僕君

僕と君 14 シンクロ


君はほんとにママによく似ている。
僕は小さい頃のママに逢えているような錯覚を起こす。
そう。すこし勝手なノスタルジア。
きっと甘ったれだった君。

椅子に座った君の髪を、ママがとかしてあげている。
僕はそれを見ているのがとてもすきで
リボンを編みこんでもらって嬉しそうな、君の笑顔がたまらなく愛しい。

君たちは、時々双子のようだ。
すきなテレビに見とれた時の顔の角度。口のぽけっと開け具合。
ふたりの口に棒つきキャンディを、ぱくっとはさみたくなる。

そうそう、顔とか表情だけじゃなく
タイミングがね、よくシンクロするんだ。

ほら、僕を見つけて、声をかけるタイミング。
パパっ! ってダブルステレオタイム。

最近いやいや駄々っ子の君は
今日も泣きながら床にペッタリ座り込んでる。
なだめるのに疲れたママは、もう知らないって反対を向く。
まるで鏡を置いたみたいに、二人ともすごいふくれてて
これじゃ、どっちがこどもかわからないな。

泣き終わった君をママが抱き上げると
君はまた思い出し泣きをしながら、ママのほっぺをつんつん。
これ、「ママおこんないで」のサインなんだよね。

ごめんね。ってママの方が先に後悔して頬ずりをする。
僕から見たら同じほっぺで何してるんだろうって。くすくす。

僕はその頃残業続きで、君たちの顔を見ておやすみが言えない日々。
夜遅くに帰って来て、ベッドで寝ている二人を見つめる。

おそろいの、ひらがなの「く」の字のカタチで、シンクロしている君たち。
大きい「く」と、小さい「く」。
小さい「く」はついでにミッフィーをくの字で抱えてる。

くーくー寝息を立てて、しあわせそうに眠ってる。
今日もきっとこの子はわがままいっぱいで大変だったろうね。
ママ、お疲れさま。そして、ありがとう。

日曜の午後、もう僕は日頃の疲れがひどくて
リビングのソファーでごろごろ。ああ、なんか肌寒いなぁ。
うたた寝してると、こどもの頃は母が「あら、風邪ひくわよ」って
そっとくるむものを、かけてくれたなぁ。

今、それを期待しているけど、すっかりほっとかれている。
仕方ないから、「さむいよー、何かかけてー」と言うと
あ、ちょっとまってねって、ママの声。

そのあと、「パパ、だめねー。ほら、かけなさい」 って
ブランケットをかけてくれる君。口調がママそっくり。

昼寝の君にかけると、すぐ汗びっしょりだよね。
こどもって、なんであんなにあったかいんだろう。
冬でも結局飛び出しているもんね。

よーし、つかまえてぬくぬくしてやるー。


⇒ 『僕と君』 15 バースデー




いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。