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夜のお友達とひたすら歩いた話

おひさまが出ていて、少し風の強い都会の中をあてもなく2人で歩き、小さな奥まった公園で肉まんとお酒を口に入れる。目の前の池にはおたまじゃくしがたくさんいて、一定間隔で人がそれを見にやって来る。老夫婦、謎のカップル、チェロを背負ったおじさん、着飾ったアイドルグループ。

あなたのことを、少しだけ教えてくれた。
苦手なこと。その苦手なことを埋めるようにしたらうまく生きれるようになったけど、そうしたら見える世界の色が鮮やかでなくなってしまったこと。
プライベートなことを教えてくれて、何の気ないふりして聞いていたけど、すごくすごく嬉しかった。

「あなたは、苦手なこととかないの?」
急に聞かれたので戸惑ってしまったけど、相手が話してくれたのなら、私も話すのが義理だ。

うまく言葉は出て来なかったけど、ぽつり、ぽつりとなんとか話した。
孤独を生きていること。人間関係が苦手なこと。
目を見て話すことはできなかった。まさに今闘っている最中で、泣きそうになってしまったから。

上を見上げると、アパートに囲まれていて、”人の生活があるね”と同時に言った。


真夜中に炒飯を食べに行った。深夜1時。
食べ終わった後、まだホテルに戻る気分でもなく、またあてもなく歩いた。何の話をしたかは覚えていない。「寒くないの?」と聞かれたので、素直に寒いと言ったら、上着を貸してくれた。あなたは肌着姿。遠くから見たら、おかしな2人組だったと思う。途中のコンビニでコーヒーを買った。私はアイス、あなたはホット。

近くにまた公園を見つけて、ベンチで何を話すでもなくぼーっとしていた。心地よかった。欠けた月が気持ち悪いくらい大きくて、すぐに住宅街に沈んでいった。跨って揺らす遊具に乗って遊んだ。なんでもない時間が、映画のワンシーンのように思えた。


翌朝、やっぱりあなたは6時には目を覚ましていた。しばらく寝ているふりをして、何をしているのかそっと見ていた。

寝起きも優しいあなた。軽いキスから始まる朝なんて、こんな幸福な瞬間ないと思う。起き上がっては押し倒され、随分と長い時間キスをしていた。


出発の時間が近付いてくる。まだベッドの上で抱き合いながらキスをしていた。ずっと流していた音楽、そのときにかかったのはカネコアヤノのセゾン。

「いろんな話をしてきたね、2人」。

なぜか歌詞がどんどん頭に入ってきた。思わず泣いてしまった。
まだあなたと一緒にいたい。これからもあなたと一緒にいたい。私だけを見てほしい。でも、これを言ったらこの穏やかな関係が終わってしまうかもしれない。そんな苦しさがどんどん涙に変わって流れていった。

「なんで泣いてるの、泣かないで。」
そうやって、急に泣き出す私を笑ったり面倒くさがったりせず、優しく微笑んで強く抱き締めてくれるのだって、ずるい。
もしかしたら、もう会ってくれないかもしれない。止められない涙を自覚して、覚悟した。


たぶん私は、何年経っても、あなたとお酒を飲んだ小さな汚い公園や、目的地も決めず歩いた夜道を忘れないと思う。
だから、泣いた。

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