僕君1

僕と君 2 きまぐれねこ


僕はあいにく、ねこを飼ったことがないけど
もしも飼ってたら、こんな風なんじゃないかなって、君を見てる。

じゃれるけれど、べたつかない。
気が向かなければ、よってこない。

その惑わすような気まぐれ。
その容赦のない強情さ。

君は赤ちゃんのくせに、起きている時はじっとだっこされるのがきらいで
すぐにするりと僕の手から逃げて、ころがっていく。

まだやっと首がすわって、寝返りをはじめたばかりのくせに
独立心いっぱいの、めんどうな赤ちゃん。

いやだと思えば去っていき
気が向けば、ほっといてもそばによってくる。

僕がねむくてソファーで転がってたら
いつのまにか胸の上にのって、すぅすぅ寝ている。君はねこ。

夜、君を寝かせるのは一苦労。
昼間とまるで逆で、だっこしてあげないと寝なくて。
寝たかなと思って、ベビーベッドに置こうとすると
とたんに、ぱちんと目を覚ます。

そのままゆっくり撫でてあげても、わーっと泣き出す。
あのね、そこは独り立ちしてもらっていいんだよ。
結局、また抱きあげなくちゃか。

ママは毎晩、この子をだっこしては着地に失敗して
腱鞘炎にかかってしまって、腕に包帯ぐるぐる。

しまいには諦めて、自分のベッドの中で体に乗せたまま
朝まで一緒に眠ってしまっている。
ああ、ゆうべも何もできなかったって、斜め上を見つめる。
睡眠たっぷりとれてよかったねと言うと、にらまれる。

今夜はリビングで、いつのまにかひざの上で寝たから
寝かしつけ成功と、ベッドに持ってくと
ああ、また。背中にセンサーでも入っているのかな。

ママのお気に入りのだっこ紐は
生成り色に紺のラインが入っていて、赤ちゃんを入れると
まるで宇宙飛行士のよう。

僕はおもしろがって
「2001年宇宙の旅」や「スターウォーズ」のテーマを歌いたくなる。
そのまま階段を一気に駆け上がって
2階の寝室の銀河に、連れて行ってあげよう。

ほら、お腹の中を思い出して、宇宙遊泳の夢でも見て
しずかーに揺られて、ゆっくり眠ってごらん。


この任務が完了したら、僕はだいすきな珈琲を飲むんだ。

そんな邪念が入ったことがばれて
また君は、ぱっちり目を開けた。


僕君1


⇒ 『僕と君』 3 226

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。