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好きなもの、好きなこと

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映画・本・コーヒーなど、好きなものについて綴ったエッセイ
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#映画

映画『ミッシング』から、失ったものものを考える

観たら、絶対に苦しいに決まっている吉田恵輔監督作品。でも、どうにも引きつけられて、観ない選択はないのです。石原さとみさんの気合の伝わる番宣もたくさん目にして、待ち遠しくて、初日の初回に行ってきました。 あらすじ『ミッシング』=行方不明・見つからない・欠けているあらすじにもあるように、娘の美羽が行方不明になって3か月というところから、この映画は始まる。いなくなった娘を探す話だと思っていたので、母親である私は、沙織里目線で観ることになるのかな?と思っていたのだけど、沙織里が頑張

ドキュメンタリー映画「14歳の栞」を見て

息子がこの春、中学2年生になった。14歳になる年である。半分子供だけど半分は大人で、少しは思慮深くなり、でも間違いやすくて、傷つきやすくて危なっかしい難しい年ごろに突入していくのだろう。同級生のなかには、既にそういう時期が訪れているように見える子もいる。 「14歳の栞」は、とある学校の2年6組の3学期に密着し、35人全員のインタビューとともにまとめたドキュメンタリー映画。2021年3月に初上映されて以降、毎年春に限定で再上映されていて気になっていた。息子がこの春で中学2年生

祖父から受け継いだ“映画好き”の遺伝子

私が生まれた時、唯一生きていたのが父方の祖母。明治生まれの働き者で、「やることもきっちりやるけれど、言うこともちゃんと言う」というタイプの人で、ちょっと怖かった。いや、本当は私は怖くなかったけれど、周りの人が祖母のことを「怖いばあさん」だと思っていたのは、子どもながらに私も感じていた。 そのおばあちゃんも私が8歳の時に心不全で亡くなったのだけど、亡くなった後、父方の親族が集まる時によく話題に上る話が、私は好きだった。 祖母は、子どもを9人!産み、育てながら、片道3キロほど

映画の「つまらない」について考える

先日、映画の終わりに聞こえよがしに「つまらない」と言った人がいて、私は憤った。 とりあえず、その出来事についてnoteに書くことで、一定の溜飲は下がったのだけど、「つまらない」という言葉が、頭から離れない。(全然溜飲下がってない)…ということで、この際、ちょっと深堀りてみることにした。それにしても、ちょっと/深堀りって、結局一体どっち?と、自分に突っ込みを入れつつ…。 1.『つまらない』=分からない 最初に思い浮かんだのが、つまらないんじゃなくて、分からなかったんじゃな

映画『ほつれる』がAmazon Primeにあるので、魅力について語ってみる

昨年、私が観た映画52本を振り返ってみて、ダントツに印象に残っているのは加藤拓也監督の『ほつれる』。観ている最中、登場人物全員にドン引きしまくって、あまりに引きすぎて、映画を観ている間中、暗闇で薄ら笑うか、眉間にしわを寄せているかのどちらかだった。84分間の上映時間中、60分くらいは思い通りにならない自分の表情筋と闘っていた。 それなのに、どうしようもなく魅力的で、忘れられなくて、癖になってしまっている。なぜだ。 分からないけれど、もしかしたら、私と同じ感覚を味わいたい奇特な