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‐ココロがはねるものを選んだ‐(某学園祭にて)

「何を買えばいいの?」

 実母がわたしに聞いてきた。
孫が作ったもの以外も未来の
クリエーターを応援してほしいと
言ったら、そんなことを聞く?
「あなたがこころを動かされたものを
  選べばいいのよ。」
「あ、そうなのね。」
(いや、わたしはあなたに美術館に
 連れて行ってもらったときに
 どう鑑賞したらいいかを、
 そう教わった……と思う)

 ここは、とある学園祭で
物販しているコーナー。
在学する学生が自分たちの作品を
ステッカーやポストカードにして
50円〜200円くらいで販売している。
学園の特徴から、全身を完璧なまでに
コスプレしている人もいて
にぎやかな雰囲気。
わたしは、衣裳も創作したのか
とても気になっていた。

 母自身も油絵を趣味にしているので、孫以外の作品については価格に
見合っているかを考えすぎだ。

 そう、商品の価値は
購入する消費者目線。
これが重要だと思う。
どんなきっかけで人がお金を使うかは、本人次第。
わたしも子どものおすすめを
聞きながら自分の
トキメキのようなものを
少しでも感じられないと
財布を開かない。

 戦利品を並べて考えてみた。
けっこう偏りがある。

わたしの選んだもの
1.かわいい感じがあるもの
2.背景がブルー基調で
  空や宇宙を感じるもの
3.自分のすきなアニメに
  似た感じがあるもの

 わたしの好みは、推しである娘の作品を除いて、この3点。
それから、他では見たことがないような世界で一つのもの。
今回の商品の中で
ピカイチだったものは、キーホルダー。

かに

 ちなみに制作者に話を
伺うことができた。
シヴァ「これは、シオマネキですよね。」
わたしは、左右の腕の大きさの違いから思ったことを聞いてみた。すると、
作者「名前は、分からないのですが
     (・・;)
  いろいろな種類の脚や手を
  組み合わせて目も
  キャラっぽくしました。」
返答に驚いた。
そんな細かい設定があったのかと。
シ「へーーーそうなんですね。
  なるほど。」
(聞いてみるとこだわりが強い! )
作「配色も本物とは違っていると……」
本当にそうだ。本来動いているものとは、明らかに違う。すごい。
シ「言われてみるとそうですね。
肉付きや関節の感じが秀逸です。」
直接、どんな想いを持って作ったかを
聞けるのは直販ならでは。
作者が販売中に買えてよかった。
シ「では、ください。」
作「ありがとうございます。」

 実は、この商品が人気であることを
わたしは知っていた。
ただ、実物を見るまでは
買いたい! とまでは
思っていなかったのだ。
なぜ、このキーホルダーが購買意欲を
掻き立てるのか。(600円でした)
見た目、存在も他のどの商品とも違う、こんな形のキーホルダーを。
そう、他の商品はかわいいものや、
人モチーフがほとんど。
ロボットでも形態が人型、
もしくは動物。
作者の頭の回路がきっと
変わっているのだろうとしか、
思えない。
ただ、クリエイターという点においては
天才的発想と思った。

 もうひとつ気になったものがあった。
本当は、売ってもらえないもの。
非売品。
商品の値段を表示したイラストだった。
帰り際にやはり、アレが欲しい! 
そう思ってコーナーに戻った。
そして、交渉したのだ。
「どうしてもこのイラストが
 売って欲しいのよ。」
販売係の子たちが顔を見合わせる。
「あの、緑の服を着た人が書いたので
聞いてみてください。」
指をさしている男の子をみると、
おとなしそうな感じがした。
「ね、この価格表示の絵を
 売ってくれないかな。」
すると驚いたように近づいてきたが
どうしていいか、
分からないといった様子。
同じ販売係の女の子が助け舟を出した。
「あ、じゃあこの人が書いた
 ポストカードとセットで。
 いいよね。」
作者の子がうなずく。
(わーーー言ってみるもんだ。
 ラッキー🎶)
わたしはうれしくなって、
小踊りしそうになった。

 ポストカードのイラストも
わたし好みでオトクな買い物だった。
どうして欲しくなったかと
帰ったあとになって考えたら
ジブリか、ディズニーの話に出てきた
キャラクターに酷似していた。
ジブリ作品では、となりのトトロ。
ディズニーでは、不思議の国のアリス。
エンボスのついた紙に書かれた
色鉛筆のタッチがやわらかくて
作品に合っていたからだと思う。
未来のクリエイターたちが想いを込めて
作った作品たち。
応援せずにはいられなかった。
わたしには、こんな素敵な絵を
生み出すことができないから。

 以上がわたしのすきだと
感じた品物についてと
購買心理についてのまとめ。
未来のクリエイターの人たちって
尊いと思っている。
瞳がキラキラしていて
一生懸命に生きている証を
示された気がした。
 
 今後の作品創りの参考に
活用してもらえたらな、
そんな気持ちで綴りました。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

あとがき:
しばらく会っていない実母が
学祭に来て、思ったこと。
顔がぼやっとしていた。
未来の声優さんたちの
ライブ会場に入ったとき、
一つだけ空いた一番前の席に
吸い込まれるように
(トトッ)と座った。
「えっ?! ライブも楽しむ感じ? 」
人の間から後ろ姿を観察すると
楽しそうなおばあちゃんの
背中が揺れていた。
その姿はまるで『ハウルと動く城』の
後半の魔女。
ちんまりとしていて、かわいかった。
彼女は、もしかすると
軽症の認知症かもしれない。
凛とした雰囲気がすっかり
消え失せていたから。
寂しさが心に響いた。

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