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イエローナンデス

『五寿司ソロッテ』 第2シリーズー④

おいらはイエロー。
世間ではカレーずきで知られてるよ。
そのイメージは多分
スプーンでカレーライスをがつがつほおばってる姿だ。

でも、実は……。
おいらがすきなのは、ナンなんです!
ダジャレじゃないよ、あのビローンってのびて香ばしく焼かれた
あの、ナンなんだ! ごはんよりナン!

だから本当は、インドの山奥で修行をしたいんだよー。
かつてヒーローでそんな人がいたって伝説を聞く。

ところが、インド人曰く
「インド人はナンなんて食べナーイ。あれは宮廷料理デースヨ。
 あれ焼く窯《カマ》なんて、家庭にあるわけないじゃナイデスカー。
 日本に来てはじめて食べて、ビックリしましたヨー」

えーっ。
はぁー、じゃあ、カレーだけなんすかね。汁、だけ?

「アナタ、チャパティを知らないのデースカ。
 全粒粉で焼くクレープみたいなやつデース。
 あれならご家庭のフライパンで焼けマース」
おおー。チャパティ、チャパティ。(カバディとまちがってないか?)

おいらは知らなかった。なんとナンは日本で大人気!
むしろ日本で修行だよ。
窯もってるとこ探して、自分のナンを焼けるようにしよう。

窯って自分家に作れるかなー。
ぺったん、ぺったんとたたきつけて
こんがり焦げたとこと、ぷくーっとふくらんだとこを
つんつんとつつきながら
愛すべきカレーにくるっとつけて、あああー。

それから巨大なナンを焼いて、オフトゥンにするのもいいよな。
焼きたてを体にふわりとかけて。
おいっ、アッチーじゃねーかっ。

🍛

ところで、イエローといえば食い気だけって
誤解されることが多いけどっ。
おいらだって、いい年の男だ。恋くらいするんだよ。

今、おいらの10メートル先では、ピンク色の背中が見えているわけ。
あいつが健気《けなげ》で仕方ないんだ。
男のくせに女装して必死に生きているピンク。
禁断の恋に身を焦がして、見つめる先はブルー。

あいつ見てると、まるで「女であることを隠しているように」
みえることがあって、余計に愛しくなるんだな。

この際、性別とかもう、置いとかねーか。
美しいものは、この世に存在する宝石さ。フッ。

あ? おいらの正体は、「ぽっちゃりヒヨコ」だよ。
尾っぽがプリチーだと評判なんだ。
フリフリ。お願いだから、こっちも見てくれよー。


<つづく>


!上の森 シハさんが、表紙イラストのこと書いて下さいました!
ぜひぜひ遊びにお出かけください。

次の話 → ②-5 レッド=リーダー?

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。