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大学3年生の9月のこと

教育実習生─思い出と言うほどのものもなく、何となく思い出す色々を書き連ねる


安定の不安定さと、非・常識的な規則正しさを自分でも持て余している

『大変ですね』『ええ、周りが』

声が大きく、元気で明るい(一見そう見えるらしい)という理由だけで周囲から度々教員になる事をすすめられていた

人の顔色ばっかり見る私には目の前にいる児童・生徒の”今“しか見ることが出来ないだろう

その時に口当たりの良い言葉しかかけられない私は『先生』にはなれない

少し先を見て導く事が出来ない私には到底無理だとその頃も今も思う

そんな私も、大学3年生だった2001年の9月、大学の付属の高校で教育実習生として過ごしていた

ちなみに、大学3年生とか書いちゃっているが実際には3回生と言う

箱根駅伝では〇年生と言っていたので関西だけ?と思い書き直した

1年・2年の間は8月と9月の長くありがたい夏休み、3年生になると9月は教育実習かぁ~と8月から憂鬱だった

教員志望ではなく、希望する専攻がある数少ない学校という事だけで熱望し運良く入れたが、教員免許取得が卒業の条件で、教育実習は必須である

憂鬱な9月が始まる

教育実習が始まって早々、テレビからは映画のワンシーンと見紛うような光景が何度も何度も繰り返し流れていて、さらに重い気持ちで高校へ向かったのをぼんやり覚えている

到着すると教職員会議が行われており、我々教育実習生も集められ生徒に対する対応などの伝達がされ『敢えてこちらから触れない方向で』、とかそんな程度のものではあったが先生方は何かと対応に追われていた

自分が小中高生の頃の教育実習というと、非日常の事であり休み時間に教育実習生を見に来る同級生もいたほどで、ノリの良い可愛い女性なら”男子“がちょっかいを出し、”女子“は年上のお友達でも出来たかのように懐き、最終日には涙のお別れで締めくくられた

附属高校での実習は全く異なるものだった

受け入れ人数が多いので、ひとクラスに数人もの実習生が振り分けられ教室の後ろにゾロリと並ぶ

附属高校の生徒は小・中と上がってくる子も多く(選抜試験があるらしいが)教育実習に慣れているのかザワつきもしないし、我々の大学へ進学することは少ない進学校なのでとても落ち着いていた

制服はあるもののかなり自由でおしゃれな子も多いが滅茶苦茶な人はおらず、規律は少なくてもちゃんとしているものだなと感心した

文化祭の時期でクラブやクラスの出し物など見物したが、全てにおいての完成度の高さに驚かされ大いに楽しんだ

基本的な勉強の習得度とか、考え方、賢さの基盤みたいなものは高校生あたりでもうほぼ完成されていて、その後の進路というのはその基礎学力でもって専門性を深めたり高めたりがほとんどなのだと実感した

いつまでも“最終学歴”を評価される環境より、そんなものの消費期限の短い環境の方が良いのかもしれない

今、この瞬間こそ本来の姿なのだと

主要科目の授業においては、少しの不備や不手際にも生徒から手厳しい指摘が入る事がたまにあるという噂もあった

私は副教科で、その教科専攻の複数人で行っていたので担当する授業も少なかったし教科の指導教官が他の学校へも勤務する講師だった事もあり自分の受け持ち授業までたっぷりと時間をかけて資料を作ったり教材を準備したりして時間になったら帰る毎日

比較的”楽“な実習期間を過ごしていたと思う

専門の勉強ばかりをしている大学生と、受験やなんかに直接関係のない副教科を楽しむ高校生

そこで反発したり授業を妨害するような生徒もいないし、大学の教授等が見に来る時間以外は何のストレスもなかった

小学校の実習は基本的に教室でずっと児童と全力で過ごすらしい

お昼(給食)も放課後も一緒だし、毎日指導案(授業で何をするか)を提出しなければいけないし、みんなクタクタヘトヘトになっていた

実習生が指導案を提出し目を通してもらうまで帰れないということは、指導教官である先生も同じように目を通すまで帰れない

日常業務に加えての指導は大きな負担だっただろうし、実習生の授業の際に不備や不足があればその後調整して補足も行わなければいけない

児童・生徒にとっても実習生が受け持つ時間といえど貴重な授業時間の一部であることに変わりはない

母校実習も時期や人員確保が出来なければ受け入れが難しく叶わない人たちもいた

児童生徒・保護者・教職員・地域の人とのコミュニケーションは不可欠だし、学級運営に進路指導と、子どもが好き・教えるのが好きだけでは到底出来ない仕事だなと思う

そんな現実も垣間見、ひと月弱でもヘトヘトになる体力的にも大変な教育実習期間を経てもなお、教員になりたいと熱く語っていた人たち

そんな熱い思いを持ったみんなが希望通り教員になっていたらいいのにな、なんて思う、9月の上旬






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