16.ひきわり納豆愛
今も昔も我が家の朝ごはんには納豆登場頻度が高い。
安くて美味しい納豆だが、安いとはいえ、家族みんなで好きだと必然的に量が必要。
時には生卵が入ったり、ネギがたくさん入っていたり、母がいろいろかさ増し工夫をしてくれてた。
中でも好きだったのは、細かく刻んだ沢庵の入った沢庵納豆。
柔らかい納豆と歯応えのある沢庵が絶妙で、私は大好きだった。
そして、子どもたちの好みより父の好みが優先される我が家では、買ってくる納豆も父のマイブームに左右される。
特別うるさいというほどでもないが、幼き頃、小遣い稼ぎで、毎朝納豆売りをしていたという父は、想い出とこだわりがミックスした独自の納豆感を持っているので、そのこだわりの出方で母は毎回あたふたしていた。
ひきわり納豆が父のお気に入りだった時、母が普通の粒納豆を俎板の上でタンタンネバネバ刻んでいたことがあった。
「ママどしたん?」
私が聞くと母は言った。
「ひきわり納豆が買えなかったから、普通の納豆を刻んでるの。パパがひきわりじゃないと食べないから」
洗うのが面倒くさいのに、包丁とまな板をベタベタにしても、夫に尽くす妻の図。
納豆巻きを作るお寿司屋さんじゃあるまいし、父は当たり前と思っているだろうが、小学生、幼稚園児、幼児…という子どもが3人いて、毎日朝はドタバタ大騒ぎなのに、その忙しい最中に納豆を刻むなんて芸当、愛情がなきゃやってやれないことだ。
ちなみに今の我が家の定番は、国産大粒。
母の父操縦の賜物だろう。
だが父に内緒で、亜麻仁油等の健康的なオプションも、その時々によって入れているところは、形は変わったけれど父への愛情表現なんだろな…と娘は思う訳です。
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