博物館デジタル化調査報告 No.8 〜バチカン美術館〜
こんにちは。ミューゼオの奈良です。
第8回は歴代ローマ教皇の収集品を収蔵展示する世界最大級の美術館で、ミケランジェロの代表作『最後の審判』が描かれているシスティーナ礼拝堂など複数の施設を含むバチカン美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はバチカン美術館公式Webサイトを参照)
バチカン美術館の概要
公的な施設と私立を含む様々な施設の総称
所在:バチカン市国
イタリア語の正式館名:Monumenti, Musei e Gallerie Pontificie
ヴァチカンの諸美術館は下記30にも及ぶ施設を内包しており、全長は7キロと言われている。
〈美術館などの施設 10館〉
バチカン絵画館(ピナコテーカ)、近代宗教美術コレクション、ピオ・クレメンティーノ美術館、布教・民族学美術館、グレゴリアーノ・エジプト美術館、グレゴリアーノ・エトルリア美術館、ピオ・キリスト教美術館、グレゴリアーノ世俗美術館、キアラモンティ美術館、ヴァチカン図書館美術館
〈博物館や礼拝堂などの施設 12館〉
馬車博物館、切手・貨幣博物館、教皇宮殿内のギャラリー、石碑ギャラリー、新館「ブラッチョ・ヌオーヴォ」ギャラリー、燭台ギャラリー、綴れ織りギャラリー、地図のギャラリー、教皇宮殿内の礼拝堂、システィーナ礼拝堂、ニコラウス5世の礼拝堂、ウルバヌス8世の礼拝堂
〈広間などの施設 8館〉
教皇宮殿内の居室および広間、ビーガの広間、聖ピウス5世の居室、ソビエスキの広間、無原罪のお宿りの広間、ラファエッロの間、ラッファエッロの開廊、キアロスクーロの広間
Webサイトの内容
https://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en.html
〈開館時間〉※日曜は基本休業
月〜土曜日 午前9:00-午後6:00(入場16:00まで)
毎月最終日曜日 午前9:00-午後2:00(入場12:30まで)
〈チケット〉入場無料
【1】360°トライアンファリス通りのネクロポリス
「トライアンファリス通りのネクロポリス」とは、新しい駐車場を建設しようとした際に地下から発見された古代の墓地のことである。上記サイトからweb上でも閲覧できる。
また、ページ内下部のカセットテープのようなマークをクリックするとVR用の画面に切り替わる。VR環境が整っている方は自宅からネクロポリスを体感することが可能だ。
【2】作品の修復について
https://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en/collezioni/ricerca-e-restauro.html
作品の修繕などを行う研究所は下記7つに分かれており、それぞれ研究所のページにおいて歴史や修復作品についてまとめている。
・タペストリーとテキスタイル修復研究所
・絵画・木材修復研究所
・民族学資料修復研究所
・石材修復研究所
・金属・陶磁器修復研究所
・モザイク修復研究所
・紙修復研究所
【3】それぞれの施設における傑作
https://www.museivaticani.va/content/museivaticani/en/collezioni/capolavori.html
ピオクレメンティーノ美術館やキアラモンティ美術館など、バチカン美術館に内包されている各施設の傑作をまとめている。
施設を選択した後、作品画像の左下にある「Go To the work」を押すと詳細も確認することができる。
SNSでの活動
バチカン美術館ではInstagramのみを利用して情報を発信。YouTubeはイベントごとに配信している。
●Instagram
作品の紹介がメインになっている。ひとつの投稿において複数枚の写真を添付し、その中から好きなものを選んでコメントしてもらう企画などもおこなっていた。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉非公開
〈本数〉1000以上
〈配信開始〉2016/10/27(5年前)から配信
〈最高視聴〉111,261 回視聴 2016/10/27
内容:「バチカン美術館へようこそ」
バチカン美術館が作成している多くの動画はBGMが特徴的である。映画のオープニングのような壮大な音楽と共に美術館について学ぶことができる。
Store情報
こちらからはバチカン美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●万年筆
ニコリーナ礼拝堂の中に描かれている椿を入れ込んだ万年筆。ケースやインクもセットになっている。ボディの色は他にも赤や緑など5色から選ぶことができるのも魅力的だ。
●ミケランジェロの命日450周年記念メダル
メダルや切手を記念に購入することが多く、ミュージアムショップにおいても人気なグッズだ。今回調査した際に販売していたのはこちらのメダルのみだったが、時期や年代によって異なるものを販売している。コレクションしてみても楽しいかもしれない。
●3Dポストカード
システィーナ礼拝堂の壁画にあるミケランジェロ作の「アダムの創造」など、バチカン美術館の所蔵品で代表的な作品が3Dになっている。迫力のあるポストカードだ。
まとめ
▶︎VRの環境にも対応できるデジタル展示
▶︎芸術の研究や調査もWebサイトから確認できる
▶︎SNSは他の美術館に比べ投稿も少なめである
バチカン美術館ではWebサイト内の情報やSNSをみても、情報をあまり発信していません。ですが毎年1800万人以上が7キロにおよぶ美術館に訪れています。来館者の心を掴む取り組みはどこにあるのか、実際に行って調査したいと思いました。
次回は国立故宮博物院について調査していきます。中国の国立博物館はどのようなデジタル化をしているのか。お楽しみに!