「悋気の独楽」に込めた意味

先日、素人落語ライブにて「悋気の独楽」という噺をやらせてもらいました。悋気→りんき、と読んで、嫉妬という意味です。素人という盾を使って大幅に噺を改造しましてとにかく言いたいことを詰めまくったので、その解説を改めてしてみたいと思います。ライブや配信を見て下さった方は答え合わせを、まだ見てない方はめちゃくちゃおもしろいライブになってるのでぜひ配信を見てほしいです!

🙆‍♀️配信URL(3月10日まで!)↓

まず自分がやった悋気の独楽をざっと簡単にまとめると、
結婚生活が破綻している夫婦がいて、外遊びばかりで全然家に帰らない旦那のあとを妻が尾けると旦那は愛人と会っていてそこで愛人と妻がバトり、じゃあ旦那はどちらを本当に愛しているか独楽で決めましょうということになり、でも独楽は芯が狂っているので何度やっても愛人を愛しているという風になるので、妻が離婚の決意と共にでも旦那をすごく愛していると伝えると旦那は猛省して妻とやり直すことを決め愛人に別れを告げるが、ブチギレた愛人が旦那には他にも愛人がたくさんいると暴露し最終的に妻が旦那に愛想をつかす、
という噺にしました。
本当の悋気の独楽とだいぶ違います。ま、シロートだからよ!!(by桜木花道)

というわけでどういう意味を込めたか、解説いきます!
(本当の悋気の独楽のあらすじは一旦各々で調べてくれ〜!よろしく!)

まず、未熟さゆえの残酷さ。
愛人の設定を二十歳にして、妻に対して何かと若さでマウントをとらせました。これは、10代や20代前半の頃って歳をとる気がしない期間があると思うんですけど、その錯覚に攻撃性を兼ね備えた人間って年の離れた人のことを平気でバカにするじゃないですか。老いるっていう経験がないからいずれは自分もそうなっていくってまだ分からないんですよね。だからそういう未熟さから人を傷つける残酷さと、同時に歳をとった時の自分に対しても言っている跳ね返りの残酷さを入れました。分からないって怖いことでもあるよねってことですね。

次に、相手の神経を一瞬で逆撫でする魔法の言葉「こわ〜い♡」。
これ前に自分が経験したことで、その人のために本当に懇切丁寧に真剣に注意してたら「むつみさん、こわ〜い♡」で終わらせられたことがあって、その時本当に本当に本当に本当にむかついて絶対絶対絶対絶対許さないし絶対絶対絶対絶対どっかでしゃべってやると思ってたので、この悪しき記憶を成仏させるために落語の中では夫の不倫に怒る妻に対して愛人に言わせました。「こわ〜い♡」って、相手の意図をろくに汲み取らず自分のプライドを守るためだけのちんけな言葉だと思います。本当に一瞬でブチ殺したくなる言葉なので、もし日常的に使ってる人がいればマジで気をつけた方がいいです。

そして、やっぱり「恋は盲目」。
私の噺に出てきた妻と愛人は恋愛初心者という設定にしました。旦那は家にろくに帰らず不倫する最悪の野郎ですが、妻にとっての旦那は、今まで男に縁がなかったけど初めて自分を選んでくれた人。だからどんなに悪さをされても旦那が全て。でもやっぱり外遊びばかりして自分に構ってくれない旦那に対してすごく不安だし、恋愛の経験がないからそれを分かってもらうには怒るという方法しか取れない、し、愛人ともまともにやり合っちゃう。選ばれた経験がないからこの世で愛してくれるのは旦那しかいないと思い込んで、ますます旦那に依存する。この妻は、旦那が自分の隣にいないことよりも、どんなに信用がなくてもなじられても隣にいるほうが幸せだと感じています。
愛人は、若さゆえに不倫に魅力を感じています。人の旦那が妻よりも自分を選んでくれることに優越感を覚え、とにかく人のものを奪い取ることだけに躍起になります。まだまともな恋愛の経験がないので、他にあるはずの温かい恋には目もくれずとにかく目の前の大人の男に必死です。
恋愛って誰にでも経験があることで、特に「失うかもしれない時の怖さ」って尋常じゃないですよね。この2人も失うことが怖いから、辛くても続く方へすがっています。恋愛はいつも形を変えるから慣れることはないんだけど、初めての経験だと何もかもより強く感じるので今回はそういう設定にしました。
選ばれるってすごく幸せなことで、だから自分がすり減ってても気づかず愛だと思ってしまう。そんな辛い思いをしたことがある人がこの妻や愛人をみて「そんなこともあるよね」って自分も丸ごと優しく抱きしめてもらえればいいなと思います。

やっと最後になりますが、最後は「気づきからの再出発」です。
本当の悋気の独楽の噺は、不倫している旦那に対して妻がキーッと嫉妬して終了なんですけど、いや不倫しといてそれで終わりなんて世界あっていいわけないだろ!!!!!と私がキーッとなって噺を変えまくりました。
まず旦那が、妻がこんなに怒るようになったのは自分が外遊びばかりするようになってからだ、寂しい思いをさせてたんだと気付きます。愛人に対しても、前は優しい子だったのに性格が変わったのは自分と出会ってからだと気づきます。「2人とも俺のことが好きでここにいるのに、誰も幸せそうな顔をしてないじゃないか」と旦那は思うのですが、これこそが私が最も伝えたかったことで、気づいてほしいことでした。それで旦那は自分にできることはせめてやり直すことだってことで妻にもう一度結婚生活を申し込み、愛人に別れを告げます。これが旦那の再出発。
妻は、それを喜んで受け入れます。愛人は怒って、旦那は他にもたくさん愛人がいることを妻にバラして出ていきます。愛人の気づきは不倫にゴールはなかったこと、旦那と縁が切れたことで再出発となります。
そして妻。愛人の暴露により盲目だった自分に気づき、自分から旦那と縁を切って再出発します。
わたしの噺の中だけでは妻も愛人も幸せでは終われなかったけど、でも吹っ切れたときの女って本当に強いので、だからこそここで終われたというか。
逆に旦那は再出発が叶ったと見せかけて結局妻も愛人も誰もいなくなりました。当然の報いです。愛を盾に人を傷つける奴にハッピーエンドは必要ないです。旦那は他にも愛人がいる設定にしてますが、どうせろくな事にはなりません。


これがわたしの「悋気の独楽」です。

なにせ素人なものでちゃんと落語の意味をわかってないので、普通はこんな意味とかいらないんでしょうけど
でもせっかくいつもと違うことをさせてもらえるということだったので普段はあんま表立って言わないようなことをやらせてもらいました。
落語だけじゃここまできちんと伝えられなかったかもしれないけど、とにかく少しでも何かを感じてもらえれば嬉しいです。
そして、何度も言いますがやっぱりいいライブでしたし他の皆さんの落語、講談、色物も最高だったのでぜひみてくださいっ!

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