父と娘の小話【ショートショート】

娘「お父さんは面食いだからなぁ」
父「そうかな」
娘「うん。お父さんは、若い女の人を見たときにいちいち美人か、そうでもないかっていうのを判断してるよね」
父「どうしてそんなことが分かる?」
娘「目つきがあるんだよ。男の人には、ほとんど女の人の容姿に興味がない人と、女の人の容姿に興味がありすぎる人の二種類がいる。まず目つきが違うね」
父「ははは。そんなことないぞ」
娘「嘘だよ。お父さん、ほとんど無意識だと思うけど、美人とすれ違った時と、そうじゃない人とすれ違った時だと、視線を切るまでの時間に若干の差がある」
父「お前は本当によく見てるな。そんなの自覚したことなかったぞ」
娘「で、自分が面食いだってことは認めてくれる?」
父「さぁどうかな」
娘「じゃあこういう質問はどう? 容姿がタイプで、性格がそうでもない人と、容姿はそうでもないけど性格がタイプの人、付き合うならどっち?」
父「……結婚するなら、性格がタイプの人。付き合うだけなら、容姿がタイプの人。ただ現実は……」
娘「逆になってしまったってわけだね」
父「まったく、敵わないな」
娘「逆にお父さんは、私がどう思ってるか分かる?」
父「お前はよく張りだから、容姿と性格が両方ともタイプの人としか付き合うつもりはないんだろう?」
娘「正解。さすがだね」
父「なかなか見つからんぞ、そんな男」
娘「それならそれで構わないかな」
父「もしさっきいったような条件で、どちらか選ぶならどうするんだ?」
娘「その時の本能に従うから、今は分からないかな。この人だ、と思った方にする。思わないなら、どちらも選ばない」
父「そうだな……俺も、そうしたよ。結婚自体は失敗だったかもしれないが、娘に関しては大成功だったわけだ」
娘「あら、嬉しいですわ、お父様。ウフフフ」

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