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「レストア」 SFショートショート

割引あり

 「レストア」

 アメリカ東部の小さな町の一郭に、陽子力学研究所へ勤める、ギルバートは棲んでた。
元、雑貨屋の倉庫だった彼の住まいは、彼が個人的に研究を続けてる、物質再生装置の機械を置くのには、もってこいの広さがある。
彼の助手兼、フィアンセのジョディは、優秀な研究所の同僚でもあった。
 その日遅くに彼らは、静物の再生実験を始める。
これが、成功すれば実験の第一段階は、めでたく終わるのだ。
「ギルッ、粉々にしちゃっていいのかしら?」
ジョディは、大き目のマグを片手に、ハンマーを持ってる。
人間がスッポリ入る大きさの、横長のカプセルの脇に立ってそう云った。
「初めてだから、ちょっと手加減してくれよ。できるだけ優しくね。ククククククッ❤」
とギルバートは、さも愉快そうに笑って云う。
「そうね。やんちゃ坊主の、お尻をひっぱたくくらいには、せいぜい優しくするわ❤」
ジョディは、トレイの上へタオルを敷き、マグをそっと置く。
それから、ハンマーで見事に、真っぷたつにした。
「ジョディ君は、東洋の空手でも習ってるのかい? マグを、スイカみたいに割るなんて、凄い腕前じゃないか!?」
「よく判ったわね。カレッジにいた頃、護身術にいいからって、キャッシーと一緒に通ってたのよ❤」
ギルバートは、苦笑いしながら、装置のセッティングを始める。
ジョディは、割れたマグをカプセルの真ん中へ置くと、ハッチをガチャリと閉めた。

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