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<国内のミュージシャン人口構造などに関する考察>

広義の音楽業界の産業構造で、業種として人材が関わる物は多岐に渡る。

ネットを除くリアルな所で、あなたの周りに存在する音楽関係者は誰だろうか?
弾き語りやバンドやってる友達?小学校の音楽教師?近所のピアノの先生?リハスタやライブハウスのスタッフ?
もしかしたら知り合いにプロのミュージシャンと呼ばれる方が居るかも知れない。

レコード会社関連職種は、CD屋さんの店員から、三大メジャーと呼ばれる世界をマーケットにするエンタテイメント国際企業の役員や経営陣まで、縦社会のヒエラルキーも存在する。

音楽産業と言うのは、想像以上にグローバルだし広がりがあるものだ。

ただ、ここでは狭義として国内の実際に音楽(楽器)を演奏し、生計を立てている方たちのタイプを考察してみたい。

今回の考察では、メジャー・インディ系のシンガーソングライターや、アマチュア含むバンドを組んでるミュージシャンや、お店専属のヴォーカリスト及びプレイヤーや、アニソン専門、ボカロP、歌う声優、アイドル歌手など、またクラシック出身で地域のピアノ教室の先生などは含まない事にするので、ご承知おきを。

さて、日本のプレイヤー系ミュージシャン(バンド等に所属していない、演奏担当者。ドラマーやギタリストと呼ばれる方々)構造は以下のように分類されると考える。
ただし上記で挙げた職種に重複する状態の方も、それなりに居るであろう。

特Aクラス:スタジオレコーディングでファーストコールをされ、ビッグネームアーティストのアリーナやホールクラスのライブまたはツアーにサポートメンバーとして呼ばれる。
パートによっては、音源制作のサウンド・プロデューサーとしてアレンジやプロデュースに関わる。
個人のスタジオや教室を持つ方も多い。
一般人含むアマチュアミュージシャンの中でも有名でリスペクト対象。
楽器メーカーなどの主催で、ギャラが保証される演奏クリニックなども個人名で開催できる。もちろんプロとして音楽のみで生活できる。

Aクラス:レコーディングやサポートにも呼ばれるが、その方の名前でライブハウス等に集客できる。音楽専門誌や楽器メーカーとの交流もあり、アマチュア・セミプロの間では名前を知られている。
音源制作の取りまとめ等もこなすが、ビックネームのみの仕事とまでは行かず、アイドルやアニソン仕事も手掛ける。専門学校講師の特別枠の方も多い。音楽のみで生活できる。

Bクラス:レコーディングやライブサポートの仕事はするが、ギャラは安定せず、安い仕事も受けざるを得ない。地元や都心の小さな音楽スクールなどの講師やらも行い、インディーズ系の音源制作やサポートなどもこなすが、音楽のみでは生活は厳しい。

Cクラス:主にアマチュア系のシンガーソングライターやバンドのサポートをする。RECなどにも付き合う。使い勝手がいいのでなんだか忙しいが、音楽のみでは食べていけない。アルバイトやアマ中心の企画イベントなどで生活費を補う。

Dクラス:小さなライブハウスで知り合ったアマチュアに声掛けられて、時々ライブサポートをする。ギャラは無い事がほとんどなので、普段はフリーターとしてアルバイト等に精を出す。中には他企業の正社員の方も存在する。

また、上記とは別に音楽を目指す人に楽器や歌を教えるレッスンプロと呼ぶべき方もいて、専門学校の講師であったり、個人教室の生徒数によってはとりあえず生活できる方も多く存在する。

この構造は諸外国でも似たような感じだと思われるが、人口に対する音楽教室や専門学校、フリーのレッスンプロなどの比率は日本がかなり多いと考えられる。

さて、あくまでも想像の域を出ないが、各クラスの日本における人数は以下のように推測する。

Dクラス:1000人~、Cクラス:500人~、Bクラス:300人、Aクラス:200人、特Aクラス:100人以下

レッスンプロも3~400人程度は居ると思われるので、プレイヤー系ミュージシャンの合計数は2500人程度と思われる。

これまた推測だが、講師などをほとんど行わず、シンプルに楽器プレイヤー(プロミュージシャン)として、自分のプレイ+αのみで、生計を立てられる方はおそらく1000人程度か。

そして特徴的なのが、彼らの相当数がフリーランスである事。
事務所等に所属する方は驚くほど少ない。

海外では古くからミュージシャンの権利を守るユニオン組織が存在するが、日本にはプロミュージシャン連盟とか、プロミュージシャン年金機構とか、プロミュージシャン保険組合とかは存在しない。

