東京工業大学材料系B2の話


はじめに

 こんにちは、もしかしたら前回の系所属の記事を覚えている人がいるかもしれませんが、改めて自己紹介をしようと思います。自分は2023年度に物質理工学院に入学し、翌年材料系に進級した者です。今回の記事はB2材料系の講義を私の実体験をもとに紹介し、材料系を志望する人、材料系のB2となった人が参考にできることを目的としています。
前回の記事では、自分の成績も公開しているため、ある程度参考にできるかもしれません。🦆
前回の記事↓
https://note.com/muuwosukuitai/n/n0b156504b6da
※随時更新して伝えていきます。(最終更新日:2024/07/11)

もしかして材料系って…?

1Qを通して感じたことそれは、『材料系楽じゃん!!』です。
理由はいくつかあって、

・専門科目のうち、必修が(講義3科目+実験3科目)だけ

・講義の進度が控えめで、多少出席しなくても間に合わせやすい

・式に代入するレベルな少量の課題提出で出席点を稼げる
(学生がナメられることが多い)

が特に感じたところです。

材料系は1科目あたりの負担が少ないから、何をやるか決まっていない人は興味がある講義を気軽に受講できるし、取る講義数を絞る人は他の活動に注力できるというように結構融通が利きます。

(求められるものが学力というより、体力等の健康さという印象もあります。)

現在2Qの途中ですが、無機材料実験のレポートに苦戦しすぎて、丸10日潰れています。(去年の癖)就寝時間は3時に収束しつつあり、毎日の1限が辛いです。無機材料実験は3種の材料実験のうちで最も辛いと言われているので、そう考えればやっていけないこともないです。
7/11追記

本編

※選択科目は自分が取らなかったものは紹介できません…( -人- ) ゴメンネ
名称変更されたり、担当教員変更等があるかもしれません。あくまでも私の受講時での話となります。

1Q

必修科目
・英語第五  
・中国語第一(第2外国語 2単位)  
・心理学B(文系教養 2単位)
専門必修科目
・材料量子力学(2単位)  
・材料熱力学(2単位)  
・情報処理概論演習(2単位)

選択科目
・応用基礎データサイエンス・AI第一
専門選択科目
・材料の熱的機械的性質(2単位)  
・基礎工業数学第一a(数学系開講)  
・光学(※英語開講)

1Qが一番忙しいという噂を耳にしましたが、1年次と比較して、2単位の講義が多いなという印象で、合計15単位にしてはそこまで負担はなかったです。
注意点としては、万が一必修の情報処理概論演習を落とすと3年次に取り直せないので大変なことになるらしいです。(教授談)

では、授業の感想等を並べていきます。

材料量子力学

材料系2年生必修の講義科目シリーズ(1/3)のこの科目、ちょっと厄介です。この講義では複数の先生達が数回毎に入れ替わりながら進みます。
内容としては、量子力学で説明できる現象の具体例から始まり、不確定性原理を諸演算子に適用して、電子の存在確率を見積ったり、井戸型ポテンシャルを求めて、そこからトンネル効果を考えたり、回転運動へ拡張する前半パートと水素原子の軌道から、原子価結合法・分子軌道法で水素分子や異核分子、多原子分子の軌道を求めてみる後半パートで分かれています。
意味を持つ函数を扱いながら、諸概念を導いていくので、頭の中で整理しやすく、また線形代数の知識が役に立ちます。
授業で使うアトキンスという教科書(結構高いけど必須)は若干癖があり、かなりの範囲をカバーしている分、ざっくりとした解説になっています。ガチガチに理論を確認しながら進みたい気持ちはグッと抑えて、そういうものだと割り切ることもしばしばありました。そもそも、量子力学自体かなりハードな導出があるので、全部理解してスッキリみたいなのは難しいです。
講義はスライドがあったり、プリントが配られたり、アトキンスを読むだけだったりと先生によって個性が出ます。小テストや課題が毎回あるので、1限は辛いですが頑張って出席しましょう。1年時の量子化学や線形代数第二を理解していると、殆ど躓くポイントのない講義だという印象です。
中間テストで蘇生されている人達がチラホラいました。

材料熱力学

材料系2年生必修の講義科目シリーズ(2/3)のこの科目、材料量子力学と同様にアトキンスをひたすら読み進めていくだけの授業になります。
最初の1〜3章あたりの状態方程式、状態関数、カルノーサイクルは1年時の化学熱力学等の知識で理解できますが、4章以降の多成分系の物理的変態、非理想溶液、相図は根気が必要です。数式的な処理から導かれる熱力学の概念に対して意味をつけていき、複雑な状態を定量的に評価していくものとなっています。
自分のときは先生が講義に不慣れなのか前半はゆったりと進んで、後半の厄介な内容を急ピッチで追い上げる高低差で耳がキーンとなりそうな講義でした。中間・期末試験での教科書等持ち込み可で、電卓必須です。(実は過去問と全く同じ内容、同じ数値でテストが実施されていたらしいです。持ち込み可で過去問と同じ内容はいかがなものかと言いたいところですが、間違いなく敗因は自分の実力不足でした。)
いつもの教科書の演習問題解いて、試験に臨む方法が殆ど意味をなさないので、戦略ミスでした。

