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汝、必中ノ魔弾ニ魂ヲ委ネヨ[遊戯王マスターデュエル 魔弾]

私はマスターデュエルのリリースにて約5年ぶりほどに遊戯王へ復帰した為、このテーマのことをよく知らなかった。
そんな私は魔弾デッキを組んでそのあまりのかっこよさとイラストの素晴らしさ、そして楽しさに感動した。まだ本格的に魔弾を使い初めて3週間程度の為性能面に関して語れる部分は少ないが、とかくこのテーマの好きなところと良いところをメインに語りたく思う。
伝えたいことは2つ。設定とストーリーのカードテキスト・イラストへの落とし込みの凄さ、使っていて楽しいということ。


[魔弾]とは

まず、このテーマのモチーフ等をざっくりと解説していく。
このテーマは2つのモチーフから成り立っている。それはオペラ[魔弾の射手]の登場人物とアウトローのガンマン達だ。
前者はマックス・カスパール・ザミエル、後者はスター・キッド・ワイルド・カラミティだ。後者については各々のカード説明で元ネタと思われる存在の説明をする。以下より大まかに[魔弾の射手]の話をする。

[魔弾の射手]とはドイツのオペラである。射手の意のままに命中させることのできる魔弾を所持する者の話だ。この話に関して話の展開に諸説ある上、それなりに長いので本当に概要としてのざっくりとした説明とさせて頂く。後に説明する部分に関わるこの太字の部分だけ覚えておいて頂きたい。

猟師マックスは恋人のアガーテと婚姻を果たす為、来る射撃大会で結果を残さねばならない。だが最近スランプに陥っていて結果を残せるか不安に思う心の隙につけこみ、知り合いの猟師カスパールは彼を悪魔ザミエルと契約させる。そしてザミエルは魔弾の製造方法を教え、その結果マックスは契約により必中の魔弾を7発得る。この魔弾は最後の一発だけ射手の意思でなく、ザミエルの望むものへ当たる。
猟師カスパールの目的はマックスを陥れることにあった。彼は既に悪魔ザミエルと契約を交わし、必中の魔弾を持っていた。だが、悪魔との契約の対価には自身、あるいは別の命を捧げなければならない。
カスパールは身代わりとしてマックスをザミエルと契約させ、その命を捧げることで自身が助かろうとした。

射撃大会当日、マックスは魔弾を使い好成績を納める。最後の一発だけを手元に残して。
だが領主が彼に飛んでいる白い鳩を撃てと命令し、マックスは最後の魔弾を発射してしまう。魔弾の行く先はマックスとの結婚に備えて花嫁衣装を見に纏い、白い花冠を被った恋人のアガーテだった。
しかし、魔弾はアガーテの白い花冠に弾かれ、カスパールを撃ち抜く。
マックスは領主へ魔弾のことを打ち明ける。領主は一年の執行猶予の後、二人の婚姻を認めたのだった。

以上が[魔弾の射手]の大まかな話だ。

魔弾の射手と魔弾


魔弾テーマのカードには共通効果がある。
魔弾モンスターがいれば相手ターンであれども手札から魔弾魔法罠を使用できる効果。そしてモンスター効果、魔法罠ともにターン1の制約があること。また、下級魔弾モンスターには自身と同じ縦列での魔法罠発動をトリガーとした効果が備わっている。
以上の3つが基本的な共通効果だ。

魔弾テーマの好きなところの大きな1つに、魔弾モンスター1体につき、1枚は魔弾を放つイラストの魔弾魔法罠が用意されているという点だ。
魔弾モンスターにはザミエルを除き、共通して[魔弾の射手~]という名称がつく。
魔弾魔法罠は[魔弾~]という名称が共通名称となっている。モンスターが射手で魔法罠は魔弾、という設定になっている。

魔弾モンスターはザミエルを除き、自身と同じ縦列で魔法罠が発動することを効果発動のトリガーとしている。これは射手により放たれる魔弾をイメージさせる効果だ。
魔弾魔法罠は破壊や効果の無効化といった使い切りの相手への干渉効果が大半を占めており、魔弾の射手モンスターは効果により魔弾カードのサーチ・サルベージを主としている。
上記2つにより射手が魔弾を放ち、次弾を装填するというイメージが湧いてくる。
この設定の効果への落とし込みが本当に素晴らしい。

ではザミエルにはどのような設定との絡みがあるのか。彼のイラストが描かれている魔弾カードは2種類あり、そのどちらも永続罠だ。片方はザミエルとカスパール、もう片方はザミエルとマックスの描かれたイラストの永続罠なのだ。これは悪魔との契約を連想させる。
実際に永続罠とはそのもので見ればカードの発動をトリガーとする魔弾の射手モンスターとは相性が悪い。だが悪魔との契約なので射手にとって使い勝手が悪くて当然なのだ。ここのバランスとモチーフの落とし込みには本当に感服した。また、契約や取引の対価といった要素の強調としてか、魔弾の射手モンスターの腕はザミエルの腕に変化している。このイラストの演出も独自解釈として面白い。
ちなみにザミエル本体も非常に扱いにくく、魔弾デッキに入らないというケースの方が多いカードとなっている。