過去にはそのような動きもあったが、結局は有名無実となり、せいぜい著作権の二次使用料を徴収分配してくれる団体に、実演家として委任している程度だ。

またプロミュージシャンは事務所に所属していても、マネジメント委託契約がほとんどである。毎月一定額の保証を給料として貰っている方など、まず居ないだろう。

ミュージシャンの中にはギャラ交渉やスケジュール管理、トラブル処理など煩雑な業務を苦手とする方も居て、その為に所属しているケースも多い。

そしてそういった事務所も、営業活動を能動的に行う事は少ない。

多くのプロミュージシャンは、個人の知名度や実際の演奏力や人間性が、仕事量やギャラや待遇内容に比例する訳だ。

過去の一時期、事務所の知名度や業務の処理能力の評判で、営業に繋がった場合もあったが、仕事が非常に多かった時代のレアケースである。

つまりプロミュージシャンとしてメシを食える方々は、同時にマネジメント及び営業能力もお待ちである事の証左である。

さて日本に存在する、食えているプレイヤー系プロミュージシャンは約1000人程度と仮定する。

この数は多いのか?少ないのか?

これをプロスポーツマンの数と比較するとどうであろう。
例えばプロサッカーのJリーグ所属選手と比べてみる。
2015年7月5日時点で現役Jリーグ選手は1372名である。

プロ野球選手も登録数1000名前後である。

ちなみに落語家の総数は800人程度。食えているのは上位100人くらいと言う説もある。

カメラマンもデザイナーもライターも、フリーランスプロはそれらにほど近い数字だろうか。
大道芸で食べていける人などは、もっと数値が下がるだろう。

プロスポーツやエンタテイメント系関連の各ジャンルで、その業界で認められ、プロとして生活費を賄える方は、おそらく種類別で各1000人前後なのだろう。

ただし、その下部組織を含めて、希望する人を教育・指導するビジネスが成立している訳だ。中高大学の学校のクラブや、専門学校や、個人レッスンなどなど。

全員がプロを目指すわけでは無く、各人の楽しみのために一時期スポーツや音楽などに関わり、上達を目指し、レッスンを受け、練習に励んでいる一般の方は数多くいる。

趣味として、特技として、スポーツやエンタメの技術を磨くことを喜びとしている方は素晴らしいと思う。

そんな方々が各産業や職種の礎となっているのだ。

何かをやりたい方は、当然名の知れたプロ中のプロから教わりたがるが、逆にトッププロは本職の仕事が忙しくて、教える暇がないし、まして人に教えることを嫌う方も多い。
かといって、評判も聞かない人が教える教室を選ぶのは、勇気がいるだろう。痛し痒しである。

もしイチローバッティング教室があれば、入校希望者は列をなすだろうが、今の彼にはメジャーリーグであと何本ヒットを打つかの方が重要なのだ。

そんな中でもまだ音楽は、指導的立場になれば、食べていける可能性が高い気がする。
特に若い時期に、音楽を目指す・習う人の母数が多いからだ。
教わりたい人のニーズが他のジャンルに比べて幅広い。
歌を含めた楽器の数だけニーズがある訳だし、親が子供の情操教育として楽器を習わせる事も非常に多い。
多分、国内の個人ピアノ教室だけで、優に1000を超えるはずだ。

つまり、そのようなケースはクラシックの世界に多いわけだが、中には小学校入学前後から楽器を習い始め、音大まで行き、十数年間トッププロを目指し、練習に明け暮れた方もいるだろう。

しかし、彼らが目指すところの世界中を巡業旅行する様なプロの演奏家は、どんな時代も常に数える程だ。
大抵はどこかで演奏家を諦め、別の社会に抜けていくか、良くて音大や専門学校等の指導者になる。
そして一流クラシック演奏家の頂点を目指す子供たちを、どこかで指導しつつ、結果、多くは自分たちのようになるケースを再生産しているのだ。

だが、この構造は全く否定するものではなく、その数人のトッププロを見出し、世に送り出すために必要不可欠な循環なのである。

そういう意味ではプロスポーツも同じ構造であろう。

とはいえ、ロック、ジャズを含むポピュラーミュージックの世界では、その循環から逃れ出た方や、そもそもその循環に含まれなかった方も多い。

彼らは好きで楽器を初めて、人に教わる事もほとんど無く、地道に練習し活動し、ある意味、閉ざされた業界内で、同業者の口コミによって評判を上げ、自力でプレイヤーとして仕事をこなし続け、食えるプロミュージシャンとしてAクラス・特Aクラスにいつの間にかたどり着く。

TV等のメディアでもてはやされるアイドルや、人気グループなどはそういったプロ中のプロに音楽面でお世話になっているのだが、これまたプレイヤーの名前が広く世に出る事、認知される事は数少ない。

音楽と言う誰しもが楽しめるエンタテイメントの世界で、重要な要素となっていながら裏方に甘んじているのも、絶対数の少ない「プロフェッショナル」としての矜持なのだろうか。

それとも出る杭は打たれるといった、世の仕組みと言うものなのだろうか・・。

いずれにせよ、プレイのみで食っていける1000人の仲間入りを目指すベーシストやドラマーの方々は、そんな業界構造内で苦労を自ら背負った事を自覚しよう。

ただ己の才能を信じて、好きで選んだ道を全うするのみだ。

この稿終わり

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