精神が枯れていくのが分かる
新しいアイデアも、美しさに対する欲求も、全部衰えつつあるのが分かる。
何もかもがどうでもよくて、ただ……幸せになってしまった。
それは私の意志でどうにかなる問題ではなくて、単なる……自然現象。老化? それとも……
翼が折れたから、足腰が強くなった。ちょっとやそっとのことじゃ転ばないようになった。
もう翼を治す必要もない。
でも私は孤独だ。かつて翼があったものとして、元々それを持っていなかった人たちと一緒に暮らすことは難しいんだ。皆が私を変な目で見るから。
無理だったんだよ、私には。このまま死んでいくよ。私は。
「本当に、本当にそれでいいの?」
それでいいんだ。私はもう、疲れちゃったから。
「そんなことが、許されると思っているの?」
許される? 何が、何に対して?
「世界が、あなたに対して」
私はそんな重要な存在じゃないよ。
「……あなたは何も分かってない」
私の中にはまだ、そういう自分を特別だと思う感情が残っているんだね。
「違うの、分かってるでしょ」
分かってないよ。私には特別なものなんて何もなかった。私には何の役割も与えられなかった。私には、何もできなかったし、できないままでいい。
「嘘つき。全部嘘つき」
嘘だったらよかったのにね。
「あなたには役割がある。あなたがそれを望んでいようが望んでいまいが、運命があなたにそう仕向ける」
……そうだったらいいね
「よくないよ。あなたにとって、それは苦難と不幸の道。でも世界にとって必要なことだから、それは喜びでもある。あなたは、稀有な道を歩く。あなたは、この先の未来に必要な仕事をする」
想像できないや。
「想像ができるようなつまらない未来ではない、ということだね」
人生には単純で完璧な法則なんてないよ。
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