同調圧力を語る五人【会話劇ショートショート】

 無性にくだらない話を書きたくなる。短くて、楽しい話。書いてても楽しいし、読んでいても楽しい話。もちろん、私にとって、ね。
 他の人の感性なんて知ったこっちゃない。私が面白いと思うものを他の人が面白くないと思うなら、私はその人のセンスを疑うし、きっとその人は私のセンスを疑うと思う。もうどうしようもないよね。まぁでも人の趣味って変わるし、多分……一方通行なんじゃないかと思うんだ。誰もが幼少期は、単純なものや分かりやすいものを好む。アンパンマンとかプリキュアとかさ、そういうのを。でも成長するにしたがって、そういうものがくだらなく感じ始めてくる。そして、ちょっと変わったものや、品のいいものを好むようになる。

 私は自分の趣味を高尚だとは思わない。そもそも高尚という言葉自体があまり好きじゃない。自分の趣味を「高尚」と呼ぶのはどう考えても傲慢だし、他者の趣味を「高尚」と呼ぶのは、その趣味を理解できないのに高く評価したいという、よく分からない……趣味とは関係のない気づかいのようなものを感じて、あまりいい気分じゃない。まぁ分からないものを低く評価しているよりは、高く評価し過ぎている方が不快感は少ないけれど、でもなんか、そういう「とりあえず使っとけ」みたいな便利な言葉が、どうにも好きになれないのだ。

 はいはい脱線。私の脱線癖好きな人いる? はいはーい! 私好きです! 少なくともひとりはいるな。安心。いや、これを読んでる未来の私もきっと同意してるから、二人は確保できてる。二人もいれば「みんな」って言ってもいいよね? え、○○ちゃん私の脱線癖好きじゃないの? みんな好きだって言ってるのに?(こういう同調圧力ってネタでも微妙に不快になることあるよね)

りっちゃんの教室!

