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福岡ソフトバンクホークス〜躍進の裏には強固な組織戦略とマーケティング戦略があった〜

こんにちは、湯田(ゆた)@yuta_lunaimです。
株式会社ルネイムという、デジタルマーケティング支援の会社を経営しています。20名程度の小規模な会社ですので私自身、

●コンサルティング
●営業
●マーケティング
●人事
●バックオフィス

などの様々な業務を兼務しており、有難いことに日々忙しく過ごさせていただいています。

そんな私はゴルフが好きで、最近はラウンドに行けていませんが、ゴルフ仲間からのお誘いで久しぶりにゴルフに勤しむことが出来そうです。

他にも音楽(R&B /Hip Hop)が好きで、中学校1年生あたりからブラックミュージックにハマり、趣味でデスクトップミュージックをやったりしています。

そんな私の趣味の中で最も歴が長く、迷惑なことに妻や娘にも強く推奨させていただいているのが「福岡ソフトバンクホークス」です。そう、プロ野球のやつです。熊本県出身で物心ついた頃からホークスが好きになり、最早、趣味というより生き甲斐化しており、シーズン中は生活の中心が野球になるくらいです。(仕事はきちんとしています)

今年は開幕も遅れ、無観客試合が続いており、少々寂しい気持ちはありますが、テレビの前で静かに応援させていただいています。因みに私は球場でも外野スタンド席ではなく、指定席でビールを片手に粛粛と観戦する派です。

日頃からコンテンツを書いている私としては、いつかホークスに関するコンテンツを発信したいと思っていましたが、ようやくこうしてお披露目させていただいた次第です。完全に趣味コンテンツですので、就業時間外に夜な夜な書き溜めていました。

この10年で合計6回の日本一を成し遂げているホークスは「常勝軍団」とまで呼ばれるようになりました。しかし、私がホークスを好きになったのは小学校3年生頃であり、当時は前身の福岡ダイエーホークス時代で、お世辞にも「強い」「人気」とは程遠い球団だったと思います。

そんなホークスが何故、ここまで強く、そして人気のある球団へと成長することが出来たのかを私なりに深掘りしてみたいと思います。

常勝軍団と呼ばれるまでの組織戦略

私は1986年生まれで、私が2才の頃にホークスが九州へとやってきました。(前身は南海ホークス)

1989年〜2004年までがダイエー時代で、2005年以降がソフトバンクとなります。まずは年度別のリーグ成績表を見ていきましょう。

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情報参照元:日本野球機構

上記図表の通り、1989年〜1997年まで毎年Bクラス(各リーグ6球団中、1位〜3位がAクラス、4位〜6位がBクラス)であり、前身の南海時代からホークスを知る人からすれば、今の強さが想像出来ないほど正直、弱かったと言えるでしょう。

そんなホークスが強くなるきっかけとなった転機は、大きく分けて2回あったと思っています。

1回目は1995年、球界2大レジェンドの1人である、王貞治氏の監督就任です。尚、同年に現監督の工藤公康氏も西武からダイエーへ移籍しています。

就任後、最初の数年間はそれまでと同様に低迷が続き、王監督や選手の乗ったバスへファンが生卵を投げつけるという事件が起きています。今では考えられませんが、当時のファンはそれほど熱狂的だったということでしょう。(絶対やってはいけません)

しかし、1998年12年ぶりにAクラス入りすると、翌年の1999年からはリーグ首位争いの常連と化しています。王監督は選手としてだけではなく、巧みな采配や選手育成にも秀でており『人を扱うこと』に長けている人物として評価されています。

監督勇退後は、福岡ソフトバンクホークス取締役会長としてホークスを支え続け、今でも選手の獲得や育成に力を注いでいます。

そして2回目の転機は、2009年の秋山幸二氏が監督就任したことではないでしょうか。当時のホークスは、主力の故障や若手の育成不足などが原因で黄金時代に陰りが出ており成績が低迷していました。

そこで球団首脳陣は、ドラフトやトレード頼みの戦力ではなく、チームの根本的な総合力を高める為、選手育成を改めて注力する方針を立て、プロ野球初となる三軍制を導入したのです。

