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こんにちは。Kiwi PR合同会社の植田聡子です。

定年まで都庁の職員として働こうと管理職試験も受けたりしてきたのに、退職を決意するきっかけとなったこと。その一つに、東京2020組織委員会で働いた経験が大きく影響しています。

オリンピック、パラリンピックの賛成だ反対だ、のレベルで仕事が嫌になったという意味ではありません。

今の運営のゴタゴタについても、組織委のメンバーはむしろ振り回されながらも、懸命にミッションを果たそうとしているビジネスパーソンです。その上にある政治や経済が大きく足かせとなっていることに対し、同情や腹立たしさなど複雑な感情があります。

私が東京2020組織委員会で得た大きな知見は、こんなに色々な企業の優秀な人々が世の中にいて、こんなに彼らは柔軟な働き方をして自分の能力を発揮しているのだと知ったことです。

民間企業の出向者の働き方に触れて

都庁や国の官僚は「長時間労働してナンボ」くらいの激しい自己犠牲が身についています。ひと昔前の価値観である、忙しすぎて、産業医面談にまた呼ばれちゃった、なんていうのが軽い自慢になるような、そんな雰囲気はまだまだ残っています。

そして、定刻に集まることなど規則を重んじるのも役人の習性です。ランチを12時より少し早く出る、くらいで信じられないくらい怒る人は大体役人です。私はその辺りがだいぶルーズなのは、民間出身だからかもしれません。

民間企業の人々は、キリがいいところでランチに出る、午後の予定も合わせてタイミングを図るなど、個人の裁量も多くありました。時間ぴったりに出ることではなく、1時間休憩を取得すること、成果を上げることにはコミットしている印象です。

私の部署は、上司も部下も役人が少なく、複数の民間企業やフリーランスの方々に囲まれていました。各社から出向している人たちについては、時々、各社の担当の方々が彼らに会いに来たり、挨拶したりするんですね。元上司とか、人事の方とか、人事考課や昇格や企業の動向などコミュニケーションを取っている姿を何度も目にしました。

そして、彼らの残業が多すぎたり、過度な働き方があれば、各社から正式に人事に抗議も寄せられます。そして、大会終了後にどんな部署に異動したいのか、という意向なども細やかにコミュニケートしているのも印象に残っています。

「組織委員会さん」とよそモノ扱いされる

一方、都庁の職員はどうでしょうか。一旦、組織委員会に派遣されたら、まるで「腫れ物扱い」です。

私は所属上はオリンピック・パラリンピック準備局に属し、そこから東京2020組織委員会に派遣、という位置付けでしたが、都庁との打合せで部下(都職員ではないメンバー)と都庁に行くと、「組織委員会さん」と言われたことも一度や二度ではありません。同じ部署の職員とは全く思えないよそモノ扱いで、名前すら呼ばれないような人もいました。

組織委員会に出向しても同じ都の職員なんだという、帰属意識や一体感はなくなりました。都庁にとっては、国もJOCも組織委員会もステークホルダーに過ぎず、小池知事の意向にそっているかどうかが最重要項目なのです。ましてや私が組織委員会でどんな働き方をしているか、その後どんなキャリアを積むべきか、など考えている人はゼロです。

民間企業のキャリア構築と違って、役所は「人事はアンタッチャブル」という風土ゆえなのですが、こんなに人を大切にする企業がしかもたくさんあるのだ、都庁が一人一人を大切にするなんてあり得ないのだ、と痛感したのは、西新宿を10年以上ぶりに離れたから感じたことだと思います。

価値観が変わる瞬間

自分の当たり前が当たり前でなかったと知った時、価値観は大きく揺さぶられます。働くってなんなのだろう?

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/12/pdf/019-030.pdf

この、日本・アメリカ・中国の管理職の働き方についての論文は非常に興味深くて、また別の機会に色々考えたいと思いますが、印象的な一言をご紹介します。
(26ページ)

日本では会社への忠誠心は低いにもかかわらず、辞めたいとは思わず、もしくは、辞めたいとは思えず、会社に留まっているのである。(中略)
外部労働市場が発達しているアメリカや中国では、管理職と会社が相思相愛でなければ雇用契約関係が解消されるのに対し、日本では経営に不満があったとしても、転職できず、声もあげず、漫然と居続けるということが起こりうるのである。

まさにこれが地方公務員が長く働いてしまう背景だと思いました。「仕事はつらくて当たり前という耐性」と、「他の働き方を知らない視野の狭さ」が選択を狭めてしまうのだなと改めて思いました。

どんなに安定した立場で収入を確保されても、時間を買うことはできないと思うと、本当にやりたいことができる時間は貴重です。また、公務員がブラックな職場として優秀な学生から選ばれなくなることが、組織の長期的な劣化につながる認識を持って、働き方改革の根本から取り組むとともに、個人のキャリアに寄り添うために何ができるかをもっと真剣に考える時期に来ていると思います。



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