男の浮気についてのおしゃべり【会話劇】

海「ねぇみんな。浮気する男ってどう思う?」
友里「ん? お前の男浮気したん?」
海「いや私じゃなくて、中学時代の友達から相談されてさ。彼氏が浮気してたの発覚して、どうしようか悩んでるって話で」
珠美「なんでその子、ピュアガールの海ちゃんに聞いたの?」
海「いや私、中学時代、大学生の男の人と付き合ってるって設定だったからさ」
真子「は?」
海「その真顔の『は?』の破壊力ヤバイからやめてwww」
友里「で、なんでそんな自分の首絞める設定してたん?」
海「いやさ、中学生ってさ、彼氏ほしーみたいな話してて、クラスで人気の男子と付き合ってる女子ってさ、妙に他の子より優位に立ってるみたい顔してること多いじゃん? あれすごくムカつくからさ、結構細かく設定作って、そういう彼氏とあれやこれやしてるみたいなこと言っとけば、他の男子から変なアプローチされることも減るし、周りの子たちもキラキラした目で色んな事尋ねてくるし、ちょっと楽しくて、さ。引っ込みつかないってわけじゃないんだけど、そんな何年もずっと騙してたなんて正直に言うの、今更恥ずかしいじゃん?」
真子「知らんが、そんなんお前、いつも通り適当に受け流せばいいんじゃないの?」
海「今までずっとそうしてたけど、なんか……悪いなぁって。へへ」
友里「お前って時々すげぇ馬鹿だよなぁ……」
珠美「海ちゃんかわいいん」
海「助けてたまちゃん」
珠美「よかろう。窮地に陥った愚かな海ちゃんを助けてしんぜよう! で、なんだっけ?」
海「浮気する男って、どう思う? っていうか、彼氏の浮気が発覚したら皆さまどうします?」
真子「冗談なら色々言えるけど、実際にそうなってくると……難しいよな。その男が自分にとってどれくらい大事かによると思う。試しに付き合ってるってタイミングでそういうことしてくるヤツいたら、問答無用でブロックでしょ」
友里「付き合ってからどれくらい経ってるかによるよな。一年未満だったら、もう即ブロでいいだろ。一度許したらずっと他の女になびき続けるし、最悪、いつの間にか自分の方が浮気相手側にされそう」
珠美「海ちゃんの友達のその子の彼は、どれくらいのつき合いなの?」
海「結構長いって言ってたよ。詳しくは知らないけど、一年は経ってるんじゃない? 浮気とかしそうにない草食系の人だったから、怒りよりも驚きの方が大きかったって」
真子「なんかリアルやな」
友里「まぁそりゃそうだろ。ってか情事の方はどうだったん?」
海「聞いてない」
珠美「それ重要だろウミィ!」
海「一年も付き合ってたらやることやってると思うけど」
真子「まぁそうだろうな。じゃあそういう前提で話進めよう。一年以上付き合った彼氏が浮気していたことが発覚したって設定ね。で、その男はどういう対応してんの?」
海「いや、他の女の子と休日いちゃいちゃしてるところ目撃したんだってさ。漫画みたいに、お相手は兄弟だとか親戚だとかじゃなくて、完全に他のクラスの女子だったって。雰囲気もあれだったし、明らかに浮気だって。それで、そのことをまだ問い詰めずにいて、どうしようか悩んでるんだって。別れるなら、浮気とは関係なく好きじゃなくなったからっていう理由で別れようと思ってるんだって」
真子「怒るの苦手系か」
海「うん。大人しくかわいい子。私のくだらない嘘ずっと信じてるような子」
真子「なるほどなぁ。なんか気の毒だなぁ」
海「でしょ? だから今回ばっかりは適当言うんじゃなくて、自分なりに色々考えようって思って」
友里「その意気やよし」
珠美「でも浮気かぁ……私もいつか彼氏ができたとき、そういう心配しなくちゃいけなくなるのかなぁ……」
真子「今は心配じゃなくて、もう浮気が確定してる時の話だぞ」
珠美「絶対耐えられない自信ある」
友里「それは自信とは言えんぞ」
真子「うーん。私の場合なら……って言いたいところだけど、自分がその人のこと本気で好きだと思ってて、その人が自分だけじゃなくて他の女にも手を付けたって話だろ? なんかこういうのって……」
海「そもそも男の風俗通いを許すかって話でもあるわけだしね」
友里「え、そうか?」
海「だって、彼女は彼女、浮気相手は浮気相手って感じなんでしょ? ある程度の区別がついてるんじゃないの? そういうのって」
友里「あ、まぁそうか。風俗かぁ……」
真子「私は気持ち悪いと思うな、そういうの」
珠美「妊娠中とかはセーフじゃない? って思ってる」
友里「え? いや、そういう時期ほど控えるべきだろ」
真子「私もそう思う」
珠美「えー……だって、男の人って定期的にそういうことしてないとしんどいんでしょ? 浮気されるくらいなら、お金払って綺麗な人で発散して来ればいいじゃんって思うけど。病気とかうつされるのはアレだけど」
真子「それちょっと考え方変だと思うけどなぁ……」
友里「変かどうかは置いといて、男の側がそういう風に考えて、既婚者でもそういう場に足を運ぶことはままあるんじゃない?」
真子「あるだろうなぁ……」
珠美「その、パートナーの人のタイプにもよると思うけどね。その、ちゃんと弁えてる人だったら、別にいいかなって。女性の側に分からないようにそういう場所で楽しんでくる分には、個人の自由かなって思う」
友里「まぁ、金を払った上での性的なアレは、一種のレクレーションって考えれば、そうも言えなくはないな」
真子「え、お前もそっち側なん?」
友里「いや、そっち側とかじゃなくてさ、そういう見方もできるよなって話。私自身はどっちの立場でもないよ」
真子「むぅ……理知はどう思う?」
理知「どういう約束で付き合ったり結婚しているかによると思う。今時、こういう関係じゃなきゃいけない、みたいなのはあんまりないしね……」
真子「んー……つまり、お互いの価値観次第ってこと?」
理知「端的に言えばね」
真子「じゃあそういうんじゃなくて、理知自身は浮気するような男ってどう思う?」
理知「浮気、かぁ。それは私にはうまく答えられないな」
友里「理知にこういう話はあんまり向いてない」
理知「ごめんね」
真子「いや、こっちこそ。ええっと、一回話題整理しようか」
珠美「うん」

