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中国でいま知財で起こっていること 「意匠については、かなり大きな改正が!」

中国特許法の第 4 次改正法の内容が、2021 年 6 月 1 日の施行が始まりました。
もう4回目になりますが、12 年ぶりの知財法改正となります。
いま、中国では、知財大国のアメリカに劣らない知財の保護が開始されています。
もうすでに、知財は、日本が中国に遅れている分野になりつつあります。
分かってきた内容を以下にまとめました。

意匠については、かなり大きな改正が!

とうとう本格的に部分意匠制度がスタートします。
日本は、中国にもう抜かれましたね。
日本の場合は、関連意匠制度の創設や一意匠一出願制度の改正で、限度いっぱいという感じでしょうか。 

中国は、部分意匠の使い勝手の良さを、理解しているようです。
具体的には、「部分意匠制度の導入 (改正法 第 2 条)」で、部分意匠制度の導入により、意匠の保護が強化されます。

また、現行の専利法では、国内優先権制度は、発明及び実用新案登録のみに適用されています。
「意匠の国内優先権 (改正法 第 29 条)」にて、外国からの出願人は、外国にした複数の意匠出願についてパリ優先権を主張して中国に出願する際、類似意匠出願制度を利用して1件の意匠出願をすることができました。

一方、国内の出願人は、国内優先権制度がないため、そのような対応ができず、後で開発されたバリエーションの意匠について適切な保護を受けることが難しかったのです。
今回は、この是正をしています。

「意匠の存続期間の変更 (改正法 第 42 条)」にて、意匠の存続期間が、「ハーグ協定」への加入に対応する改正であり、存続期間が 10 年から 15 年に改正されました。
今後、日本のように、最大25年くらいまで、保護期間が延びると良いですね。

職務発明の取り扱いの明確化

次は、特許の出願系の改正です。
「職務発明に対する所属側の処分権及び職務発明に関する報償 (改正法 第 6 条、第 15 条)」では、職務発明に対する所属側の処分権について、『該単位は、法によりその職務発明創造の専利出願をする権利および専利権を処分し、関連発明創造の実施および運用を促進することができる。』という内容が追加されました。

加えて、職務発明に関する報償について、一部の常務委員会のメンバ、地方、部門、専門家の提案が採用され、職務発明に対して、単位がどのような財産権により報償を行うかは、単位の自主的な政策決定の範囲に属するものとして、専利権を付与された単位に対して財産権の報償を奨励し、持分、オプション、配当などの方式をとって、発明者または設計者に合理的にイノベーション収益を分かち合わせることとなりました。

いまいち保護が薄かった、中国の新規性喪失の例外に若干の手直しが

中国の新規性喪失の例外は、アメリカや日本に比べて、保護内容が脆弱ですよね。
「新規性喪失の例外に関する事項の追加 (改正法 第 24 条)」では、新型コロナウィルスのような疫病が発生した場合、公共の利益を考慮して、ある有効な医薬品が専利出願前に公開される可能性があります。
この開示によって当該専利出願の新規性が失われると認定すれば、特許出願人に対して著しく公平性を失うことになると考えられます。
いまのところ、このくらいが、新規性喪失の例外の適用範囲については、精一杯なのでしょう。

実務的に楽になる優先権証明書

「優先権に関する書面声明と専利出願書類の写し (改正法 第 30 条)」では、優先権証明書の提出期限と形式的要求を緩和する改正です。
実務的に、楽になるのではないかと思います。

中国版のPTAが開始!

これは朗報ですね!
アメリカのPTA(Patent Term Adjustment)と同じような救済です。
「審査遅延に応じた存続期間の延長」について、『発明専利の出願の日から起算して満 4 年、且つ実体審査請求の日から起算して満 3 年の後に発明専利権が付与された場合』に、存続期間の補償の請求が可能になりました。

もちろん、実用新案についても、大きな改正があった!

実用新案についてですが、中国は日本と同様に無審査なんですが、実用新案権評価報告の申請について、第三者もできるようになりました。
いままでは、実用新案権評価報告は実用新案権者または利害関係人のみが申請できるとされていて、実用新案権の評価が第三者側からすると、グレーな場合でも、利害関係が法律的に証明されなければ請求できなかったのです。

「実用新案権の技術評価書 (改正法 第 66 条)」で、実用新案権評価報告について、『専利権者、利害関係人または被疑侵害者も自発的に専利権評価報告を出すことができる。』ことが追加されました。
今回の改正を通じて、申請ができる者が拡大されました。


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