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『サラリーマン川柳』を日本語教室で使ってみると・・・

今年も『サラリーマン川柳』の季節がやってきました。
第一生命主催の川柳コンクールで、1988年から始まったようで、
今年で34回目。本当にうまいこと言うなあと、いつも感心します。

着眼点や言葉の使い方にも感心するけど、その年の社会情勢とか、流行とかがわかるのがいい。

いつだったか、リストラで企業の人員削減が激しかった年の
「前向きに 駐車場にも 励まされ」という作品が私のお気に入り。
シンプルな日本語、短い(単語が少ない)、日本の今の状況がわかる、
ということで、日本語教室の教材として何年か続けて使っていました。
もちろん、対象は中級の学習者。

「中級」というのは、基本的な文法や表現を勉強する初級が修了した人。
私は、ポピュラーなテキスト『みんなの日本語』(発行:スリーエーネットワーク)を使っているのですが、初級の後半は、進行形や受け身、使役とだんだん難しくなって、最後は敬語(謙譲語、尊敬語、丁寧語)。
ここまで一通り勉強すれば、川柳は俳句や短歌と違って季語や昔の言葉遣いに縛られることがないので、読み解くことはそれほど難しくありません。

今回の大賞作品「会社へは 来るなと上司 行けと妻」だと、
助詞の「へ、は、と」の使い方や「来るな、行け」の命令形を復習し、
「来るな」と上司(が言います) の形で作文の練習もできます。
(上司、妻の後には、どんな言葉が来ますか、と考えさせたり)
語彙も増えるし、五・七・五は日本語のリズムをとる練習にもなります。

サラ川を教材にするときは、まず「日本には川柳、俳句、短歌という言葉の遊びがある」という話から始めます。
「遊び」というのは語弊があるかもしれないけど、あまり難しいことは伝わらないし、「川柳や俳句を作るのは楽しい」ということを伝えたいので、
あえて「遊び」と言っています。

でも、サラ川を聞いた時の外国人の反応はさまざま。
反応がいいのはやっぱり、母語(その人の国の言葉)にも長けていて、外国の文化にも関心をもっている人。つまり、かなり優秀な人。
日本に長く住んでいる外国人は面白さも理解できて、自国の国民性との違いといった話にまで広げていけます。

国によって文化も働き方も風習も違うから、言葉の意味は分かるけど、なぜその句が面白いのかがわからず、ポカンとしている外国人もいます。
その反応も興味深いんですけどね。

ネットにこれまでの応募作品が掲載されているので、見てみてください。
今回のサラ川は、コロナ禍の暮らしや仕事を題材にしたものが多いです。
何年後かに今回のサラ川を振り返った時、どんな思い出が甦るんだろう。
わずか17文字でいろいろな勉強ができます。


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