当時、球団のマーケティング取締役を務めていた小林至氏(現・桜美林大学健康福祉学群教授)は過去のインタビューで次のように述べています。

外国人選手や主力選手の寿命が長く、その選手の力が急激に衰えてきた時に次代を担う選手がポン、と出てくるのを待つ姿勢だと、偶然狙いのチーム作りになってしまう。そこで、常に勝てるチーム作りをめざし、王貞治会長、秋山監督やスタッフと一緒に実務部隊でシミュレーションをして、実戦の中で若手を鍛える場としての三軍制の態勢作りを約半年かけて、すすめました。

中略

ファームは、一軍で戦う選手の調整の場であり、同時に選手も育てないといけない。でも実際は、二軍だけでその役割を全うすることは難しい。今すぐには芽が出なくても中長期的なビジョンを持って若手を育てる場としての三軍が必要でした。

引用元:現代ビジネス

この三軍制は今日のホークスになくてはならない育成システムであり、ホークスの強さの源と言っても過言ではありません。毎年、10人程度の育成契約選手を入団させており、ドラフト指名には上がらないけど、一芸を持っている選手を獲得・育成することで選手層の厚みを図っているのです。

例えば、

●体は小さいけど足の早い選手
●当たれば大きい長打力を持っている選手
●打撃・守備は雑だが、肩が強い選手

など、磨けば光る原石を探して、独自の育成システムで輝かせることに球団をあげて力を入れており、この育成システムは球界屈指ではないでしょうか。

育成(三軍)出身で活躍する選手は、

●千賀滉大 選手(投手)
●甲斐拓也 選手(捕手)
●牧原大成 選手(内野手)
●周東右京 選手(内野手)

など、球団、そして球界を代表する選手を多数輩出しており、育成システムの成功を物語っています。また、この育成システムは三軍だけでなく、レギュラー争いを繰り広げる1軍・2軍選手の練習にも大きく影響していると言われています。

そして、ホークスの育成システム成功の裏には、王監督をはじめとする首脳陣の賛同や会社(球団)の資金援助などの大きな要因があります。

2016年3月には、一流のトレーニング設備やサウナ・リハビリ用プールなどを揃え、約60億円を投じた二軍・三軍の施設を完成させています。つまり、成果が見えない中でも、大きな初期投資を実行してくれるような会社の体制でなければ三軍制は成功しなかったでしょう。

ホークスはソフトバンクグループという国内屈指の資金力を持つ会社の球団ではありますが「必要な時に必要な分の投資は惜しまない」経営戦略が最も深く根付いている球団でもあると思います。

ここで言う投資とは金銭的なことだけではありません。これだけの仕組み作りは何年も時間を要する上に、幹部陣の熱量がなければ成り立たないでしょう。これは企業においても同じことが言えます。

優れた企業は採用だけではなく、社員の育成にも力を入れており、未来の核となる人材を常に育てています。仮に、育てた社員が転職や独立をするとしても「この会社でキャリアを積めて良かった」と思われる企業体制が求められます。

ホークスの育成システムがビジネスの場でも語られることが多いのは、組織の規模を問わず、改革の精神や、やり切れる幹部陣の実行力、先を見据えて会社の為になる投資は惜しまないこと、などの大切さを改めて気づかせてくれた事例ではないでしょうか。

人気上昇の背景にあったリアル×デジタルのマーケティング戦略

日本のプロ野球人気は年々高まっており、特にこの数年で女性ファンが一気に増えた印象が強いです。「カープ女子」なるワードは正にそれを物語っており、実際に球場へ足を運ぶと女性ファンを多く見かけます。

ホークスの人気要因の前に、まずは全12球団の観客動員数について考察してみましょう。プロ野球は「興行」ですので、ビジネスとして捉えた際、各球団の観客動員数は、球場へ足を運んでくれる「優良顧客」をどれだけ抱えているかを測れる指標の1つと言えるでしょう。

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情報参照元:日本野球機構

上記は、2019年度の観客動員数ランキングです。リーグ別にまとめたものですが、阪神・読売(言い慣れないので、以降は「巨人」と言います)両伝統球団の動員数には圧倒されます。尚、上記ランキングは2019年度のみですが、過去10年を見ても阪神・巨人の動員数は群を抜いています。

次に注目していただきたいのが、パ・リーグの観客動員数ランキングです。野球があまり詳しくない方はピンとこないかもしれませんが、昔はセ・リーグと比較するとパ・リーグはあまり人気がありませんでした...

