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言の葉と遊ぶ


 遊びに行こう。遊ぶなら、君とだよね。

 先日、話をしめくくる言葉として、落語でよく聞く「おあとがよろしいようで」を使おうとした。
 ここで話の落ちもついて丁度いい雰囲気、頃合いになった、或いは、うけなくてもとりあえず終しまい、みたいな意味として。

 気になって調べたら、「おあと」とは自分の後の人のことを指すそうだ。つまり、次の準備ができたようです。という意味なんだって。ほお。じゃあ、あとの人がいない真打ちは使わないものなのかな。

 後の人とか言ってると、無性に吉田戦車さんの「伝染るんです。」が読みたくなってきた! 
 どこに行ってしまった。家のどこかにあるはずなんだが、いっそもう一冊買っちゃおうか。あの不条理。

 下の人などいない。上の人もいない。福沢諭吉か。
 ポルトガルに傾倒するかわうそくん、ぺたぺた歩く山崎先生、哀愁のマフラーを巻いたしいたけ。キャラが最高。

 自分の母上から「斉藤や」と呼ばれ、いつも泣きながら飛んでいくカブトムシ、そっと二千円を届けるくま、山ぶどうが届く大学生。
 距離道楽、汽車犬のようにはたらく……、手元にないのに、こんなにずらずらと内容が浮かぶ。

 この世界、会社の同僚とめっちゃ共有して、どれだけ会話に盛り込んだだろう。世界観の共有は親友を作る。特に笑いは。今もこれがすきな人とはずっと語り尽くせそう。いきなり脱線、興奮、そして反省もまた良し。

 案外、思い込んでいる言葉の意味が、本来と違うことは多いらしい。でも、大多数の人が思い込んでたら、元の意味ってないに等しいよね。

「敷居が高い」なんて、足を高く上げて越えなきゃいけないような、一見さんお断りの高級なお店に入り難い時に使うと思いきや、不義理をしてしまって顔を合わせ辛いので足が遠のいてしまったことが、本当の意味なんだって。

 五割近い人が、一見さん的な方を本来の意味だと思っているらしい。半分の人が信じてるなら、もう第二の意味として認定してしまった方が、潔くないだろうかなどと思ってしまう。
 過ぎ行く昔ばかり大事にして、意味の取り違えを憂うよりも。

 漢字も、この意味ならこれって決まっているが、私はあえてこの漢字がすきとか、雰囲気で使ってしまうので、きっと、これまちがってると思われているのだろうな。

 漢字自体がきらいだと、なんでもひらがなかカタカナにしてしまうので、この人おばかさんとか思われている気がする。好きを「すき」としか書かなかったり。その癖、やけに難しい漢字を使いたがったり。 漢字のすききらいが激しい。

 光がさす、の「さす」は、本来「射す」だが、私の脳内で、光が花瓶に茎を挿すようだと想って使う時「光が挿す」って書きたくなる。
 でも、残念なことに小心者なので、「光が射す、挿す」みたいに重ねて使ってしまう。おばかと思われてもいいから、堂々と「光が挿す」って書く人になりたい。

 パソコン変換ミスや自分のキーボード入力ミスから、ちょっと思いついたりすることもある。
 恋するが「恋留守」になったため、言葉から色々膨らませて散文詩を書いて、タイトルが「恋るす惑星」になった。失敗が楽しい。そこからちらりと見えてくるものが愛しい。

 昔のワープロソフトは変換がひどかったらしい。たとえば、課長→蚊蝶、ゆで卵→茹でた孫、とか。でも、むしろ今、そのワープロほしいかも。ネタに事欠かなそう。

 ハライチがすきだ。最初に言った言葉が少しずつ変わっていってしまって、最後はいつも「もう、関係なくなっちゃった!」で終わるとこ。

 ここの第3話「檸檬への傾倒」で使った「エロティズム」も迷った。好色さ、性欲、色情の意味で用いられる語。それは合ってる。
 英語ではエロティシズムだが、私にはこの「シ」の響きが余計に思えてならない。フランス語なら、エロティスム。エロティズムは、どちらともつかない面があると書かれていて、その「どちらともつかない」が気に入って使っている。

秦基博さんの曲を聴いてたら、「ROUTES」の歌詞に「さっきまでいた地点」というフレーズが出て来たが、私の脳内は、いた地点→イタチ・テン、の二匹が占めてしまった。「さっきまでイタチ・テン」 じゃあ、今は?

 スモークサーモンを、一文字ずつ切り離して、並べ替えてみよう。
 スサークモモーン。大男がちょいエロで現れそうな呪文。

 つらつらと、こういうことばかりやっている。 際限ない。
 はんぱないをパナイって 言うのかー。君たちは「すずめの涙」も知らないのね。きたよ、「馬の涙」って回答! それはそれで美しいかもしれないね。 お目目、きらきら。

 言葉の、ひらがなの、漢字の、ひとつひとつに愛をこめてつかいたいな。

 愛してるよ、日本語。また、遊ぼうね。



「雨と僕の言の葉」 第20話 言の葉と遊ぶ
 そうでなくても勝手な文章なのに、スミマセヌ。
 
 


> 第21話 ピンセットで一文字

< 第19話 私の中の二面性

💧 「記憶の本棚」マガジン

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。