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1on1ミーティングガイド (1on1ガイド)を読んでの感想

はじめに

この記事では先日公開された1on1ミーティングガイド (1on1ガイド)を読んで感じたことを書きました。
メインエディタ陣が広くフィードバックを求めていると書いてくれているので、僭越ながら僕も率直な感想記事を投稿したいと思った次第です。
以下の公開記念イベントも聴講しましたので、1on1ガイド作成の背景やメインエディタ3者それぞれの立場もある程度把握することができました。
https://career-update-org.connpass.com/event/311014/
なお、このガイドは「 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンス (CC BY-SA 4.0) 」というライセンスで公開されており、自由に引用できるとともに、今後はエディタが増える可能性もあるようです。

自己紹介

noteでは初めて記事を書くということもあって簡単に自己紹介を書いておきたいと思います。
僕は大学・大学院で数理情報・電子回路などを学んだ後、2013年に新卒でヤフーにソフトウェアエンジニアとして入社しました。
そして入社1年前の2012年からヤフー社内で導入が始まった1on1文化をまさに体験してきました。
そこでは部下に耳を傾けるマネージャー陣が当たり前のように揃っていて、恵まれた環境でした。
一方で当時お世話になった先輩からは1on1が導入される以前のマイクロマネジメントで厳しい上司像が当たり前だった時代のことも聞いていたので、ヤフー社内の変化がいかに急激だったかが伺えます。(今となっては1on1の実施が当たり前となってありがたみが減っていると思いますが、当時はそのようにマネージャーの考え方を一新したという意味で1on1全社導入のインパクトは大きかったと思います。)
また、ほどなくして所属部門ではスクラム開発が導入され、そこで僕は開発メンバ、スクラムマスター、プロダクトオーナーを経験し、在籍最後の2年間はリーダーを担当しました。
その後現職に転職し、20人程度のソフトウェアエンジニアが在籍する開発部門の部長を務めています。
また、ヤフーでリーダーとして1on1を実践していた頃には、国際コーチング連盟(ICF)の承認プログラムを提供しているMBCC(Mindfulness Based Coach Camp)の基礎コースと応用コースを受講し、1on1でコーチングの技術も活用するようになりました。
とはいえICFの認定資格までは取得していませんので、プロとしてではなくあくまで一介のエンジニアマネージャとして1on1を実践しています。

1on1ミーティングガイド(1on1ガイド)の第一印象

このガイドを見てまず印象に残ったのが、汎用性が高く読み手の立場をあまり選ばない内容となっていることです。
『ヤフーの1on1』(本間浩輔著)では上司が部下のために行う面談だとスコープを絞っているのに対して、この1on1ガイドでは組織と組織内の個人としか対象を絞っていません。
これは執筆者の立場が三者三様であることも影響しているのではないかと想像しています。
発起人は完全に外部の立場から1on1でカウンセリングに近い業務をしつつ社長や部長など組織の責任者にコンサルティングをする立場の方で、もう一人は上司と部下という関係性ではない対話を多く実施している方、そして最後の一人が上司と部下の関係性での1on1をメインに行っている方のようです。
また、2012年当時こそヤフーでの大規模な1on1導入は目を引くものだったと思いますが、今では数多くの企業で1on1が導入されており、その形態も多様化していることも(スコープを広げている)背景としてあろうかと思います。
僕自身、部長としての部下との1on1は人数が多いこともあり、純粋なコーチングをメインにはしておらず、従業員と企業がWin-Winとなるようなより広いスコープで意味のある1on1ができるよう心がけています。
そしてそのように多様化した1on1においても活用できるような、内容豊富ながら適度にカテゴライズされた優れたヒント集としてこの1on1ガイドは作り込まれていると感じました。
新任マネージャーにとっては必ずしも平易な内容では無いかもしれないとも思いましたが、内省するための参考資料としては間違いなく有用だと思いました。

自分が行っている1on1

次に、自分が実践している1on1の形態を簡単に箇条書き形式で紹介します。
ひとくちに1on1といっても自分が関わっている1on1はいくつか種類があります。

  • 上司(社長)との1on1

    • 部長としての相談や業務報告をし、社長からフィードバックや意見をもらうことで、経営者として何を重視しているかをしっかり把握するとともに経営方針についての認識がずれないようにします

    • 付随する要素として、組織の状況や今後の経営の構想について半分雑談のように話すことで管理者としてのお互いの信頼関係を深めています

  • CFOとの1on1

    • 昇給原資・賞与原資も含む開発部門の直近や将来の予算について認識合わせをすることで、金銭面で部下を裏切るような事態が生じないように気をつけます

    • 付随する要素は社長との1on1とほぼ同じです

  • 部下との月次面談(1on1)

    • 事前に記入してもらう専用のシートを元に、部下から業務報告や成果物・最近学んだことなどの説明を受け、お互い率直に感想を言い合うことで成果物の価値や本人の成長の大きさなどについてざっくりとした認識合わせをします

