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パイロット Justus 万年筆を合わせる ~私とは?~

私の愛用している万年筆は、パイロットのJustusというものである。
この万年筆は少し変わっていて、2枚のプレートが重なった作りになっている。
軸を回すと上のプレートが動いて、細字になったり太字になったりと、インクの量を変えてくれる。
これは父が使っていたものを譲り受けたので、なおさら愛着がある。
しかし、始めは、自分の好みの字の太さがわからなかった。
何度もダイアルを回しては、もう少しインクがなめらかに出てほしいな、いやいやこれは出過ぎでしょ、といろいろと試行錯誤を重ねた結果、今の場所で落ち着いている。
どちらかというとソフト寄り。でも、完全なソフトまで振り切っていない。
たぶん、私はこれからもこの位置で、文字を書いていくだろう。
この作業は、自分を知る作業だ。
調整しては書いてみて、また調整して試してみる。
そうしてやっと、「自分の位置」が決まる。
万年筆と自分の趣向がひとつになった瞬間の気持ちよさ。
そうそう、この太さがいいんだよね、これからよろしく、という感じ。
万年筆に自分が寄り添い、万年筆も合わせてくれる。
他の万年筆達は、書いて書いて書きまくって、やっと万年筆が自分好みの形に変わってくれるけれど、Justusは、懐が広い。
さぁ、どうしたいの?なにがいいの?自分で決めて、と私に選択権を与えてくれる。
逆に言えば、私は自分で自分の位置を決めなくてはいけない。
誰に頼るのでもなく、自分で選ばなくてはいけない。
自由だからこその、緊張感。
でも、合わなかったらまたダイアルを回せばいいだけ。
回して、試して。
そうやって何度も繰り返して、万年筆との距離を縮めていく。
私は、これからもJustusと歩いていく。

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