・男は結構浮気する
・結婚しても風俗などに通う男は多い

友里「とりあえず、これに関しては同意してもらえたよな?」
珠美「うん」
真子「あぁ」
友里「そのうえで、そういう男に対して私たちはどのような感情を抱くべきかって話だな」
海「あのさ、当たり前だけど、浮気する男と浮気しない男だったら、浮気しない男の方がいいんだよね?」
真子「そりゃそうだろ」
珠美「うん」
友里「せやな」
海「じゃあ、浮気するいい男と、浮気しないダメな男だったら、どっちの方がいい?」
真子「……」
珠美「そりゃあ……」
友里「たとえ浮気しなくても、ダメな男はダメだろー」
海「そうだよね。で、浮気しないいい男っていうのは、結構珍しいんだよね。すぐ売れていっちゃうし、浮気しないんだから奪うことも当然できない。一夫一婦制が敷かれてる現代において、実は女の方が恋愛の競争って大変だと私思うんだ。男は、まともな女なら誰でもいいみたいな人多いけど、女は自分が好きになれたり、尊敬できるような人としか結婚したいと思えない生き物だからね。だから、そういう意味では基本的に恋愛って、そもそも対等じゃないんだよね。特に、女が男を好きになった場合は」
友里「世知がれぇなぁおい」
珠美「それならやっぱり女の子同士で付き合うしか……」
真子「寄るな寄るな。冗談でもきついから」
珠美「いや、真子ちゃんはないな」
真子「うるせぇ。でも海の意見が正しいなら、女はある程度男の浮気を許容しなくちゃいけないわけ?」
海「状況次第だと思う。そもそもさ、女の男を見る目って微妙なこと多いし、目立たないいい男に自分からアプローチしていけるほどメンタル強い女もそう多くないから、私は個人的にそういうところが狙い目だと思ってる」
友里「打算的だな」
海「仕方なくない?」
珠美「でもそういう長い目で見るんなら、高校時代に付き合ってた人とそのまま結婚することなんてないし、別に別れてもいいんじゃない? そのまま付き合ってても、どうせ大学生になる頃には別れちゃうんじゃない?」
海「うーん……いやまぁ、でもその子はどうなるか分からないから、あんまりそういう無責任なこと言うのは違うなぁって思って」
友里「まぁそうやな。そもそもそこで浮気を許すかどうかが、今後別の男と付き合う上で色々と判断の材料になってくるわけだからな」
真子「実際問題、あんまり束縛とかしたくないけど、でもどうしてもこの人しかいないって時に、その人が浮気したら、もうキレるしかないよな。それ以外に選択肢残されてないじゃん」
友里「結婚したあとも、離婚っていう選択肢がないならそうだよな。もういっそのこと一夫多妻の方が平和なんじゃない?」
真子「てかそもそも、男ってそんな浮気する生き物なん? 浮気するのなんて、二三割くらいなんじゃないの」
海「真子ちゃん。確かに、浮気する男っていうのは二三割だよ? でもね、浮気になってでもこの人と付き合いたいって思われるようないい男って、割合的には半数以下だからね? 男百人女百人集めて、この人となら付き合ってもいいって人にチェックつけてくださいみたいなアンケートとったら、男の側は十人くらいに票が集中して、女の方はかなり広く分布するらしいからね」
真子「……あぁだから、浮気するいい男と、浮気しないダメな男って話したのか」
海「そうそう。浮気しないいい男って、それってすなわちさ、誰かひとり『この子』って決めた子がいる場合、それ以外の子がどれだけ泣きついて来ても『無理』って断れる人のことだからね。『あなたしかいないの』とかって言われても『俺には妻しかいない。君ではないんだごめん』とかって言えるようじゃなきゃいけないわけだからね? なっかなかいないと思うなぁ」
友里「おいおい。一気にハードル高いっていうか、そもそも海お前……けっこう妄想たくましいなぁ」
海「へへ」
珠美「やっぱり意志が強い人ってかっこいいよね」
海「プライドがある人好き。俺は浮気するような軟派な男じゃない、みたいな」
真子「けっこういそうだけどな」