    • 付随する要素はメンバによって差が大きくあり、キャリアや人間関係にまつわる相談だったりプライベートの話だったり共通する趣味の話だったり技術雑談だったり哲学的な議論だったりと多種多様です

    • シートがあるので1ヶ月に1回でも前回何を話したっけ問題は起こりづらい一方、低頻度なので純粋なコーチングはほとんどしません

  • チームマネージャとの週1回の1on1

    • 各チームのマネージャーとは毎週1on1を行い、チーム運営や開発ロードマップの相談を受けたり、逆にこちらから経営方針と現場とのすり合わせを相談したりと、一番1on1らしい1on1をやっています

    • マネージャーは主体性の高いメンバが担うため、一番コーチングに近いことをやっている1on1でもあります

    • 付随する要素は月次面談とほぼ同じです

これらの1on1もそれぞれ開発部門を運営する視点でいろいろ考えながら実施しているのですが、それはまた今後別の記事で扱うことにして、ここではざっくりとした紹介にとどめます。
ここで書きたかったのは、このように僕自身が複数の形態の1on1をやっている、ということで、あえて特定の正解を用意しない1on1ガイドは自分自身にとってもしっくり来ています。

1on1ガイドを読んでいて印象に残った項目

以下では僕の中で印象に残った(何かしら脳内で思考が走って書き残しておきたいと思った)項目について感想を書きたいと思います。
ヒント集に対して感想をばらばらと書く感じで完全に乱文となってしまいましたが、自分の備忘録として、またメインエディタへの僅かながらのフィードバックとして、そして何かしらのヒントとして受け止めてくれる寛大な読者に向けての文章になります。

7.2. 相手を変えようとしない

最初にして最も強く頭の中で思考が走った項目です。
この「相手を変えようとしない」は僕がこれまでに数十人と1on1をした中で、本当に重要で基礎的なことだと感じていることです。
人というのは案外多くの人がのっぴきならない事情を抱えているものです。
あの人はなんであんな振る舞いをするのだろう?と疑問に思っても、深くその人の話を聞いていくと何かしらの事情がある、というのが本当に、本当に多いと思います。
僕が今までマネージャーをしていて最も驚いたことだといっても過言ではありません。
各々には各々の感じ方や感情の振れ幅があり、様々な過去の経緯があり、感情面でも人間関係でもプライベートでも数多くの制約があり、また特定の状況に対処するスキルにも大きな差があります。
そしてそういったものは周囲の人から言われずとも本人は(必ずしも言語化はできなくても)よく自覚しているものです。
なので他人から指摘されたところで対処に困ってしまい辛くなるだけ、ということがとても多いです。
もちろん例外は常にありますし本人が変化していくこと自体はとても素晴らしいことです。
しかし経験的にはその人が変わるよう支援するよりその人が変わらなくても状況が好転するような環境変化(細かいところでは役割や仕事の進め方の調整、大きなところではチームの再編成や人事異動など)をした方がWin-Winになることが多いと感じています。
この項目は相手を変えようとするという選択肢自体を否定するものではないと思いますが、ベースとしてはまず相手を変えようとするより相手の話にとにかく耳を傾けろ、というのが超重要だと思っています。

7.3. アドバイスする前に話を「最後まで聴く」

この項目は1on1に限らずあらゆる人(特に信頼関係を築きたい人)との対話において基礎の基礎に相当するものだと思います。
これは自分が新任リーダーでコーチングのトレーニングを受けていた頃の経験ですが、苦手な場合、最初はわざとらしく技法的になってしまっても、傾聴の本で学んだこと、たとえばあいづちを打ったり相手に寄り添う問いの投げ方などに意識を向けることが大事だと思いました。
傾聴は意外と難しく、習熟が必要な専門スキルだからです。
とはいえその道のプロにまでならなくとも、ある程度の技法を自分の身につけてしまえば相手の話に耳を傾けるという振る舞いをごく自然にできるようになると感じています。
また、そうすると自分から見える対話の世界も変わって、多少沈黙があってもまずは相手のペースに合わせて相手の話を聞ききる、というのもできるようになりました。
そしてそこまでいくとわざとらしさは自然となくなります。
というのも傾聴すると、今まで自分が想像していなかった内容が相手から聞けるようになるので、真に興味を持って相手の話を聞けるようになるからです。
そうすると相手としても興味を持ってもらえているなと感じ、自然に話を聞いてもらえている感覚になる、という理屈だと思っています。

7.4. 思いつきで話してみる

これができるのは1on1の醍醐味だと思います。
「今思いついたことなんですが」とか、「ふと浮かんだアイデアなんですが」という断りを入れたうえで議論の叩き台やきっかけを自分から発することは結構しているなと思います。
大人数の会議やテキストでのやり取りと違って見当違いのことを言ってしまってもリカバリーコストが低いから気軽に発言できる、という理屈ですね。

