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ピンクの秘密

『五寿司ソロッテ』 第2シリーズー③

私はピンク。本来なら紅一点のはずの、モモイロ吐息。

なんでかしらねー、気づかないかしらねー。
なんでメンバー全員、私が男で、女装がすきな
「男の娘」って信じてるのよーーー。

そりゃぁ確かに最初に会った時に、そう自己申告したわよ。
でもさ、そこには理由を話せなかった苦しい胸の内があるとか
もう少し想像してもいいと思うのよ。

そう、私は正真正銘、おんな、なんですけどっ!

事の発端は、あれよ、宝塚歌劇団のミッションだったのよ。
演技力のテストで、どこまで女だとバレずに暮らしていけるか。

ええ、見事にトップ通過だったわよ。
だって、いまだに、誰も私を女だと思ってないんだもの。

しかも、地球の平和のためにがんばっていたりしたら
もうヒッコミもつかないじゃないの! 
仕方ないから、去年あきらめて歌劇団は退団したわよ。
ああ、トップであのきらびやかな階段を、羽つけて降りてきたかったわ。

🍑

私がここを離れられなくなった理由が、目の前にいるのよ。
ブルー。ああ、いぶし銀のブルー。
せつない横顔。渋い仕草。何もかもがクールですてき!

ってあこがれていたら、なんてことかしら。
あの人、足繁くグリーン村に通っているのよ。
もうね、グリーンのへなちょこなこたつ部屋の窓にへばりついて
うらやましそうに見つめてるの。ちょっ、よだれ!

なのに、そのギャップに、いつしかキュンとしちゃって。
っもう、私までグリーン村ばっかり来てしまってるわ。

さっき、川を何かが流れていったわ。
桃じゃなかったわ。優雅にどんぶらこって感じじゃなくて
高速回転のブーメランみたいな、緑の物体。

……、たぶん、きゅうりね。
上流の家から下流の家に受け渡されたのね。
家の格じゃなくて、川の上流から、下流っていう自然な流れのことね。

この村ではよくある光景よ。
「ちょっと醤油かしてー」って叫ぶと
川からぴゅーってお盆に乗って流れてくる。
ってことは、借りるのは一方的に上流家庭からなのね。
人生の縮図ね。後でお返ししてるのかしら。

ああ、それにしても世の中は不平等よね。
おーい、少しは振り向いたらどうなのよー。
なぜこの(美しい)私を見破れないの? ブルーめ。

どう見たって、お寿司ならガリじゃなく、輝くサーモンでしょ、私。
なにせ私の正体は、一本足打法の「フラミンゴ」なのよ!

いいわね、いくわよ!

<つづく>

次の話 → ②-4 イエローナンデス

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。