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時給を上げても人が集まらないという採用の悩み

こんにちは。Kiwi PR合同会社の植田聡子です。


娘が新卒で就職した会社から新しく転職しました。自分の関心ある業界、仕事内容、給与、休日などの待遇、また通勤場所の環境などあれこれ悩んで決めたようです。

飲食店に人が集まらない

一方で我が街、神楽坂界隈。行き交う人々も多く、都内でも活気がある街の一つに挙げられるとは思いますが、その陰で特に飲食店の「閉店のお知らせ」を多く目にします。

地域ネタを色々教えてくださる方によると、「お客は来るけど、従業員がいないからクローズ」が多いのだと。特に大きいハコのお店ほどその傾向が顕著のようですね。

飲食店の方々は望まざるに関わらず、時給を上げて募集広告を出します。
そして「それでも人が来ない」と嘆きます。

時給は安くても働くアルバイト

娘は転職前の1か月、勤務先の人員予算の都合で内定先でアルバイトとして勤務しています。正式な採用は3月なのですが、1か月アルバイトとして勤務しながら前任者から丁寧な引継ぎを受けているそうです。

内定者アルバイトでありながら、名刺も用意いただき、関係者へご挨拶したり、側から見れば「アルバイトか、社員かわからない」ような扱いです。社会保険加入もでき、アルバイトながら社員の皆さんはとても親切に接してくださることに喜んでいます。

ただし・・・時給は決して高くないそうです。1か月の辛抱とはいえ・・・ですね。

私の仮説〜時給の高さではなく、働き方に着目すべきでは〜

娘のアルバイトの様子を聞いて、私の脳内で飲食店の人材獲得についての仮説が浮かんだのです。時給の高さは条件の一つでしかなく、他の条件について求職者のニーズと向き合わないといけないなと。ニーズとしてはこの3つ。

  1. 給料の高さ

  2. 働く内容

  3. 働いた後の未来のビジョン

今、人手不足が課題となっている業界は1つめの条件のみを訴求している印象があるのです。2つめ、3つめは見て見ぬふりでスルーしているのではないでしょうか。

働く内容とは

大昔、私が学生の頃の飲食バイトは、同世代の学生がたくさんいて、和気あいあいと働いて、バイト仲間が友人になって、一緒に旅行に行ったり、ドライブに行ったりしました。もちろん土曜や日曜の夜はお客様がたくさんいらして、ウェイティングもあり、キッチンの調理担当もピリピリした雰囲気などになることもありましたが、普段はキッチン、ホールの垣根を超えて、新メニューの試作など楽しい時間がたくさんありました。そう、人数として余裕があったのです。

今、人手不足だけでなく、店側も人件費の見方についてはよりシビアになっています。常に「最低人員で店を回そう」とします。ずっと立ちっぱなしで、トイレに行く暇もなく、あちこちのお客様から呼ばれ、空いている時間などあれば、バックヤードやトイレの清掃までやらされる。お茶を飲む暇もなく、ただただ「無駄なく働かせよう」という店の姿勢を、アルバイトも感じています。「働く人」としての自分の成長云々より、日々の店の運営が最低限のコストで円滑であることに全力を注がなくてはならないのです。

学生が本業である学業の合間に働いている以上、過酷な就労環境を避けたいという心理は避けられないでしょう。今の世代でいうところの、「タイパが悪い」と思われる可能性大です。そして、一度、店にアルバイトとして契約したら自分の働きたい時だけでなく、大量のシフトを入れられるという恐怖も感じています。だとしたら、隙間時間に働けるTimeeのようなしがらみのない働き方を望むのも必然。

主婦の方のパートなども、同じ仕事なら体力的に長く続けられそうな職種を選ぶのも自然の流れとなります。

働いた後の未来のビジョンとは

これは学生にも主婦の方にもいえることなのですが、「それだけ働いて何を得られるのか」もバイト選びには重要なポイントです。

学生であれば「履歴書、自己アピールで活用できそうな経験」があればベスト。ただホールでへとへとになるまで働いて、得られるメリットは時給だけ、となると時給の高くて、もう少し楽な仕事、に目移りしてしまいます。

そのためには店の経営者のビジョンを共有して、採用や教育、財務、経理など経営目線に近い経験を積ませるなど、何か将来につながる絵を見せることも必要。

一方、主婦の方などは柔軟な働き方ができるかどうか。少ないシフトで回して、お子さんの学校行事のように事前に決まったスケジュールだけでなく、突発的な病気などの時に、シフトに穴を空けることで申し訳ないと思ったり、皮肉を言われるような職場は避けたくなります。そこは本来、多少の穴が空いてもやりくりする経営側の責務なのですが、本来ならそこまで責任を負う必要のないアルバイトへの負荷が大きくなっているのが現状です。

とはいえ・・・ここは結構難儀ですね。

既に時代として、以前人気が高かった航空会社のCAでも成り手が減り、退職者も増えていると聞いています。これは飲食業界だけでなく、介護業界などにも言えますが、業界全体の魅力やキャリアパスが見えていくことが求められるのです。

コンプラ重視の昨今だから

昭和、平成の価値観から大きくアップデートした今、「人を人として扱わない」業界はどんどん敬遠される傾向が大きくなっています。特に今の20代以下は「怒られることなく育った」世代。

そのような指導体制については雇う側も十分気にしているのはヒシと伝わってきます。

次のステップは「そこで自分が働く意味」を訴求することではないでしょうか。時給だけで釣るような求人広告ではなく、「なぜそこで働くのか」「どんな人たちとどんな時間が過ごせるのか」といった解像度で「働く」ことをリアルに、相手のニーズを把握してメリットを提示すること。「メリットはもはや時給だけではない」と自覚して、リファラル採用(既存従業員からの紹介による採用)につなげるには、今の労働環境を時給以外で徹底的に見直していくことが求められるのだと、改めて考えました。


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