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8.ばあちゃんvsヘルパーさんのお砂糖論争

ばあちゃんは、ハッキリ言って料理の味付けがド下手でした。
田舎なので甘じょっぱい濃い味付けは当然のことながら、とにかく砂糖を多用します。
例えば、元気な頃作ってくれた美味しそうなほうれん草の白和えは、ホイップクリーム和えみたいな甘さでした。

そんなばあちゃんですから、始まったばかりの介護で一番大変だったのは食事の味付け。
なかなか薄味に慣れてくれず、醤油を要求してきます。
ほっとくと、そのままでもかなり味が濃いいなり寿司に醤油をベチャッと付けて食べる姿に身内唖然…なんてこともよくありました。

見守り介護始まり当初は、ヘルパーさんにも来てもらって、食事のサポートもしてもらいました。
やってくるヘルパーさんは個性も豊かで、私よりずっと若い女の子、愛想が良くてばあちゃんと茶飲み話もしてくれる主婦の人などなど。
そして、その中に私の母世代ぐらいのかなりこだわった健康志向の人がいました。

甘いのが大好きなばあちゃんの愛用は上白糖。
ところが、そのヘルパーさんは『上白糖は悪』とお考えの方でした。

「◯◯さん(ばあちゃんの名前)、こんな上白糖使っていたら、体に良くないわ。色の付いた黒糖とか三温糖なんかじゃないとダメですよ。上白糖は体に悪いんですよ。お孫さんもご存知ですよね」

…とまあ云々カンヌン、蘊蓄が止まりませんでした。

私も当時、上白糖の話はあちこちでよく聞いていたので、ヘルパーさんに賛同して頷きましたが、ばあちゃんは自分の方針を真っ向否定されたので激怒。

「そんなこと言ったってね!砂糖は料理によって使い分けてんですよ!私のやり方があるんだから!」

激怒したばあちゃんから出た言葉に私はポカーン。
(え?使い分け?そんなの見たことも聞いたことないが…)
ヘルパーさんも少々バツが悪くなったのか、ささっと酢の物を作って、時間と同時に帰ってしまいました。

憮然としているばあちゃんの昼ごはんに、作り置かれたその酢の物を出しました。
一口食べるなり、「酸っぺ!」と大騒ぎ。
ばあちゃんは、酸っぱいものも苦手でした。
確かに、酸っぱいもの好きな私が食べても、かなり酸味が強い酢の物で、『こりゃ無理だ』という味でした。
こだわりがある割に料理の腕は、いまひとつな方だったようです。

今、あの時のことを思うと、あのヘルパーさんは、自分の思う正しい食事が絶対なんだというエゴ丸出しで、クライアントであるばあちゃんに対する愛がない人だったんだな…なんてことを思います。
自分の【絶対】が、他者にとってはどうでもいいことなんて、当たり前のことです。
でも、そんなヘルパーさんに賛同した時点で私も、ばあちゃんに対して愛を持って接していなかったんだな…と気付かされました。

晩年のばあちゃんに、できるだけ食べたいものを作ってあげるようになれたのは、あのヘルパーさんのおかげかもしれません。

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