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グリーン村

『五寿司ソロッテ』 第2シリーズー①

また会ったな。俺のこと覚えてるか?
そう、かっぱ。イェイ、グリーンだよ。

俺は川の近くの、のどかな集落で暮らしている。
ほぼほぼ緑色の村なので、通称グリーンヴィレッジ。
ここの村民たちは、俺の仕事を手伝ってくれてるんだ。

え、何の仕事をしているかだって? 何だよ、今更だな。
地球防衛軍とある秘密基地所属、戦隊ヒーローさっ!

え、村民にそれを手伝わせてるのかって?
あったりめーだろ、まさか君、地球の平和をたった5人で守ってるとか
本気で思ってたわけ? 
いやー、ムリムリ。そこらの小学校ひとつだって守れやしねーぜ。

さーて、回覧板をお隣に回さなくっちゃ。
やだな、カイランバン、知らない?
いやいや、そうじゃねーよ。
ひとさしゆびで空に向かってくるくるって、ピザじゃあるめーし。
「おめでとうございます!」って新年に傘の上でくるくる回すって、それもちゃう!

地域の連絡プリントをさ、こうパチンとはさんで
隣近所で順番に読んでくの。
今時ネットで一括送信だよって? 
まだまだ普及率低いんだよ、パソコンは。
スマホのライン? いやいや、難しいよ。
あ、でもラインは色がいいな、グリーンだから! グッジョブ!

午後の散歩をしてたら、目の前にかえるのカッくんが歩いてたんだ。
ああ、やりたい、やってみたい、ああ、でも。
誘惑に勝てないーーー!

そろーっと近づいて、カッくんに「ひざカックン」仕掛けちゃった。
めっちゃカックンしたカッくんは、そのまま川に落ちてしまった!

うあー、ごめん。ごめんなさい! 許して。
あわてて川から引き上げると、カッくんが泣いてる!
やばい、かえるが鳴くからかーえろ、じゃなくて
かえる鳴かせたら、大雨降るじゃん!

でもさ、カッくんたら
「いいよ、やってみたかったんだよね。僕、その気持ちわかるよ」
って! なんていいやつなんだ。
思いっきり抱きしめて、ゲコーって言わせちゃったぜ。

5人の中で一番しょぼい下っ端グリーンの俺だけど
正義のヒーローって枠だけで、あこがれられることもあるんだ。
小学生にだけど。

さっきからグラサンかけてマフラーしてる、不穏なやつがついてきてる。
ぬきあし、さしあし、しのびあし。かわいいなー。

なんて油断してたら
「とぁー、これでもくらえ、かっぱ巻き剣《ソード》!」って
おいおい、本人を斬るなよ、しかも、ほんとのかっぱ巻きじゃん。
きゅうりが抜けて飛んでったぞ。たべものを粗末にしちゃだめだよっ。

「ちぇっ、つまらぬものを斬っ……」
おい、その先は言わせねーぞ、番組がちがうー。
やれやれ。

<つづく>

グリーンの回でした。右の子が、ついてきた小学生。という設定です。☘

次の話 → ②-2 ブルーの憂鬱

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。