラテを注文した。
そして空いていたテーブル席に腰を下ろす。
席は他にも壁に向かって設けられたカウンター席があったのだが、他のお客さんの存在を感じていたくてテーブル席にした。


(あ…フューチャーレターって、どこで買えるんだろ…?)


フューチャーレター。
それはこのお店のウリの1つ。
このお店は、フューチャーレターというレターセットを購入して、手紙を書いてスタッフさんに渡すと、指定した未来の日付になったときに手紙を届けてくれるサービスがあるのだ。

例えば、1年後の自分に宛てた手紙を書いて、1年後の日付を指定する。すると指定されたその日に届くように送ってくれるのだ。

これがやりたくて、今日はこのお店に来たのだ。
だが、どこでレターセットを購入するのだろう。
1階で販売していたのかな?
考えていても仕方がないので、レジのスタッフさんに聞いてみると、

「1階で販売しています。封をするときは、お好きなシーリングスタンプをご利用できますので、また1階のスッタフに声をかけてみてください」

とのことだった。

さっそく1階へ戻り、レターセットを購入して、再び2階の席に着く。
ちょうどサンドイッチとラテも運ばれてきたので、食事を済ませてから書くことにした。


フューチャーレターの宛先は、誰でもいいそうだ。
私は自分に宛てて手紙を書いた。
1年後の自分。
いったい何をしているだろう。
1年ぐらいだと、今とたいして変わっていないだろうか。
それとも、ささやかでも何か変わっているものなのだろうか。

自分自身へ手紙を書くって、なんだか不思議だ。
未来の自分というのが、自分であって自分じゃないように感じるからか。
どういった言葉遣いで、どんな文章を書こう…
そうやって少しだけ苦戦しつつ書いた手紙を、1年後、読んだ私はどんな気持ちになるのだろうか…


自分用を書き終えたあと、私は2通目の手紙に取りかかった。
これは1年後の彼に向けてだ。
今の気持ちや、未来の2人を想像して書いた。
そして、どちらもそれぞれの誕生日に届くようにした。

(なんだか、タイムカプセルみたいだな…)

そう思うと届くのがすごく楽しみになった。


そういえば、封をするためシーリングスタンプのやり方を教わっているとき、
スッタフさんがこんな話しをしてくれた。

以前、フューチャーレターを書きに妊婦さんが来たそうだ。
その人は、もうすぐ産まれるお腹の子に宛てた手紙を書いて、
1歳の誕生日頃に届くよう日付を指定したらしい。
出産前の今、どんな気持ちで誕生を待っているのかをつづって、その子が大きくなったときに改めて渡したいんだそうだ。

すてきな話だと思った。
自分が産まれる前に書かれた、自分への手紙。
その子はどんな気持ちでそれを読むのだろうか…


ところで。
私はお店に来てからずっと気になっているものがある。

スタッフさん達が着ているTシャツだ。

白地に胸にさわやかな景色の写真。
背面の首のつけ根には、どうやらこのお店のロゴがプリントされている。
これはおしゃれなカフェによくあるオリジナルグッズではないか…
欲しいなぁ…
そう思ってスタッフさんに訊ねると、販売しているとのことだった…!

よし、買おう!
この夏、ヘビロテするTシャツが決まったぞ!

ポストカードTシャツという名前だった。
オーナーが旅行場所で撮影した写真を
ポストカード風にTシャツにしたとのこと。





※このレポートはフィクションです!※

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

今回紹介したお店「Letter′s Cafe  August」は、
私が想像した架空のカフェです。

実際にはありません。

以前から

「カフェのロゴマークが入ったグッズって、おしゃれですてきだな…。自分でも考えてみたいな」

と思っていて、
思い切って架空の店を考えてロゴを作り、そのロゴでTシャツを作成してみました!
(表紙の写真がロゴマークです)

そして、いつもエッセイレポートとして、すてきなお店などを紹介する記事を投稿していたので、
「せっかくだからこの架空のカフェでレポートを書いてみるのもおもしろいかな」と思い、エセレポートとして記事を書いてみました。

ですが、実際のお店を参考にさせていただいたところもあるので、
そちらのHPのリンクを貼らせていただきます。


こちらのお店では、本当に1年後の未来に宛てた手紙が送れるそうです!

まだ行ったことがないのですが、調べていてぜひ私も行ってみたいと思いました!

ご興味ありましたら、みなさんも行ってみてください!








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