海「同調圧力ってあるじゃんかぁ……」
友里「私そういうのん嫌いだわ」
真子「私も嫌い」
友里「たま、お前ももちろん嫌いだよな?(ニッコリ」
珠美「実演しないで怖いから! まぁ実際、あんまり気分いいものではないよね」
海「でもうちら女子って、気づいたらそういうことしちゃうよね。今友里がやったみたいに」
友里「私普段やってることある?」
真子「お前は単独で圧力かけてくるからある意味一番無縁」
友里「褒められちまったぜ」
真子「褒めてねぇよ。あれ? 褒めてたか……」
友里「ツッコミを迷うな!ww」
珠美「私多分時々やっちゃってるから、反省なんだよね。同調圧力」
海「そもそも同調圧力って、なんでダメなん?」
真子「ファシズム的だからじゃない? 知らんけど」
友里「普通に危険な方向に流れがちだからじゃない? イジメとかの原因にもなりそうだし」
海「でも逆に『イジメダメ』っていう同調圧力の方が、現代では強くない?」
友里「確かに。うちらの世代で『場合によってはイジメも肯定される』なんて言おうもんなら普通に変な圧力かけられるもんな」
珠美「でもイジメはダメじゃない?」
真子「たま?」
珠美「あっ! あっ! 今圧力かけてた私?」
真子「冗談やんww」
珠美「うーんでも、その辺どうすればいいんだろうね。そもそもイジメって、なんでダメなの?」
友里「おいおい道徳の授業かここは?」
海「正直私イジメとかいいとも悪いとも思ってないよ。キモいとは思うけどね。かっこ悪いとは思うけどね」
真子「せやな。寄ってたかって何やっとんねんって感じではある」
友里「言い方悪いけどさ、弱ってる昆虫つんつんして遊んでるようなもんだもんな」
真子「それはそれで問題発言じゃない? イジメられっ子のこと弱ってる昆虫扱いするのは」
友里「んー。でも自分にとって気に入らない相手って、たとえ相手が人間でも昆虫みたいなもんじゃん」
海「出た。友里ちゃんサイコパスモード発動してる」
友里「え、違う?」
珠美「さすがに昆虫って言うのはひどすぎる気がする……」
友里「でもそこにいるだけで気分悪いやつっているじゃん。臭いとか、汚いとか。話し方がキモいとか、唾飛ばしてくるとか。虫やんそんなん」
海「まぁ大っぴらには言えんけど、気持ちは分かる」
真子「そう思いたくても堪えるな、私は。良心の呵責というか。あいつも同じ人間だから、あんまり悪く思いすぎないようにしようって私は思う」
珠美「真子ちゃんは性格いいなぁ」
友里「おいおいまるで私が性格悪いみたいじゃん」
珠美「いや、多分性格悪いの私……」
真子「なんだ? たまメンヘラモード発動してるんか?」
珠美「うーん。なんか、自分でもよく分からんくなってる。だって、私だって人のことキモいと思うこと結構あるし、普通に避けたりするのに、それを正直に言葉にしてる友里ちゃんのことなんか、ひどい人間みたいに思うのって、理不尽じゃない? なんか、自分の性格の悪さ棚に上げてる気がする」
友里「おいおい。私が性格悪いこと前提に話さないでくれよ」
海「私もどっちかっていうと友里側かなぁ。この場合だと。別にたまも性格悪くないし、友里ももちろん悪くないと思う。なんか、苦手な人のことを虫みたいに思うのって、別に悪いことじゃないと思うよ。それで、不満のはけ口にしたり、自分の利益のために利用したりとかするのはどうかと思うけど」
真子「意外と常識的なサイコパスコンビ」
友里「まぁ私言葉選ばないからなぁ」
海「逆に、うちらが言葉選ぶの癖になりすぎてるのかもしれないけどね。同調圧力のせいで」
珠美「私にもその責任の一端があると思うとつらい」
真子「どっちかっていうとお前も犠牲者だろ」
珠美「そうかなぁ……りっちゃんはどう思う?」
理知「私は私なりに言葉を選んでるし、他の人も他の人なりに言葉を選べばいいと思う。私自身は、他の人に何かを求めたりしないし、もし自分が不快だと思ったら離れるだけ。友達だったら、少しはお願いして直してもらおうとするかもしれないけど」
友里「つーことは、理知の中では私は全然セーフってことだな」
理知「うん」
珠美「じゃあやっぱり私がおかしいんだな」
真子「おかしいとかおかしくないとかねぇだろ」
珠美「いやでも、周りに合わせる必要はあるくない?」
真子「そこそこでよくない?」
海「まぁ、友里は常に合わせてもらってる側だし、私はその場の空気を利用して何かするタイプだし、真子は割と中庸というか、間を取れるタイプだし、たまはどっちかっていうと流されるタイプなんでしょ? んでりっちゃんは……孤高タイプでしょ? 色んなタイプがいて楽しい、じゃダメ?」
珠美「んー。そう言われると、なんだか許されたような気持ちにもなるけど……」
友里「流された方が楽なら流されとけばいいだろ。私が押し流してやるよざぶーん」
海「ざぶーんは私の領分だぞ。りょぶーん」
友里「あっすまん。領域侵犯してしまった」
真子「まぁそれについては深く考えすぎない方がいいと私は思うぞ、たま」
珠美「うーん」

 なんか思ったより真面目な話になってしまった。あとこの五人って、確かにそれぞれ全然違うタイプだよなぁ。全然違うタイプなのに、いい感じに調和してる。不思議だなぁ。
 なんか、誰かひとり欠けてると、ちょっと物足りない感あるんだよね。りっちゃんいないと、収集つかなくなるし、友里っぺは話うまいこと広げてくれるし、海ちゃんは話をうまいこと流しながら、整えてくれる。たまちゃんはかわいいし、まこまこはツッコミ役兼、感情のブレーキ役にもなってる。なんかこのグループの雰囲気悪くならない理由ってある意味まこまこの人格によるところ大きいと思うんだよね。なんか、無意識的にしっかりハンドル握ってる感じする。
 友里がエンジンで、海がアクセル、真子がハンドルで珠美がヘッドライト(?)orシート(?)理知は……バンパーかなぁ? 車に喩えるの無理ある気がする。あと多分、読み返してて思ったけど、役割いい感じに入れ替えてるんだよね。常にそれぞれが同じ役割で話してるわけじゃない。誰かがブレーキ外しても、その分誰かがブレーキ踏むようにしてる。すごいよね、これ。人間関係の妙だね。フィクションとはいえ。
 なんか仲良しグループって、五人くらいがベストだと思うんだよね。んまぁ……私自身はあんまりそういうグループで気分よく過ごせたことはないんですが。憧れみたいな気持ちはあるなぁ。

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