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【歌詩】憂鬱の分類学

憂鬱の分類学


心が凪ぐ日は
何でも外に出たがる
モノクロの生活
何もかもほっぽり出して

赤い車 水を吐き出して
濡れた服はそのまま 熱が冷めるまま

 手を広げても羽は無いから
 これじゃ空にも抗えない
 ましてや地上に嫌われた僕なら

鮮やかな影が冬の風に揺れる
鞄の中は双眼鏡とポケット図鑑

白い車 僕を連れていけよ
どうぞお気に召すまま 神のなすがまま

 触れたものや進取の気質は
 水かきの痕から零れた
 ましてや海に嫌われた僕なら

ずっと野鳥を見ていた
ずっと植物を見ていた
すし詰めの学者たちは
膨大な時間を要して
大きなものを
分けて 分けて 選り分けて
小さな違いを
見つけ 見つけ 見つけ出して
唯一僕だけ どれでもない分類

 手を広げても羽は無いから
 これじゃ空にも抗えない
 ましてや地上に嫌われた僕なら

 花に水をそそいであげたら
 ずっと枯れないと思ってた
 ましてや愛に臆病な僕なら

僕たち進化を間違えた




この歌詩について

分類学とはざっくり言うと「生き物を種の特徴で分けて整理し、生物の多様性を研究する学問分野」。この歌詩は「人間の感情」を「生き物」になぞらえて書いてみた。

歌詩に出てくる「僕」は、自身の憂鬱な気持ちについて解明しようとしている。そのため身の回りのあらゆる生き物(=世界そのもの)を観察している。

しかし結局は「どれでもない僕」の中にこそ本当の理由があって、どれだけ世界そのものを明らかにしても自分が分からないと意味がないよねって歌。

そして自分自身と向き合えなかった「僕」は自己否定に走ってしまうのだった。(=僕たち進化を間違えた)


ムジナの芝居

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