僕と君 14 シンクロ
君はほんとにママによく似ている。
僕は小さい頃のママに逢えているような錯覚を起こす。
そう。すこし勝手なノスタルジア。
きっと甘ったれだった君。
椅子に座った君の髪を、ママがとかしてあげている。
僕はそれを見ているのがとてもすきで
リボンを編みこんでもらって嬉しそうな、君の笑顔がたまらなく愛しい。
*
君たちは、時々双子のようだ。
すきなテレビに見とれた時の顔の角度。口のぽけっと開け具合。
ふたりの口に棒つきキャンディを、ぱくっとはさみたくなる。
そうそう、顔とか表情だけじゃなく
タイミングがね、よくシンクロするんだ。
ほら、僕を見つけて、声をかけるタイミング。
パパっ! ってダブルステレオタイム。
最近いやいや駄々っ子の君は
今日も泣きながら床にペッタリ座り込んでる。
なだめるのに疲れたママは、もう知らないって反対を向く。
まるで鏡を置いたみたいに、二人ともすごいふくれてて
これじゃ、どっちがこどもかわからないな。
泣き終わった君をママが抱き上げると
君はまた思い出し泣きをしながら、ママのほっぺをつんつん。
これ、「ママおこんないで」のサインなんだよね。
ごめんね。ってママの方が先に後悔して頬ずりをする。
僕から見たら同じほっぺで何してるんだろうって。くすくす。
*
僕はその頃残業続きで、君たちの顔を見ておやすみが言えない日々。
夜遅くに帰って来て、ベッドで寝ている二人を見つめる。
おそろいの、ひらがなの「く」の字のカタチで、シンクロしている君たち。
大きい「く」と、小さい「く」。
小さい「く」はついでにミッフィーをくの字で抱えてる。
くーくー寝息を立てて、しあわせそうに眠ってる。
今日もきっとこの子はわがままいっぱいで大変だったろうね。
ママ、お疲れさま。そして、ありがとう。
*
日曜の午後、もう僕は日頃の疲れがひどくて
リビングのソファーでごろごろ。ああ、なんか肌寒いなぁ。
うたた寝してると、こどもの頃は母が「あら、風邪ひくわよ」って
そっとくるむものを、かけてくれたなぁ。
今、それを期待しているけど、すっかりほっとかれている。
仕方ないから、「さむいよー、何かかけてー」と言うと
あ、ちょっとまってねって、ママの声。
そのあと、「パパ、だめねー。ほら、かけなさい」 って
ブランケットをかけてくれる君。口調がママそっくり。
昼寝の君にかけると、すぐ汗びっしょりだよね。
こどもって、なんであんなにあったかいんだろう。
冬でも結局飛び出しているもんね。
よーし、つかまえてぬくぬくしてやるー。
いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。