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夜に染まりすぎないで

恋人が出来たら風俗嬢を辞めようと思って3年が経った。

仕事を辞める理由なんて本当は何でもいい。業務内容とか人間関係とか、何となくとか。変わってしまうことが怖いから未来の恋人のせいにして逃げているだけだ。

どこかで「風俗はお金を稼ぎながら出来る自傷行為」というツイートを見た。辛い過去に辛い今を重ねて「今までのことなんて大したことなかったんだよ」と言い聞かせ自分を保つことは自傷行為なんだろうか。1ヶ月の本指名数、シティヘブンのフォロワー数、手渡しで渡される給料。可視化された自分の価値に一喜一憂することは自傷行為なんだろうか。毎日掲示板で自分の名前が書かれた誹謗中傷を探してしまうのは自傷行為なんだろうか。

名前も年齢も好きな食べ物も全部嘘で本当の私なんかどこにもいないのにそれがどこか心地よくて気持ち悪い。何を言われても何をされても源氏名ちゃんのせいだから、と見て見ぬふりする度に自分を見失っていくみたいで。私だったら怒るのかな、私だったら泣くのかな。そもそも私って一体何なんだろうね。

待機室で泣いてる女の子を見て正直羨ましいと思った。苦しいことを苦しいと、悲しいことを悲しいと思えるその鮮やかな感情が羨ましかった。私はいつからおかしくなっちゃったんだろう。客に60分ひたすら蹴られた時かな、無理矢理犯されて千円札を投げつけられた時かな、すれ違ったカップルに売女だと馬鹿にされた時かな、掲示板にあることないこと書かれた時かな。

「いつでも飛んで行くから」って言ってくれた男も「ずっと羽ちゃんの味方だから」って言ってくれたスタッフも「羽ちゃんの為なら何でもするよ」って言ってくれた客もみんな守ってくれなかった。この道を選んだのは自分自身で、生きるためにはお金が必要で。私の人生背負うほどの価値はないだろうけど、それでもいいから、無責任な言葉で止めて欲しかったよ。

唯一「夜に染まりすぎないで」と言ってくれたあの子は空を飛んだ。もう二度と更新されないSNSを見て、悔しくて苦しくてちょっとだけ美しいと思った。彼女を止めれなかった私が彼女に「もう一度だけ止めてほしい」なんて願うのは我儘ですか。

25歳までに業界卒業すると言い続けてるくせに近づけば近づくほど卒業する未来が見えなくなっていく。早く楽になりたいと思いながら自ら心を擦り減らしてるなんて馬鹿みたいですよね。でも「簡単に身体売って簡単に稼いでるわけじゃない」なんてしょうもないプライドとバグった貞操観念や承認欲求ぶら下げて行けるところなんてどこにもないから。逃げてるだけだって分かってるけど今はこの自傷行為に依存することしか出来ないんだと思う。流石にアラサーにもなって制服着てたら恥ずかしいな。

25歳じゃなくてもいつか普通の仕事をして普通の恋愛をして普通の生活がしたいです。そうなってるといいな、というかそうなるためにちゃんとします。ちゃんとするから見てて。

これも全て幸せな人生への伏線でありますように。

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