事実、私の祖父は巨人ファンだったので、祖父の家に行くとテレビで巨人の試合をよく観ていた記憶があります。当時は民放でもプロ野球中継は放送されていたのですが、パ・リーグの試合は放映されていなかったので(私の地元の話です)、ホークス戦をラジオで聞いていました。

そんな不人気と言われていたパ・リーグの観客動員数がここまで伸びた背景にあるのは、「地域密着」を全面的に打ち出した各球団の戦略ではないでしょうか。上記ランキングのパ・リーグ欄を見ると、6球団中5球団がチーム名に本拠地の地名が入っています。

そして、パ・リーグで圧倒的に観客動員数を伸ばしているのがホークスです。暗黒時代を知る私としては感慨深いものです。ここからはホークスが何故、これまでの人気を得ることが出来たのかを深掘りしていきましょう。 

まずはファンイベントの成功が挙げられます。近年のプロ野球では、シーズン中に各球団がイベントを催すのが通例となっています。ホークスでは、「鷹の祭典」と称したイベントに加え、女性ファン特化の「タカガールデー」を毎年開催しています。

タカガールデーでは、毎年異なるデザインの特別ユニフォームを女性の来場者限定で入場時に配布されます。主にピンクを基調としたデザインで、球団カラーではないものの、女性ファンには圧倒的に人気のあるユニフォームです。しかも、無料で配布されるので皆さん、とても喜んでいます。

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画像引用元:タカガール
上記は2019年に東京ドームで開催されたタカガールデーの模様です。

ホークスはタカガールデーに力を入れており、球団オフィシャルのWEBサイトとは別で、タカガール専用サイトを立ち上げ、年間を通してイベントの認知拡大や来場促進のPRを行っています。

また、タカガールデーのユニフォームは事前に制作した何通りかのデザインの中からファン投票によって正式デザインを採用するシステムを設けています。

プロ野球は元来、男性ファンがメインでしたが、劇的な観客動員数増加や球団収益増加の為には、女性ファンを獲得することが必須であり、これらの取り組みが功を奏して、この数年で大幅な女性ファンの増加を成功させています。

上記ユニフォームは無料ですが、球場内ではグッズが多く販売されており、球場に足を運んでもらうことで、グッズの販売収益を伸ばすことも出来るでしょう。

ホークスは、イベント全体でのコンセプト統一、年間を通したイベント認知度の拡大、ファン参加型の企画などに注力して、CS(顧客満足度)の最大化を図っています。

次に、デジタル面、特にSNSの活用が挙げられます。昨今はSNSを活用する企業が増えていますが、プロ野球界も例外ではありません。

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情報参照元:ベースボールチャンネル

上記グラフは2019年12月時点でのTwitter・Instagram・Facebook公式アカウントのフォロワー数と2020年4月時点でのLINE・YouTube公式アカウントの登録者数を比較したものです。

SNS全体の合計では、Twitterフォロワー数140万超えの阪神がトップとなっています。

しかし、媒体別で見ると、近年ユーザー数増加が著しいInstagramでは、巨人がトップであったり、上記グラフには記載していませんが、千葉ロッテがTikTok、東北楽天がViberを始めるなどの独自路線も見落とせないポイントでしょう。

グラフ上でのホークスは3位となっていますので、あまり凄みを感じないかもしれませんが、私が注目しているのはグラフ外における2つのポイントです。

1つ目は、Instagramでの複数アカウント運用です。Instagramは写真をメインに、選手たちのオフショットや練習風景などが見れるので、ファンマーケティングに適しているSNSです。東京ヤクルト・埼玉西武以外の球団は公式アカウントを開設しています。(2019年12月時点)

実は上記グラフには入っていないInstagramアカウントがホークスにはいくつか存在します。ホークスのInstagramアカウントは合計7つ(著者確認済のもの)もあり、それぞれのアカウントでコンセプトを定めて運用しています。

①福岡ソフトバンクホークス公式
試合の模様や選手たちの練習風景・オフショット

②福岡ソフトバンクホークス パフォーマンスチーム
球団マスコットやハニーズ(女性パフォーマンスダンサー)コンテンツでアイドル要素有り。

③ハニーズダンスアカデミー
未来のハニーズたちのレッスン風景。ダンス教室のPR。YouTubeチャンネル有り。

④福岡ソフトバンクホークスグッズアカウント
球団オリジナルグッズの紹介。飛び先は専用ECサイト。

⑤HAWKSベースボールパーク筑後公式⭐️ひな丸のつぶやき⭐️
ファーム(二軍・三軍施設)マスコットによる施設や若手・育成選手の紹介。

⑥NPO法人ホークスジュニアアカデミー
野球を通した社会貢献活動の広報。Twitterも運用。

⑦ホークスキッズベースボールスクール
幼児〜小学4年生までの野球スクールのPR。

Instagram運用では投稿内容の統一感が大切とされていますが、ここまで細分化されたアカウント運用は他球団には無い独自の取り組みであり、プロ野球以外のSNS運用事例でも珍しいのではないでしょうか。大人から子どもまでホークスの世界観をいつでも感じることが出来るSNS運用を展開しています。