情報処理概論演習

材料系2年生必修の講義科目シリーズ(3/3)のこの科目、不親切な点が多いです。
講義 : 演習 = 1 : 9 のエクセルとマクロ(VBA) についての講義になります。基本概念を講義された後、配布pdfテキスト中の演習問題をひたすら解く形で進行しました。演習問題が解けるようになるための要素が揃っていないこともあります。
エクセルの基本的な操作は結構省かれているので、試行錯誤が必要です。最初はグラフを指定の通り整えていくエクセル上での操作が基本ですが、途中からVBAと呼ばれるエクセルの機能を拡張するプログラミング言語を用いて、マクロを作って演習問題を解いたり、エクセル上に反映させたりと実践的な演習をします。
情報系にしては珍しく、中間・期末テストがあり、プログラムの穴埋め式記述試験です。←!?
いやおかしいだろと、思わずツッコんでしまいそうになりました。情報室にいるのだから、眼の前にあるコンピュータを使えばいいじゃないかと、まあ色々可笑しな点があります。出席確認が指差しで毎回数え直していたり、untilをうんてぃると呼び続けている教員がいたりとモヤモヤする部分が多かったです。
ともかく、4時間連続でエクセルをやり続けるのは負担がかなりあるので再履しないようにやっていました。授業の雰囲気はゆるいです。
期末試験は慢心で大ポカをかましたみたいです。

心理学B

文系教養科目は心理学にしました。1年時に心理学Aを取っていたので、気軽に履修しました。心理学A同様に毎回グループディスカッションとレスポンスシートがあります。加えて、授業の最初にある小テストとグループでの実験・発表、さらに期末テストの欲張りセットがあります。文面上は面倒くさそうに見えますが、実際面倒くさいです。ただ、やることは決まっていて、求められるレベルもそこまで高くないので、普通の文系教養という感じです。1年時同様、グループディスカッションが面白く、知り合いも多かったので気楽に受けられました。内容はシラバス・教科書通りなので調べれば大体想像がつくものだと思い、割愛します。
減点要素が多めなので、満点近くが欲しい人にはおすすめできないです。

中国語第一

第二外国語は中国語にしました。漢字という日本語との共通点に希望を見出し、選択したものの、ギャップがありました。
特に感じたのが、発音が難しいです。スキル的な側面と自分にとっての漢字の発音とリンクしないという側面での難しさがあります。
そして、文法が物凄く簡単という嬉しいギャップもありました。
内容としては、基本的な単語の意味や発音記号、簡単な挨拶、自己紹介です。
数回の小テストと課題で平常点を沢山いただきました。小テストは単語の書き取りで、授業に出ていて、発音を覚えていれば答えられるものでした。

材料の熱的機械的性質

タイトルの通り、材料の熱的性質と機械的(力学的?)性質について、それぞれ担当の先生が講義します。ちょうど先生の2人ともが新任となる講義で、2年生にはレベルの高い話もありました。
熱的性質は熱に関する概念の成り立ちを確認して、熱膨張・熱拡散・輻射・対流等に関する式を導出、応用します。簡単な演習問題もスライドにあって分かりやすいような気がします。
機械的性質は所謂材料力学にあたるもの(応力や歪等)や粘性と弾性を学びます。材料力学ほど実践的な演習はせず、何をやりたいのか、何をやればいいのかが分かりやすいです。一番難易度が高いものでも、回転テンソルを使ったり、粘弾性の連立方程式から一次の微分方程式導いて解くくらいの1年時の授業(力学第二、線形代数第二)の知識で問題なく解けるものでしたが、回転テンソルを使った授業から、人がごっそり消えたので、先生が学生のレベルをかなり低く見積っていました。(実際低いと思います。)
この講義で一番印象に残っているのが、期末テストです。講義スライドが熱的性質は約50〜60p×7、加えて機械的性質もあるので、まともに全部暗記するとなると負担が大きすぎるということで、熱的性質は基本概念と名前を抑えて、ハードな暗記は出さない、機械的性質は範囲を指定して負担を減らすというように事前に説明されていたものの、期末試験は殆どが暗記問題。暗記を出さない=演習問題をやっとけと解釈してしまったので、面をくらいました。特に熱的性質の5つの単語のうち3つを選んで、それぞれ200文字程度で説明する問題は正気を疑いました。
案の定、学生全体での試験の出来は悪かったようで、相対的に自分が評価される結果となりました。