7.5. 自分の感情を言葉にする

感情にスポットを当てられるのもまた1on1の醍醐味だと感じています。
チームによってはスクラム開発におけるレトロスペクティブ(振り返り)などで個人の感情にスポットを当てて話すこともあると思いますが、やはり多人数だと自分の感情についての話で皆の時間を奪うことに抵抗を抱くことも多いはずです。
1on1であれば、より広いスコープで自分の感情を元にした相談をすることができると思います。
上司側はそういった感情を尊重し、何かしらアクションを起こせるなら手助けすると、部下の側もいろいろ話してくれるようになる感覚があります。
僕がまだ若手の部下だった時代も、上司に対して日々思ったこと、感じたことをよく話し、そして上司から感想をもらったり場合によっては行動してくれることを嬉しく思っていました。

7.10. 対話の間合いを近づける

この項目はマネージャーの得意不得意でいろんな方法がある項目だなと思いました。
以下に書くのはあくまで僕のスタイルで、全然別のスタイルでぐっと部下との距離を縮めるマネージャーもいて、凄いなと思うこともしばしばあります。
僕の場合はリアルタイムにその人の言いたいことの筋道や全体像を理解することがわりと得意(コーチングのトレーニングプログラムでそうフィードバックを受けたことがあります)なので、その人がやってきた仕事の内容だったり乗り越えるのが難しかった箇所を聞いて、それに対して共感したり興味を持って深堀りしたりして心理的距離を縮めようとするのをよくやります。
そして何より業務内容は同じ会社の上司部下の関係性であればほとんどがお互いにとっての共通の関心事だと思います。
そういう意味で業務報告が1on1のメインの内容だったとしても、そこでお互いの関心を満たせるように深堀りできれば十分に有益な内容になると考えています。
もちろん付随する要素として、プライベートの内容についても相手が話して心地よい材料があれば、そこに自分が興味を持って聞きます。
たまに本当に趣味が合うこともあって、むしろ相手にいろいろなことを教えてもらって自分も試してみて、感想を返したりすることもあります。が、これは僕の場合はですが、偶然というか幸運というか、あったら嬉しいな、程度の捉え方です。

7.12. その時のコンディション(振れ幅)をお互いに見る

個人的には項目7.2.や項目7.5.とも密接に関わる項目だと思っています。
繰り返しになりますが、存外多くの人がプライベートの出来事や体調で人知れず苦闘しているものです。
そういう状況でどうしたら個人と組織がWin-Winになれるか、相談する場として(特に環境を変化させる手段を持つ上司との)1on1は圧倒的に価値を見出しやすい機会だと思います。
相談を受けた上司の側としては、場合によっては何もアクションを起こせないかもしれませんが、その場合も正直に部下に話し、今は何も力になれなくてごめんなさい、という気持ちを僕は伝えるようにしています。

7.13. 背景や経緯を語る

この項目は1on1に限らずあらゆるトップダウンの意思決定を伝える際に重要だと思っていますが、中には1on1でないと話しにくい裏事情も意思決定の経緯にあったりするので、チームマネージャーとの1on1ではしばしばこのテーマで話すことがあります。

7.15. 一旦の結論を出して仮置きする、7.17. あえて解決を急がず、状況を解明する

この2項目はネガティブ・ケイパビリティの概念にも通じる内容だと思いました。
僕自身も複雑で困難な問題に対してはいったんの保留、グレーな判断、叩き台としての暫定案、最終結論前の実験などを、特にそういった進め方を許容できるチームマネージャーとは1on1(やマネージャー陣の少人数会議)でよく話すように思います。

7.16. 大きな問題・課題には本腰入れて取り組む

これも部長の自分の立場とチームマネージャーとの1on1で小さなものも含めると頻繁に発生します。
その後は1on1に限らず関係者との臨時の会議や分担作業になったりしますが、スタートを切るまでの相談とスタートを切る決意をするには1on1は有効な場だと感じています。

7.23. 記憶が薄れない程度に実施する

僕が実施している1on1の項で触れた、部下からの業務報告や学んだことの共有をメインとする月次面談とその際に用いる事前記入シートはもともと会社の施策なのですが、記憶が薄れないようにするうえで優れた仕組みだなと改めて感じました。
一方で非定型の内容を相談するチームマネージャーとの1on1は毎週実施することで忘れにくいようになっています。(と、振り返って思いました。)

以上、後半は完全に項目ごとの乱文となってしまいましたが、読んでて思ったことの備忘録として、書き残しておきたいと思います。
1on1ミーティングガイド(1on1ガイド)は具体的な内容についても自由に引用できるので、このように気軽に感想を書きやすい点もいいですね。
今後の発展も応援したいと思います。

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