スランプという名の化け物
それは振り払って逃げようと思っても後ろから低距離を保ってひたひたと追いかけてくる化け物だ。
わたしがいまのような状態になってから早1年。その間に面白い作品は生まれず、書き始めばかりが重なって束になり、待っていれば状況は改善されるんだろうとじっとしている。
結果として短編小説は何本か一次通過したが、長編は2本しか書けなくてほとんど読まれないで終わってしまった。
こうしている間にもなにもしなかったわけじゃなくて、実は四苦八苦して少しづつ書いた短文のストックがある。わたしはそれを心の糧として、もしもチャンスができたら作品としてきちんと形にしようと思っていた。よく書けていたつもりだった。
しかしさっき久しぶりに読み返してみると、なんと同じことを二度、三度繰り返し書いているだけの小説じゃないか? 混乱した。1万文字のうち、中身は5千文字しかなかった。
びっくりした!
読むまではすごくよく書けた文章だと思っていたのに、何度も読み返していたのに、数ヶ月前に書いたのに、なんだこれは? 完璧に破綻した物語だ。
それは、わたしの幼少期の情景を元に描いたものなので筋というのは特にまだ付けていなかったのだけど。同じ描写が繰り返すのだ。
スランプは押しては引く波のようにわたしを揺さぶる。波というのは不思議なもので、引かれる時の方が力をより強く感じる。見えない世界に足元から砂と共に引かれていくのを感じる。
ということはまだスランプの只中なんだろう。
わたしは内心、いま出しているコンテストを放棄することに決めた。どうしようもない、からだ。読まれないものは読まれない。作品に対しては申し訳なく思う。もっと受け入れられやすい形で小説にしてあげなかったことが残念·····。
一次選考前に、心の中で敗退だ。
しばらく、小説から離れて暮らそうと思う。
もしかするとそれが一生になることがあるのかもしれないと思うとちょっと怖い。でも「ちょっと」なのだ。
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