四国みやげの話

 3月25日から27日にかけて、高校の友人と四国旅行をした。
 高校の修学旅行でみかん狩りをした我々は、社会人を目前とした今、あの頃のみかん狩りをもう一度体験することを試みた。しかし、もうシーズンが終わったとのことで、みかん園は閉園してしまっていた。
 出発前からいきなり出鼻を挫かれたが、そんなことで機嫌を損ねる我々ではなかった。青春時代をともに過ごした旧友と7時間も車内にいれば、4人の空気感はあの頃に戻ったように体に馴染んだ。

 悪天候の中、愛媛に到着したころには、もう夜だった。道後温泉ちかくの宿にチェックインをし、鯛めしを食べた。鯛めしって、高級な卵かけご飯だった。そのあとは、お酒を飲みながらゆったりと過ごした。

 3月26日。まだ雨が降っていた。傘をさしながら道後温泉近辺の店を散策し、昼食としてカキフライ定食を食べた。そして特に温泉に思い入れを抱かないまま、愛媛を後にした。
 香川にある四国水族館へと向かい、その道中でだんだんと雨は止んでいった。
 大人料金で入館し、まずは屋外でイルカショーを見た。風が強かった。楽しげな孫の姿を画面に収めようとするお爺さんが、イルカのあげた飛沫をすべてその背中で受け止めていた。
 この日は、古民家風な一棟貸しの宿に泊まった。熊が出そうなほど竹林に囲まれていたが、中はリフォームされていて、モダンだけど風情のある、おしゃれな作りだった。とてつもなく寒かったが、こたつがあったおかげで死なずに済んだ。パジャマを用意してこなかった私以外の3人は、明日の服を着て寝ていた。

 3月27日。宿から出て、製麺所でうどんを食べた。自分の箸でうどん一玉を掴み、お椀に入れる。そこで、店のおばさんが「あなたとあなたは温かいの、そっちの2人はぶっかけね。」と私たちのメニューを勝手に決めていった。勝手に決められたけど、おいしかったからなんでも良かった。沸騰する釜の様子や黄金に輝く天ぷらを写真に収めたかったが、店内は撮影禁止だった。
 そのあと愛知へと出発した。快晴の与島で楽しみすぎて、約束の時間に間に合うか不安だったが、無事に間に合い、事故もなく帰ってくることができた。

 四国旅行を終え、次の日にはまた雨の中、静岡へと帰った。到着したのは夜だった。

 バイト先のみんなのために買ったおみやげは、四国水族館で選んだものだった。そういえば、まだバイト辞めてないんだった、とふと思い出し、パッケージに「限定」と書いてある10個入りのお菓子を適当に選んだ。
 そのとき私は、なによりクラゲのボールペンに夢中だったのだ。ボールペンの先端上部にクラゲがついており、柔らかいシリコン素材なのでゆらゆらと揺れるのが可愛くてしょうがなかった。ほんとうに気に入ったので、水族館に行った日の夜はこれを握りしめたまま寝たのだ。

 静岡に帰ってきた次の日の朝、暴風雨の中なんとかバイト先に到着し、家から持ってきたおみやげをカバンから取り出した。
 「四国へ行ってきました!ぜひお召し上がりください〜!」とテンション高めなメモを残したところで、気がついた。
 パッケージをよく見ると、「水族館限定」と書かれていた。
 
 水族館限定?四国限定じゃなくて?

 まさかと思いつつ、私が購入したおみやげをインターネットで検索すると、全国のありとあらゆる水族館のホームページが羅列された。それらはどれもおみやげ購入ページであり、このおみやげはネットで購入することも出来るらしかった。

 四国のおみやげを買ってきたと思ったら、全国で買える身近なお菓子を買ってきただけだった。
 

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