カード紹介

魔弾唯一の上級モンスター。基本的にはマックスの効果で呼ぶことになる。が、制圧効果や捲り効果があるわけではないので率先して出すメリットは少ない。基本的にダメ押しか打点要員かのどちらかで呼ぶことになる。後述するクロスドミネーターとネバーエンドルフィンで5000ダメージを与えるロマン砲が可能。
光属性の悪魔であったり、設定としてはあくまで魔弾の製造方法を教える悪魔だったり、妙に紳士的な格好をしていたりと非常に胡散臭いところが素晴らしい。
共通効果でモンスター魔法罠問わず魔弾カードをサーチ可能。1ターン目に立て、各種ツボや同胞の絆等で効果を発動したい。魔弾デッキのエンジンであり核。
持っている銃はザミエルのものと色違い、最高。
効果破壊の無効はサンダーボルトやライトニングストームといった捲り札に対して後述するデットマンズバーストの温存に繋がる。魔弾デッキは魔法罠のセットを基本的には行わず、羽箒等使用される状況は少ないため②の効果を目にする機会は少ない。
カード名は直訳すると悪魔との取引、まっすぐ銃を構えるカスパールと背後に立つザミエルの構図があまりにもかっこいい。背景の青い壁のようなものは恐らくザミエルの翼であると思われる。これにより生まれる閉塞感、カスパールはザミエルとの契約から逃れられないストーリーを想起させる。これが最高。
最強のアド取りカード。いかにこのカード効果を多く有効的に通せるか否かが魔弾デッキの肝といっても過言ではない。流石に魔法罠同列発動での効果は備わっていない。
猟師らしく狙撃銃を持ち羽帽子を被っているのが素敵。赤い背景がカスパールの青い背景と対になっているのも最高。
展開力の乏しい魔弾にとってありがたい効果なので隙を見てカスパールかマックスでサーチしたいカード。相手ターンの特殊召喚でリンク先封じができたりするとかっこいい。
カード名は直訳すると血の冠。苦悩するマックスに嘲笑うザミエル、そして舞う白い花。前述したマックスが7発目の魔弾を放つシーンである。デビルズディールにて迷いなく構えるカスパールとの対比的構図になっているのもあまりに芸術点が高い。ザミエルの腕と化した自身の腕で顔を覆っているのも面白い。最高のカード。
カスパールに次ぐ魔弾のエンジンであり核。基本的には効果でカスパールかドクトルを呼ぶことが多い。
モチーフは【ベル・スター】。3度の結婚を経てそのいずれも相手はならず者の男であった。そのことから山賊女王と俗されているとのことで、どことなく風貌と佇まいに魔性を感じられる。
墓地依存の高いデッキに対しては圧倒的な制圧力を誇るカード。墓地利用の多いデッキに対してはいかにして毎ターンドクトルでこのカードを回収できる体制を敷くかが肝となる。
ぐるぐると回転しながらスターが銃を乱射している。ベヨネッタを彷彿とさせる。ダンシングニードルとデットマンズバーストに関してはものすごい量の弾を乱射していて魔弾とは何かを考えさせられるイラストとなっており非常に面白い。
初動として引くと微妙ではあるがデッキには欠かせないカード。いかに早くカスパールとドクトルを並べられるかが盤石な場面作りへと繋がる。
モチーフは【ドク・ホリディ】。医学博士であったことがイラストに色濃く反映されている。
ダイレクトアタック不可のデメリット付パンプアップ。各種ツボや汎用魔法がない際にカスパールやスターの効果起動札として使い捨てることもしばしば。コンバットトリックにも使えるが魔弾モンスターはザミエル以外ステータスが低いためさほどの驚異は生めない。とはいえ有事の際に備えて一枚はデッキに搭載しておきたい。
ドクトルがアンプルを加えながら白目を剥いて狙撃をしているシーン。ネバーエンドと脳内麻薬であるエンドルフィンをかけたカード名となっている。終わらない脳内麻薬とでもいうのだろうか。イラストのインパクトにセンス溢れるカード名が合わさった至高の一枚。
手札交換で状況に応じて不要な魔弾カードを捨てて手札の質を高めることができる。また、捨てたカードをドクトルで拾うといった流れもよく使う。魔弾にしては高めの基礎ステータスも重宝する。が、安定性のなさから初動としては心許ないという部分はある。
モチーフは言わずとしれた【ビリー・ザ・キッド】これぞ西部劇といった王道の正統派ガンマンな風貌と美形ぶりはただただ純粋にかっこいい。
常に握っていたい魔弾その1。効果の無効化に加え、攻守を0にするとあってもはや弱いはずがないカード。妨害、耐性無効、コンバットトリックと用法は多岐に渡る。先行カスパールスタートで相手のデッキが分からない場合、まず一枚握っておいて間違いのないカード。
二丁拳銃を交差で撃つというかっこよさのなんたるかが詰まった最高のイラスト。効果の強さも合わさり引くだけでテンションの上がるカード。
墓地依存効果なので先行1ターン目に立てた際に微妙なことと、あらかじめ墓地に魔弾モンスターがいなければならないことから使い勝手はそれほど良いものではない。
モチーフは【カラミティ・ジェーン】。女アウトローということで同じ女性魔弾キャラとしてスターと比べて筋肉質に見受けられる。
常に握っていたい魔弾その2。シンプルにして非常に汎用性が高い。言うまでもなく強い。
カード名にイラストにとモチーフはまず間違いなく映画[デスペラード]であろう。ケツ。
カラミティと同じく初動として微妙であり、魔弾において積極的に立てたいドクトルの能力と噛み合わせが悪いことからも実用性は微妙なところ。
モチーフは【ワイルド・ビル】。10人からの奇襲を全員返り討ちにした逸話が有名。どれが魔弾なのかまるでわからない圧倒的重装備から繰り出されるイラストのインパクトは絶大。
常に握っていたい魔弾その3。クロスドミネーター、デスペラード、デッドマンズバーストが三種の神器。その強さのほどは効果の通りである。特に融合デッキや儀式デッキといった魔法依存の強い相手に対して圧倒的な拒否性能を見せる。採用率の高い捲り札の一種である[禁じられた一滴]に対しても、モンスターや魔法に比べて採用枚数の少ない罠カードという性質上チェーンして発動できる機会も多い。
ワイルドが鬼の形相でマシンガンを乱射している。魔弾とは何かを考えさせられるイラストのカードその2。[ランボーシリーズ]にて既視感のあるイラストだが、元ネタは彼の死に様である【デッドマンズ・ハンド】に起因しているものと考えられる。

