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入手困難な、エルメスの職人インタビュー作品と写真集にふれ、ブランドにとっての「ラグジュアリー」とは何かを考えた
世界中の誰もが知るブランドであり、ラグジュアリーブランドの中でも最高峰の一つでもあるHERMES。
このnoteでは書籍と映像から日本のブランドとの共通点や、HERMESならではの点を探ってみます。
HERMES職人のインタビュー「ハート&クラフト」
HERMESが公式に認めた唯一の映像集、
「ハート&クラフト」があります。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139954761/picture_pc_222126128eebca47b0b4ae9e95d6c165.png?width=800)
Netflixなどの動画配信サービスでは見ることができず、DVDの販売のみ。現在は廃盤でプレミア価格になっています。
映像を少し前に見る機会がありましたが、HERMESのブランディングについて、あるいは、プロダクトを紹介する映画ではありません。
この作品は、職人たちを主人公にしたドキュメンタリーです。 DVDに封入されていたリーフレットには以下のように書かれています。
ものは職人たちの情熱の証です。職人たちは仕事をこよなく愛しています。なぜなら、自分の仕事の価値をあらゆる観点から完璧に理解しているからです。
HERMESの職人のインタビューが観れる機会はこの映画以外にないと思うのですが、誰もが憧れる職業かというとそうではないかもしれません。インタビューの中では、誰でもできる仕事をし続けることで将来の不安はないの?と問いかけられて葛藤する様も映し出されています。
(うろ覚えなので表現は少し異なってるかもしれません)
ただ、映画を通して、印象的だったのが、職人さん一人一人が、HERMESというブランドのモノづくりを通して、関わる製品や素材を自分の言葉で説明していること。
そして、その言葉から、圧倒的なブランド(モノづくりに使う素材)に対しての愛を感じるのです。
ひとつひとつの言葉がとても素敵だったので、紹介します。
馬を乗りこなすには熟練の技がいる。
職人の世界も同じだ 素材を知り尽くす事。一生使えるものを作る。
いってみれば初恋の人みたいなものかな。
彼を大切に思い、自分の最良のものをささげる。
恋人を愛撫するように、金属をいつくしむ。
研磨とはいわば金属に命を与えること。
革を愛しその中に浸って暮らしていれば。
まず革を愛すことが最初だよ。
革を扱うことは歌うことと似てる。
表面をこすると歌い出す革がある。
一流の職人は、自分の仕事がどのようなプロダクトにつながるのかを理解しているのでしょう。しっかとした、自分の言葉を持っています。
日本の職人さんは背中を見て語ると表現されるほど、言語化を事細かくしないのが一般的です。
「若手は目で見て技を覚える」という価値観なのかもしれませんが、海外の場合はローコンテクスト文化なので、言語化し伝える事が当たり前の環境にあることも影響しているのかもしれません。
だからこそ、色んなタイプの職人さんが、自分の言葉で素材について、モノづくりについて語っている姿を見て衝撃を受けました。
封入されている解説文に書いてある、監督が伝えたい「手仕事の素晴らしさ」は、日本でも通じる内容ではないでしょうか。
この映画を学校で上映してほしいということです。自分が進む道は一般教育の上にはないと感じている子供たちに、実際に手仕事の素晴らしさを見せれば、大きな勇気を与えられるでしょう。
この映画を観た人は、バッグが、カレが、ブレスレットが生まれる瞬間に立ち会います。そして最終的に、職人たちの手の動き、職人たちがつくるオブジェ、彼らの言葉が集まって固い絆で結ばれた「私たち」となり、人と素材が向き合いものが生み出されるという、官能的なできごととなります。
私たちが撮ろうと心がけたのは、じっくり時間をかけてものをつくり、思索する「エルメスの手」です。職人たちが見せる卓越した手仕事は、より開かれた、より人間的なもうひとつの世界の可能性を示しています。
HERMESの公式写真集
もう一つ、HERMESを知る上で貴重な写真集がありますので紹介します。
南アフリカ生まれのフォトグラファー、コト・ボロフォがエルメスの工房を訪ね歩き、ハンドバッグ、香水、スカーフ、プレタポルテ、靴からエルメス初のアクセサリーである鞍に至るまで、エルメスの製品がどのように作られているのかを発見しながら撮影した写真集です。
この本もプレミア価格がついてしまい、容易に手に入れる事ができなくなりましたが、10年以上前に書店でページをめくって一目惚れしてしまい、ずっと家の中に置いています。今でもたまに見返しては、心がときめいてしまうほどです。
公式のホームページを少し観るだけでも、写真の素晴らしさが体験できます。
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全11冊、実に1,000ページ以上からなる壮大な写真集ですが、思わずため息が出てしまうような、とにかく美しいと感じずにはいられない写真ばかり。
どこからどのように切り取っても、HERMESというブランドが、ラグジュアリーという一言では言い表せることができない、美学と哲学を持っている事が伝わってきます。
今回ご紹介したHERMESの映画と写真集は、ブランドの裏側を伝える作品です。一流のクリエイターが撮るから素晴らしい作品になることは間違い無いのですが、それはブランドそのものの持っている力があるからこそ、引き出せていると言えます。
日本でも職人さんやものづくりにこだわるブランドはたくさんあるのですが、これだけものすごい量の映像や写真を撮られても、綻びが出ないだけの哲学と美学を持っているかは、ラグジュアリーと言えるかどうかの境目かもしれません。
1,000ページの写真集と、100分の映像を制作できるだけの、モノづくりのこだわりと作り手の真摯な姿勢を持つブランドは、きっと日本にもあるはずです。特にこの映像がブランドを作る上でなぜ大切かは、次回のコラムで書きたいと思います。
表紙写真: koto bolofo公式ページより抜粋
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