友里「ふだんそう思ってても、いざその時になると流されるやつが多いんじゃない? 人間の欲望とか本能って、意外と強いからなぁ」
海「しかもそういうプライドって、一回自分の中で裏切っちゃったら、再び持ち直すの難しいよね」
友里「それな。だから、一回足りとも欲望に負けちゃいけないんだよな。理知見てたら分かるもん。ってかそういう話なら、理知はよく分かってるでしょ」
理知「そうだね。自分の決めたルールって、破るたびにそれを破ることへの抵抗感がどんどんなくなっていくからね。だから、一度も破らないことが大事。一回だけだから、が一番危ない」
真子「まぁでもそう考えたら、一度浮気したやつはアウトじゃない? 結婚してるとかだったら、色々考えて、相談して、落としどころ見つけなくちゃいけないと思うけど、ただ高校生が付き合ってるだけなら、別れた方がいいと私は思うな」
珠美「真子ちゃんは一貫してその意見だよね」
真子「それが道理に適ってるような気がする」
珠美「でも真子ちゃん。恋は道理じゃないんだよ」
真子「うーん。でもさ、女ってよくそんな馬鹿なこと言うけど、でもそれを言ったら男の恋ってすなわち、浮気を楽しむ、複数の女とロマンスする、ってことなんだろ? 理に適わんよなぁ! なぁ友里!」
友里「ウルトラレアな『俺はひとりの女だけ愛する!』みたいなやつでもない限りはそうだな。あぁそれか、理知みたいな替えがきかない女なら話は別かも。こんなやつに愛されたら、他の女とか見えなくなるだろ」
理知「そんなことないと思うよ」
珠美「そんなことありますぅ! りっちゃん好き!」
真子「でも実際そこんところどうなんだろうな。めちゃくちゃいい女、つまり自分よりいい女と対等でありたいから、他の女に手を出さない、みたいなのって本当にあるんだろうか」
友里「いやそういうんじゃなくてさ、理知に一度愛されたうえで、信頼されたうえで、そのあと期待を裏切って軽蔑なんてされてみ? 私なら耐えられないね。死んで詫びるしかない」
海「それは分かる」
理知「大げさじゃない?」
真子「でも本来さ、誰に対しても裏切りって、死をもって償うくらい重たいものなんじゃないの? 浮気って、許されないものなんじゃないの?」
珠美「確かにそうかもしれない」
友里「まぁでも、裏切りって言ったって、やむにやまれぬ事情がある場合もあるし、とりあえずは弁明を聞いてみるってのがいいんじゃない? 私ならそうするな。とりあえず、なぜそんなことしたのかを聞く。そのうえで判断する」
海「でもたいてい話を聞いて、反省するって言われたら許しちゃうじゃん?」
友里「その場合、二度目はないわけじゃん」
海「二度目は自分が傷つくだけじゃん。嘘つく側としては、何のデメリットもないじゃん。だって二回目は、破局するの分かってて他の女に行くわけだからさ。『もうあの女はどうでもいい』って思いながら、他の女と遊んだりするんでしょ? ひどすぎない?」
真子「そう考えたら、理由聞いたうえでの一発アウトがよさげだな。別れた後も、ものすごく反省してて、まだ自分のことを好きだと思ってるようだったら考えてあげてもいいかなって、それくらいじゃない?」
友里「まぁその辺の落としどころが正当な気がするな」

海「皆さま先日はありがとうございました。無事解決しました」
友里「あぁ。どうなった?」
海「私がその子に付き添って、問い詰めに行きました。めっちゃおどおどしてました。あと、私自身、正直に嘘ついてたこと、その子に話しました。めっちゃ驚いてたけど、許してくれました」
真子「よかったじゃん。で、その子は彼と別れたの?」
海「んー……それがね、次はないよって話でまとまった」
友里「一番ありそうな話だな」
真子「本人がそれでいいって言うならそれでいいんじゃない?」
海「まぁまたなんかあったときは相談してくれるだろうし、そもそも私たちは私たちで自分たちの恋をしなくちゃいけないから……」
珠美「恋……恋どこ? どこなの? 見えない……」
友里「それはまぼろし……」

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