基礎工業数学第一a

この講義は工業分野で重要な複素関数論を扱います。
関数を複素数範囲で扱うので、まずは実数関数からの拡張で導出していきます。e^iθやlogzを級数で考えて、複素数の複素数乗を考えることができるようになります。そして、複素数関数の微分可能性、正則性に関する定理を導出します。微分が使えるようになると、積分が使えるようになります。線積分やコーシーの積分定理を導き、複素数関数の正則性の意味を考えていきます。
工業数学という名前で被っている他の授業もあるみたいですが、こっちがヤバい方です。数学系の先生は個性の強い方が多い印象ですが、例に漏れずこの先生も個性が強いです。
数学の先生ということで、かなり厳密性と論理、板書の撮影に厳しいです。板書の撮影をした場合、法的措置を取ると何度もおっしゃっていたので注意しましょう。(そもそも板書、スライドの撮影はグレーです。)
初回の授業では60,70人程度いた人達が次の授業では半分ほどになっていました。どうやら化学数学に流れていったみたいです。
初回授業で先生が例年3割程度落単すると脅していたのもあったので、危険を察知したのでしょう。
ここまで地雷科目っぽい要素多めですが、勘違いしてほしくないのは、この講義は本当に取る意義があるということです。
まず、先生は厳密性に厳しいのですが、問題点・注意点を具体的に言語化して、説明まで繰り返して教えてくださります。速い板書にノートを追い付かせながら、話をちゃんと聞くと自己流で勉強するよりも理解がグンと深くなります。このような機会は滅多にないと思います。そのため、出席点はありませんが、授業に出席する重要性がかなり高いです。
さらに、講義の第5回あたりで出される課題の問題が殆どそのまま期末試験に出てきます。講義の第6(7)回で、その課題を解いてきた学生が黒板に解答を書いて、先生がボコボコにするのが恒例行事みたいです。そのボコボコな解答を修正しながら自分なりの解答を仕上げて試験に臨むという、全く新しい試験対策でした。解答を仕上げていく中で、理解がさらに深まり、紛いなりにもちゃんと数学と向き合えているように思えました。
試験の採点も当然厳しく、答えが合っていても、理解していることを伝える答案を心がけないと大変なことになります。ですが、授業を受けていれば、ある程度の質は担保されているので、やはり積極的に取り組んでいくべきだと思いました。
素点が60を下回っても、よっぽど酷くない限り救済をしてくれているみたいで、2Q時点で、60,70台の人達がまあまあいるとおっしゃっていました。
※救済されなかった人ももちろんいました♨

optics Ⅰ (光学) (英語開講)

この講義の話をするために記事を書いたと言えるくらいに素晴らしい講義でした。
木曜日空きコマ後の5,6時限目で、なおかつ英語開講科目ということもあり、履修者が10数人しかいなかったこの講義ですが、1Qの中で最も刺激を受けたと感じられる講義でした。
光学は名前の通り、光についての諸現象を数式によって導出していきます。光は電磁波であるため、1年の電磁気学第二で取り扱ったマクスウェル方程式やそこから導かれた電磁波の波動方程式を起点として進んでいきます。
光のエネルギー、圧力、散乱、反射、屈折、全反射、偏光、複屈折等、光に関係するトピックが色々ありますが、数式で表現できる気持ち良さに加えて、現実世界の現象とどのように結びついているのかを数式が教えてくれます。
また、説明のつかなかった部分に三角関数の複素数への拡張によって、虚部との関係を見つけ、新しい意味が分かってくるというように、1年時に学習した内容が大活躍してくれました。時折、光の特異な物理現象を活かした材料(デバイス)が登場してくるのも、材料系の授業として最高でした。
ところで、これからoptics Ⅰ を取ろうと思う人の中には、英語開講で躊躇している人もいると思いますが、その点は全く問題ないと思います。
確かに英語開講ではあるのですが、先生がスライドを英語で解説した後、再度日本語で補足してくださるので、授業に出ていれば理解できます。
ただし、スライド内、テストは英語表記(回答は日本語可)なので各単語が何を意味するかは意識しておきましょう。
期末テストもoptics Ⅰの最重要トピックで重点的に演習する偏光子、各講義後に取り組める小テスト(評価されない)から出てくるうえに、持ち込み可です。
自分はあまりにもこの講義が好きすぎて100点を狙って対策していましたが、どこかでポへをしたみたいです。

応用基礎データサイエンス・AI第一

1年の3Q,4Qでの基礎データサイエンス・AIの延長です。やはり、AI要素は殆どなくデータサイエンスの側面が強いです。Pythonで様々なパッケージを実行することで、データの統計に関する基本概念をプログラミングで利用していきます。オンデマンドで毎回の小テストがスライドと配布プログラムで答えが出る内容なのに加えて、レポート科目なのが良いところです。
1年の3Q,4Qでの基礎データサイエンス・AIを取れた人達は特に苦労することなく単位取得できる内容です。

2Q(2Q終了後追記予定)

3Q(3Q終了後追記予定)

4Q(4Q終了後追記予定)

まとめ(4Q終了後追記予定)

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