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 「良いじゃないか」 SFショートショート

割引あり

 「良いじゃないか」

 ここに、痛みにからっきし弱い、貧相な化学者がいた。
ある日、これをどうにかできないものかと、本気で思い詰める。
そして、無痛薬なる物を創ろうと、固く心に決めた。
それから、助手へこう云う。
「これから私は、無痛薬の研究へ入るぞっ!」
「何ですか? それは?」
と助手は、珍しい生き物を観るような目付きをする。
「言葉通り、痛みを全然感じなくする薬だよっ」
「麻酔薬みたいな物ですか?」
「いいや。それじゃぁ意識までなくなるだろ。私が創ろうと云うのは、チャンと普通に生活ができて、痛くも痒くもなくなる薬だよ❤」
こう化学者は、市役所の融通が利かない男のような、憎たらしい顔を笑わせる。
「それは、とっても危ないんじゃないですか? 痛いから、体は異常が判るし、何をするにも注意するんですよ?」
 助手は化学者へ、間抜けだと云いたそうだ。
「そんな事があるか。私のように、半年毎に健康診断さえすれば、大きな病気は予防できるじゃぁないか」
とこちらも、負けずにアホだと云いたそうである。

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