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- - - 8× キリトリ - - - 欠片

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映す。キリトル。 風に吹かれてシャッターを切る。 写真と言葉の融合する実験。 ✜ すてきなイラストに言葉をつけたりもします ✜
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#新宿

雨上がりの新宿3

雨上がりに傘をささずに歩く。 ビルを伝う雨垂れがしばらく続いて、泣いてるみたい。 冷たい粒があちこちに残って、跳ねる。 広場には人っ子ひとりいない。 濡れた銀色のテーブルは、鏡面のように光って ぼんやりとした私の気持ちを逆撫でする。 ここでサンドイッチを食べる時 ねだりに来る鳥の子らは、どこで雨宿りしているのかな。 君たちがいないと一人ではうまく笑えない。   代わりに、水滴に濡れた花たちが声を掛けてくる。 こんな都会にも花は咲くんだね。 そう思ったら、少し優しくなれそ

雨上がりの新宿2

ごくごく。喉に水が沁みるように。 極々、私的な思いが巡っていく。 いとしき空間よ。私の中の遠い記憶。 同じ地点なのに、もう存在しない透明な箱。 もう一人だけ、わかる人がこの世にいる。 君は此処を通りかかったら、思い出したりするのだろうか。 この景色を見ながら、よく電話をかけたね。 私はいつだって、胸を躍らせてエレベーターを降りる。 何度繰り返しても どうして君に会うのに、こんなにもどきどきするんだろう。 待ち合わせたロイホが、今も確かに消えずにあって。 外を眺めて

雨上がりの新宿1

この円形信号機を見つめていると 環状のかたちに沿って 誰かが電車ごっこをはじめる気がしてしまうんだ。 ぐるぐると、秘密の荷を載せた列車が走る。 都会の喧騒に紛れて 日夜止まらない物語を紡ぐかのように。 雨の日には列車たちはおやすみ。 代わりに透明な人たちが 傘を差して散歩するに決まってるんだ。