圧倒的なメンタル有利の可視化

魔弾デッキは基本的に低速でビートダウンしていくデッキになる。必然的に相手へターンを渡す回数は多く、向こうの展開と攻撃をやり過す必要がある。加えて強力な妨害となる魔弾魔法罠は1ターンに1枚しか発動できないため、無闇矢鱈と使用することはできない。
いかにして最低限の妨害で最大限の効果を発揮させるかが重要になる。また、そのためには相手に見えない魔弾魔法罠を警戒させることが非常に重要だ。
カードを伏せる必要がない、という点において灰流うららに対する警戒と似た性質がある。前述した魔弾魔法罠の妨害の質から、未公開の手札があるだけでそれら全てがブラフとなりうる。
相手にターンを渡すし、選択肢も与える。だが、本命のカードだけを通さない。可能性を見せつつも与えない、戦いながら相手の心を摘むという戦い方に魔弾デッキは長けている。
ステータスの低い下級モンスターが立っているのにそれを突破できない。伏せカードがないのに魔法罠を警戒しなければならない。手札がある限り、相手は常にこちらの手札から見えない魔弾を警戒しなければならないのだ。
相手のスタミナ切れを待つというよりは、相手を消耗させることに重きを置いた攻めのスタミナ切れ勝ちを狙うデッキになる。魔弾デッキでは万事強固なステータスのモンスターが並ぶわけでも圧倒的な制圧盤面を敷くわけではない。相手から見たら突破できるのではと思わせる少し心許ない盤面のまま戦うことが多い。一見頼りないこちらの盤面を突破できない相手の姿が圧倒的な快感を生む。
ここに魔弾デッキの楽しさが集約されているものだと私は思う。これが一番楽しいのだ。圧倒的な絶望感を与えて勝つのではなく、常に可能性は与えながら相手を諦めさせる道筋を立て、どこで相手の心が折れたか見ることができるのだ。この駆け引きが楽しい。

設定の効果へ落とし込み、イラストの良さ、全てがハイスタンダード

以上が魔弾テーマだ。この設定とカード効果とのリンク、そしてギャグとシリアスとが混ざりあったバランス良いイラストの素晴らしさ、最高である。
使い手のプレイング、知識が勝率に現れるタイプのデッキであるため、やり込みがいもある。相手との駆け引きやリソース管理による勝利への道筋立てはやはり楽しい。
もっと研鑽を積み、デッキビルドやプレイングの解説も別の記事でできたらと思っている。

ちなみに表題の一文は遊戯王公式Twitterのものである。上記の説明を踏まえてこちらを見て、少しでも心に響くものが生まれたのであれば、悪魔へ魂を委ねる日も遠くない。


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