そして2つ目のポイントは、選手個人が積極的にSNSを活用している点です。スポーツ選手のSNS活用自体は珍しいことではないのですが、下記のグラフをご覧いただければ、ホークス選手の人気度合いが確認出来ます。

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情報参照元:プロ野球Freak

上記グラフはTwitter・Instagramアカウントを開設しているプロ野球選手の中で、フォロワー数トップ50へランクインしている選手アカウント数をまとめたものです。

ご覧いただいた通り、Twitter・Instagram両方で最も多くランクインしているのがホークスです。各選手の細かい順位は割愛しますが、いずれも上位が複数名います。

球団指示でSNSを運用しているわけではなく、選手各々が情報発信やファンとのコミュニケーションの場として活用していることでしょう。

これらを考察すると、1つの仮説が生まれます。

SNSは企業アカウントではなく代表や従業員などの個人アカウントの方が受け入れられやすいという話が有ります。SNSのコミュニケーション特性上、距離感が大切であり、個人アカウントの方が距離を縮めやすいとされているからです。

最近では企業全体でTwitterを運用しているケースを多く見かけるようになりましたが、情報発信を積極的に行なっているイメージを持っています。

企業の認知拡大を図れて、将来の問い合わせ選択肢の1つとしてユーザーの頭に残ることも可能でしょう。事実、BtoB界隈でもSNSを活用して新規取引が生まれているという話も数多く耳にします。

それでは話を戻しますが、ホークスの選手アカウントでも前述と似たような事象が起きているのではないかと推測します。SNSを利用している野球好きユーザーの中で、ホークスの選手は「SNSでよく見かける存在」でしょう。

しかし、野球好きだけど贔屓(ひいき)のチームが決まってないユーザーや、まだ野球に興味が湧いていないユーザーも同様に感じて無意識の内に、

何となく気になってフォロー

注目する選手

気になる球団

ファン化

のサイクルが起きているのではないかと、推測ではありますが私はそう思います。

更に、野球選手も芸能人同様「推し文化」があり、試合に勝った姿や活躍する姿だけでなく、SNSを通して推し選手のプライベートショットを見ることも出来ます。選手自身も自ら進んでSNSを楽しんでいるので、戦略のない戦略がここに成立するのです。

ホークスから学ぶ組織戦略とファンマーケティング

昨今のプロ野球では「強いだけ」「人気があるだけ」ではなく「強いから人気があり、人気があるから強い」が、球団としての勝ちパターンとなりつつあります。

●チーム総合力を高める為の徹底した球界屈指の育成システム
●チーム活性化を後押しできる球団の組織力と資金力
●リアル+デジタル(主にSNS)でのファンサービスの充実

これらの要因によってホークスは大きく躍進することが出来ました。

強い組織は、強い人が集まり強い思考が生まれ、強い意志を貫ける。低迷時代のホークスを救ったのは、この組織力のおかげでしょう。

そして「興行」の観点では、プロ野球という強力な商材や常勝軍団と呼ばれるまでになったチーム成績に甘んじることなく、リアル・デジタル両面にて、球団・首脳陣・選手が一丸となってファンサービスに取り組んだ結果が、今日のホークスの人気へと繋がっているのではないでしょうか。

少なくとも、私はホークスの歩んできた道からビジネスにも通ずる学びを得ることが出来たと思っています。冒頭でもお伝えした通り、私が経営する会社は小規模ではありますが、得た学びを活かして、愛される会社作りを実現させたいと思っています。

本noteでは、ホークスにフォーカスしましたが、他球団を応援している方は、ご自身が好きな球団の歴史やこれまでの取り組みを深掘りすると、仕事や私生活へ活かせる気付きを得られるかもしれません。

プロ野球の歴史は古く、各球団が独自のストーリーを持っていますので、是非実行してみてください。本noteと同様の記事が12球団全て揃ったら楽しそうです。

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