見出し画像

シン・ウルトラマン 感想

<ネタバレ注意>

 自分は特にウルトラマンには愛着がない。それはまずは断りを入れておかねばならない。

 世代的にはティガ~コスモスあたりだと思うがそこまで熱心に見ていたわけではない。その意味で、シリーズ作全てを子供の頃~大人にかけて何回も観ていたゴジラとはそもそものリテラシー(シリーズに関する理解度・知識の意)の差があった。シン・ゴジラは文句なしの傑作だと思うし、それはゴジラに対する自分のリテラシーの高さだけでなく現実のテーマを絡めてうまく調理されていたからだと思う。すなわち、シン・ゴジラに対する高評価というのは 「『ゴジラ』というキャラクター・怪獣およびそのシリーズに対する事前知識・リテラシーの高さ」と「 現代のテーマとのリンク」の2点から成立していた。

 結論から言えば、今回のシン・ウルトラマンには私自身のウルトラシリーズに対する「リテラシーの高さ」と一見して明らかな「テーマ性」が欠けていたため、十二分に味わうことが出来なかった可能性が高い。いきなり高濃度のコンテンツを浴びたところで解像度の低いレンズでは荒いイメージしか得られないように。

 まず「リテラシー」についてだが、登場する敵に関してゾフィやゼットンはソフビを見かけたことはあるな~程度しか印象がなく、外星人・ザラブやメフィラス星人についてはそもそも初見だった。そのほかのおそらくウルトラQ由来の怪獣(禍威獣)に関してもそう。なのでこういったある種リブート映画に対して視聴者のインプレッションを大きく左右する「ノスタルジア・ファクター」(回顧主義的感動)の作動機会が私の中で少なかった。

 つぎに、「テーマ性」に関してもゴジラが311を意識していたのはすぐに気づくが、今作はあまり思い浮かばない(国際協調だろうか?それとも外星人・上位的存在との共生?)。そのため、メッセージ性が乏しく感じてしまった。これは、私の感受性や受け止め方にも依存するため、もちろん一見してあきらかな「テーマ」を感じた方も多く存在すると思う。

 以上より、劇場を後にしたときに感じた率直な感想としては「シン・ゴジラ」や「シン・エヴァンゲリオン」ほどではないな、というところだった。繰り返しになるが、ゴジラやエヴァは自分の中に十数年の蓄積があり、その点で「ウルトラマン」は不利であることがこの感想を抱くに至った大きな要因だ。

 最期に、楽しみ方を間違えていた可能性も高い。最初の方の映像で今作はシン・ゴジラとはトーンが違うんだな、と自分の中で切り替える必要があった。ゴジラはその出自から暗いトーンを伴って描かれることが多い。もちろんシリーズの中ではガメラのように子供たちの味方で愛嬌がある描かれ方をされるものもあるが、基本的には初代ゴジラやシン・ゴジラなど「核」や「環境汚染」などの人間の業・自然に対する脅威などの重いテーマとともに出現する。だが、今作はどちらかというとより子供向けでライトなトーンだ。もちろん、怪獣には公害問題や社会問題の背景を持つものもいるだろうが。ただ、怪獣・外星人がたくさん登場しファンからするとサービス満点な一方で、本筋がわかりづらくなっていると感じた。個人的には津田健次郎には悪いがザラブ星人は飛ばしてもよかったなと思う(後から知ったが庵野秀明のお気に入りらしい)。

 2回目を観に行くとしたら、少なくとも本作の元になったエピソードぐらいは予習していきたい。また、シン・ゴジラとは別物という意識で最初から観れるので違った感想を得られるかもしれない。

<追記・2回目を観て>
 いろいろとYouTubeなどで知識を付けてから今度はIMAXで2回目を観る。話の流れがあらかじめ入っているからディテールを追うことに集中できた。巨大化した長澤まさみも初見よりはインパクトが薄れ、またセリフを追う余裕も出た。シン・エヴァを2回目に観たような余裕があり、シン・ゴジラとは違うけど名作だなと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?