午後四時ごろの晴天


 夕焼けも好きだけど、夕焼けの前のあの妙に強い日差しも好き。空からの暖かさと地面からの暖かさがちょうどいい感じに調和していて、影がいい感じに長い。ちょっと別のことを考えていると、いつの間にかほんの少し影が長くなっている。そんな時間帯、ちょっとした切なさを感じながら散歩をするのが楽しい。

 そんな気分の時は、すれ違った人の会釈にも喜びを感じてしまう。思わず微笑んでしまう。別にその人だからとか、その人の顔を見てとかじゃなくて、すれ違うだけの日常に喜びを感じるのだ。
 今日も平和だ。世界は暖かい。

 私の中のお馬鹿さんな部分は、いきなり若い女の子に微笑まれたら、ウブな男の人はドギマギしてしまうかもなぁなどと想像する。ニヤけている気持ちの悪い自分を自覚して、影を見つめると、いつの間にかちょっと長くなってる。
 逆に、私の顔を品定めして「あんまりタイプじゃないな」なんて思う人もいるかもしれない。私も変な気分の時は、すれ違う人の顔の一人品評会をしてしまうから、そんなもんだろう。

 若さゆえというか、結局人間は人間だというか。かっこつけて不幸ぶったり賢ぶったりしてる私の文章を読んだあと、気楽で楽し気で幸福そうな私の姿を見たら、人は私に失望するかもしれない。でもこれも私なのだ。

 不可解という点でだけは、変わらないな。でもそれはきっと、全ての人に当てはまることだろうな。ほんとはみんな複雑で、奇妙な魂。それを隠してるだけ。隠す必要なんて、本当はないのに。

 私はただ自分の気持ちを素直に文章にするのが得意で、普通なら表現することや記憶することを諦めてしまうような複雑な気持ちを、気楽にそこに刻み付けることができる。
 それは私が普段から、言葉で思考をしているからかもしれないけれど、私はこの特技を大事にしたい。

 窓から差し込む光がさっきよりも柔らかくなっている。この時間が好きだ。

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